第3話

 そして、とても美味しそうなコンソメの匂いやパンの匂いに誘われて少女は悪夢から目を覚ます。すると近くのテーブルに食事が置かれており、自分の方に向けて食事が置かれているのをボーッと回らない頭で見ていた。そして、自分の食事を持ってきた藍斗を見た少女は驚き急いでソファーから飛び起きた。


「……起きたか。飯、食べられそうか?」


「は、はい。すみません、本当なら私がしなくてはいけないことですのに」


「問題ない。食べよう」


「はい」


 そして罪悪感でいっぱいの少女を座らせ食事を一緒に食べていた。すると今までさっきまで不信感でいっぱいの表情をしていた少女が食事を食べた瞬間、美味しそうにパクパクと食事を口に運び込む。藍斗は喉が詰まらないか心配しながら食事を食べていた。すると少女が藍斗に話しかける。


「あの、ご…ご主人様」


「何だ」


「な、なぜ私を買ったのですか?私、今の所ご主人様に与えられてばかりだと思うのですが」


「……別に、お前を買ったのは小間使いにするために買ったんじゃないからな。それに親友と同じ目をしてたからな」


 そして藍斗は儚げに微笑んだ。すると、少女は急に席を立ち「ごめんなさい!」と大きな声で謝った。そんな少女の反応に藍斗は少し驚いた。藍斗は女の人は誰かに似てると言われることを嫌がる。それを知っている藍斗は怒られる覚悟でそう言ったのだ。

 (え、何で謝ってるんだ?もしかして、本当に嫌だったとか?いや、それなら怒ってくるはずだし)

 藍斗は分からないなりに少女の意図を考えた。その考えを遮るように、少女は謝った理由を話し出す。


「急に大きな声を出してすみません。実は、私の本当の目は黒色何です」


「え、」


 まさかの少女の告白に藍斗は驚き、呆気に取られていた。すると少女は震える手を自分の目に翳し魔法を掛けていた。そして次第にガーネットのような赤色が藍斗の本当の姿と同じ目の色である黒曜石のような黒色の目がそこにはあった。そんな姿を見て藍斗は本当に驚いた。この世界に住んでいる人々の髪、目が黒色になったり黒のような色になるというのは遺伝子的に極めて珍しいのだ。そのため、藍斗はこの子がそんな黒の容姿の人が、黒い目を持っているということに驚いた。

 (いや、藍斗は勘で分かっていたのかもしれないな。普段の俺なら絶対に奴隷のような人間を見ても、買いたいとは流石に思わなかった)

 それに、藍斗は少女を買った時は考える前に自然と身体が動いていた。自分の身体が自分の身体ではないかのように、少女の元へ自然に行っていた。


「……別に、お前の容姿だけで買った訳じゃないから気にしなくて良い。寧ろ、黒目も良いと思うぞ」

 

「ご主人様…」


 藍斗は当たり前のように言うと、少女は泣きそうな顔をしていた。

 (本当は、亜希みたいな目つきをしてたからってことが言いたかったんだがな)

 そんな少女に「飯が冷めるぞ」と言い、藍斗は食事を再開する。それを見た少女も食事を再開した。

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