第42話 段違いの成長
うごめくガイコツ達はガシャガシャと音をたてながらモレッド達に迫ってくる。
「ガウェンさん、こいつらは確か魔法が、、、」
「ああ、そうだ、モレッド、ガイコツ兵士には魔法の効きがすこぶる悪い。 リッツとクルルは後方で待機しておけ。 オレとモレッドで片付けるぞ! 」
「わかりました! 」
ガウェンの合図で2人が飛び出す。
「ぼくが先行します! 」
そう言うとモレッドは5体のガイコツ兵士が固まっているところへと飛び込む。
ザンッ!!
暁の短刀が1体のガイコツ兵士を袈裟斬りにし、肩口から脇腹に刃を振り抜かれる。
更にモレッドは身体を回転させ、後からモレッドを切りつけようとしていたガイコツ兵士に回し蹴りを放つ。
「グシャッ」っと音をたて、ガイコツ兵士の胸の部分が吹き飛び、残った顔と腕が力失く地面に崩れ落ちていく。
その時、少し離れた位置にいた1体のガイコツが手に持った杖を掲げると、杖の先から人の頭ほどのサイズの火球が出現する。
この1体は剣や槍で武装したガイコツ兵士とは服装も違い、さながらガイコツ魔道士といった様相だ。
ガイコツ魔道士は何やら言葉にならない呪文を叫びながらモレッドに向けて火球を放つ。
その火球はちょうど3体目のガイコツ兵士を葬ったモレッドに直撃したかに見えたが、モレッドが突き出した左手によってかき消されてしまう。
またガイコツ魔道士が口を大きく開ける。
ぱっと見では呪文を叫んでいる時と同じにしか見えないが、固まって動かないことから、どうやら驚いているようだ。
モレッドはすぐさまガイコツ魔道士との距離を詰めると、下から切り上げるような形でその身体を両断する。
そのままモレッドは相手に何もさせることなく、残る1体のガイコツ兵士も一蹴する。
「やるな、モレッド! このまま殲滅するぞ、背中は任せる! 」
遅れて飛び込んで来たガウェンも加わり、2人はガイコツ兵士達を完膚なきまでに蹂躙していく。
モレッドが飛び込んだ群れはガイコツ達が糸の切れた人形のように倒れていき、ガウェンが長斧を振るえば今度は風に吹かれた落ち葉のようにガイコツが吹き飛んでいく。
「す、すごいね、クルル 」
ガイコツの見た目に少しだけ怖くなっていたリッツも、モレッド達の戦いを見て安心したのか、ククルを抱いたまま口をぽかんと開けて戦いの様子を見守っている。
その後、5分と経たず、辺りはバラバラになったガイコツ兵士の砕けた骨で埋め尽くされた。
もう大丈夫とリッツを呼ぶモレッドに、ガウェンは嬉しそうに話しかける。
「しかし、本当に強くなったな、モレッド。 弱体化スキルの効果も凄まじいが、それ以上にモレッド自身の動きが段違いに良くなっている。 互いにスキル無しなら、サイオンともいい勝負できるんじゃないか? 」
ガウェンに誉められて喜ぶモレッドだったが、サイオンのことに関しては実感がわかないようで、考えるようにクビを傾げる、
「うーん、どうでしょう? サイオンは素の状態でも強くて、なんならAランクの魔物だってスキル無しで倒せてました。 戦うなら、いろいろ工夫がいると思います 」
その話を聞いたガウェンはニンマリと笑い、モレッドの肩をバンバンと叩く。
「工夫すりゃあなんとかなりそうってことか。 いいね、頼もしいぜ。 あいつとはいずれやり合うことになるかもしれんからな。 しっかり準備をしておけよ 」
モレッドは「どういう意味ですか? 」と尋ねたが、ガウェンは「いずれわかる 」とだけ言い、ダンジョンの奥へとまた歩き出した。
その後もガイコツ達との戦闘を繰り返し、途中で一晩の夜営も挟んでモレッド達は下層への階段にたどり着く。
「さあ、目的地まであと少しだ。 下層はそれほど広くはないから、夜までには最新部付近のセーフゾーンにたどり着けるだろう 」
ガウェンの言葉を聴きながら、階段を降りていくとそこは中層とそう変わらない洞窟風のダンジョンだったが、ところどころに白い光の玉がフワフワと飛んでいる。
「これって、ドリアードのところと同じ? 」
リッツが辺りに浮かぶ光の玉を見ながら呟くと、ガウェンが宙に浮かぶ光の玉を指差しながら言葉を返す。
「ああ、このダンジョンの最深部にいるのは光の精霊だから少し見た目は違うだろうが、精霊の魔力が漏れ出したものって意味では同じだ。 まあ、今回は精霊に用があるわけじゃないから、その手前までしか行かんがな 」
「手前? 」
「ああ、このダンジョンの最深部が前に言った聖域って場所でな。 用があるのはその手前で聖域の守護をしているオレの相棒だ。 さあ、そろそろ行くぞ 」
ガウェンに連れられモレッド達はダンジョンの下層を進んで行く。
進みはじめて1時間ほどの間に何度か魔物とも戦ったが、ある時を境にパタッと魔物が出現しなくなる。
ガウェンから「聖域に入った」と説明があり、その後は教会が聖域の関係などの話を聴きながら更に奥へと進む。
下層に入ってから半日ほどが経ち、モレッド達は最深部への階段前の大部屋にたどり着く。
その部屋の光景にモレッドは驚きを隠せず、目を見開いて声をあげる。
「な、なんで? なんでこの剣がここに? 」
街の広場と言っても差し支えないほどの広さの大部屋の中心に、ポツンと古ぼけた墓標があった。
辺りには無数の光が舞っている。
その光の中心、古ぼけた墓標の上には、あの日モレッドを切り裂いた勇者の剣が佇んでいた。
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