第7話

 その翌日、彩夜は修練は初めてなため午前は体力がどのくらいあるのかを、午後からは体術や戦闘スキルはどのくらいあるのかを確認しようと藍斗は考えると同時に彩夜に適した武器を考えようとしていた。


「まずは運動する前に準備運動だ。そうしないと、筋肉痛や肉離れになる危険性がある」


「はい、わかりました!」


 彩夜は楽しそうにストレッチを始める。楽しみにしていたのが藍斗にもすぐに分かるくらいには彩夜は真剣に楽しそうにする。

 (本来、修練って楽しむものじゃないんだがな。まぁ…細かいことは気にしなくてもいいか)

 彩夜がやる気になってくれるのなら藍斗は正直、楽しそうにしていようが怒りながらだろうがどちらでもいいのだ。2人は午前の体力試しを終え、午後からは近接戦にどれほどの適性があるのかを確認する。……と言う予定を立てている。そして今、藍斗と彩夜の2人は素手の組手を行っている。勿論、藍斗は彩夜が傷つかないようにしっかり手加減をしている。


「はっ!やぁっ!!」


「惜しい、予備動作が大きすぎる。もう少しコンパクトに」


「はぁ!!」


「うん、そうそう」


 単刀直入に言うと、彩夜の戦闘スキルは凄いものだった。藍斗が考える彩夜の利点は小回りが効くことと振り下ろした時や横に薙ぐ力が強い。そして、動きがとても早い点にある。だが、それと同時に相手が攻めに転じられると弱く、力が弱い。そのため藍斗が思う彩夜の適している武器はレイピア、二丁鎌、苦無くない、ナイフ、鉄扇などだろう。

 (後は、本人がどれがいいかなんだがな。結局は、本人に適しているか以前に本人が使いたいと思うものがいいと思うし)

 藍斗がそう考えているうちにも彩夜は藍斗を容赦なく攻撃する。だが、それらを藍斗は余裕の顔で稲し、交わし、受け止め続けた。そして藍斗は一度も彩夜に攻撃をしていない。


「今日の修練はここまでにしよう。彩夜お疲れ様」


「ま、まだっ!出来ます!!」


「……彩夜、気持ちはわかるが休むのも修練だ」


「……はい」


 藍斗は有無を言わせない表情で彩夜を見つめる。そして、彩夜は藍斗の隣に座り藍斗の顔を見た。

 (何で、藍斗様は息ひとつ乱れてないの?私は息切れしてもう足が動かせないのに…?)

 彩夜は幼い頃から奴隷として育てられ、力仕事を強制されていため体力には少なからず自信があるのだ。一方、藍斗は彩夜と話しながら周りを警戒しており、気配を感じ取ると凄まじい速さで気配の元に向かって行った。ここは色々な魔物が住まう森の中。そのため藍斗が周りを警戒するのはまだ納得ができる。だが、彩夜が思っている疑問はそれではない。そう、彩夜の疑問は藍斗が急に草むらに入って行き何事もなく帰ってくる様子についてである。


「あ、藍斗様…先程から何をしてるんですか?」


「ん?近くに魔物がいたから倒して素材を貰っただけだ」


「わ、私…何も感じなかったんですけど……?」


「あぁ、そういう事か」


 藍斗はそう言い、彩夜に魔物の気配の感じ取り方を説明する。

 魔物の気配の感じ取るのは人間より感じ取りにくいのだ。何故なら、魔物と人間とでは感じ取り方が違うのである。魔物は空気の揺れ具合で、人間のように場合は魔力や殺気など色々な方法で感じ取ることができる。空気の揺れ以外で魔物の気配を感じ取る方法を使うことは出来る。だがそれは相当の集中力や精神力、体力を必要とするのだ。

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