第5話
そして数週間が経ち、4月の下旬になった。ここ数週間で桜の花は散り少しずつ葉桜へとなっていっていた。その間に彩夜と藍斗の2人は数週間前とは大きく違っていた。彩夜は本来の気が強い性格が戻り、藍斗は少々心に余裕を持てるようになっていった。そして、2人は一緒に暮らしているうちに徐々に互いを少しずつ知り互いの弱みが見えてきていた。殆どは、彩夜が弱音を言いそれを藍斗が落ち着かせると言った感じなのだが彩夜は気づいた。藍斗は人には完璧だと言えるサポートをすることができるが自分のことには無関心な所があるということだ。
(何でご主人様はあんなに自分に興味がないの?普通は自分が可愛いって思うはずなんだけど)
最近の彩夜は藍斗に疑問があれば聞くようにしている。そのため、彩夜は自分がしていた疑問を藍斗に問うことにした。
「あの、ご主人様」
「別に藍斗って呼んでいいって言ってるのに…まぁ良い。どうかしたのか?」
「何で、ご主人…藍斗様は自分には無頓着何ですか?」
「え、」
すると、藍斗は鳩が水鉄砲を食らったかのように驚いていたのだ。彩夜はそんな藍斗を見て、無自覚だったのかと察した。それに、彩夜は藍斗も訳ありだということは知っているが詳しい過去は全くと言って良いほどに教えて貰っていないのだ。そのため、藍斗が何故自分に無関心なのかは彩夜は全く分からない。無論彩夜も藍斗に自分の過去を全て話しているという訳ではないため、どっちもどっちだという言えばその通りだ。
(藍斗様…もし、倒れたらどうするの?…藍斗様がそんなことを考えるようになったきっかけは何なの?)
藍斗はそんな彩夜の疑問に察したのか少し考えてから彩夜に話しかけた。
「俺に少し心当たりがある。話しが長くなるが、それでもいいか?」
「は、はい!ですが、私などが聞いてよろしいのですか?」
「いいから、そう言ったんだ。俺は彩夜…お前のことを家族だと思ってる。だがら、話そうと思ったんだ。少し遅い気がするけどな」
「藍斗様…!」
そして少々、照れくさそうに彩夜を見る藍斗。そんな姿に彩夜は嬉しいそうに藍斗に微笑む。彩夜は奴隷として扱われていた時の記憶しかなく、両親の記憶はもちろん殆どないのだ。唯一記憶に残っているのは優しく微笑む両親の笑顔だけである。村の人曰く両親は事故で亡くなったらしい。そのせいで、記憶を失った私を村長が奴隷商人に売られた。そんな成り行きがあり彩夜は今、藍斗に買われたのである。
「じゃあ、話していいか?」
「はい、お願いします!」
「わかった」
藍斗は、冷静に淡々と自分の過去を語り聞かせる。彩夜は藍斗の話しを真剣に聞く。そして、過去を聞かせて貰った彩夜は納得した。藍斗が自分には無頓着な所や少々自分を大切にしない時がある理由を。
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