第30話 また2人旅
仲間の行方を尋ねるモレッドにドリアードは難しい顔をして答える。
「タンクのブロムは、、、 残念だけど亡くなってる。 ルージュの反撃で傷を負ったところにサイオンが止めを刺したようだ 」
モレッドは驚いてドリアードに詰め寄る。
「サイオンがブロムに止め!? 」
「ああ、ブロムを殺したのはサイオンだ。 ナイフを胸に突き刺すところをルージュが見ていたから間違いない。 サイオンがなんでそんなことをしたかまではわからないけど 」
ショックを受けて押し黙るモレッドを見て、ドリアードは少し考える。
(まあ、仲間割れで殺されたなんて聞いたらショックだよね。 あ、でも、死体はルージュが焼いちゃったな。 まあ、火葬みたいなものだと思えばこれは言わなくていいか、、、 )
悲痛な表情のまま押し黙っているモレッドだったが、ドリアードの話は続く。
「次に聖女エレナだけど、彼女は教会に保護されて移動中だね。 今の時点だと行き先はなんとも言えないな。 ルージュも彼女には手を出さなかったし、サイオンにやられた傷も致命傷ではなかったから、こっちはちゃんと生きてるよ 」
「よかった、エレナは生きてるのか。 あ、でもサイオンにやられた傷? ブロムのことと言い、いったいどういうこと? 」
モレッドはわけがわからないと言った顔で尋ねるが、ドリアードは首を横に振る。
「さあ? 悪いけどぼくにはわからない。 それより、エレナはまだ意識が戻ってないな。 うーん、でもただ意識がないだけとは少し違う感じがする 」
「そ、そのエレナは大丈夫なの?」
「うーん、エレナとは距離が離れ過ぎていて、ぼくにわかるのはエレナの状態が普通ではないってことくらいだ。 大地のシステムが復旧すればもう少し詳しく探れるけど、その頃にはエレナはぼくの探知範囲から出てるだろう 」
「それなら、、、」
「すぐさま追いかけるのは止めておきなよ。 目的地がわかりもしないのに慌てて出発して明後日の方向に行ったら笑えないからね。 それに君はひどい方向音痴だろ。 1人で飛び出していったりせずに、ぼくが次に街に行くまでちゃんと待ってないとダメだよ 」
ドリアードにたしなめられ、モレッドはしゅんとなる。
「さて、最後に勇者サイオンだけど、、、」
「あ、サイオンは人族の領地の方に向かったんだよね? 」
モレッドはボルドーから聞いた話を思い出す。
「なんだ、知ってたのか。 それならこの話はいいか。 まあ、いろいろあったみたいだけど、そこは本人に直接聞くといい 」
「いろいろ?」とモレッドが首を傾げるが、ドリアードは構わずに話を終わらせる。
「じゃあ、そろそろぼくは作業に入るね。 街まで気をつけて帰るんだよ 」
ドリアードに促され、二人は岩山のほこらを後にする。
別れ際、リッツがルージュといくつか言葉を交わし、モレッドもまたねと挨拶をした。
2人は街へと歩きだし、思い悩むモレッドにリッツが声をかける。
「エレナさんのこと心配だね、、、 えっと、じゃあ、ドリアードが探してくれてる間にリッツがモレッドに道を教えるね 」
「うん、ありがとう、リッツ。 そうだね、焦らなくてもエレナはちゃんと生きてるんだし、ぼくは今できることをした方がいいよね 」
「うん、きっとまた会えるから大丈夫だよ! 」
リッツに励まされ、モレッドは少し気を持ち直して歩き出す。
「また、二人旅だね 」
前を歩くリッツがモレッドの方を振り返りながら少し嬉しそうにはにかむ。
「そうだね、3日ぶりの二人旅。 なんだかいろいろありすぎて、メキドについてから3日しか経ってないなんて嘘みたいだ 」
リッツはあははと大きな声で笑い、ほんどだねと相づちを打つ。
しばらく進んだところでモレッドは自分の過去について教えてもらうのを忘れていたことに気付いたが、まあ今度でいいかと思い、そのまま街へ向かって歩き続けた。
魔石の中、ドリアードは遠ざかる気配を感じながら二人の赤ん坊のことを思い出す。
(前に会った時はほとんど赤ん坊だったのに、人族の子供が大きくなるのは早いな。 調停者としても覚醒したみたいだし、このままいけばしっかり役割は果たしてくれるだろう。 そういえば、ベティは元気かな? 今度モレッドに会ったら聞いてみよう、、、)
そこまで考えるとドリアードは作業に没頭し、彼の頭から思考が消える。
夜が来て、朝が来て、また夜が来て、彼はひたすらに壊れたシステムを直し続け、魔石は少しずつその光を強めていくのだった。
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【★あとがき★】
ここまで読んでいただきありがとうございました。
城壁の街メキドでのお話はこれで一区切り、次回からはまた勇者サイオンの話です。
少しでも「モレッド頑張ったね!」「リッツかわいい!」「サイオン、次は何を、、」「続きが気になる」と思っていただけましたら、フォローや星★をいれていただけますと励みになります。
これからもよろしくお願いいたします。
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