第51話 ストーンファイア


 アキラは狩りに出ようとセレナやノクスを探したが、二人はすでに出かけていたので、単独で森へ向かうことにした。


 綺麗な泉に行き、倉庫から取り出した水筒に水を汲んだ。ラピスからこの泉の水には癒しの効果があると聞いていたためだ。


「癒しの効果って、どんなものだろう?」アキラは興味を抱き、腕を少しナイフで切り水を飲んでみた。血が流れたが、瞬く間に傷が消えた。


「なるほど」アキラは感心して腕をさすった。


「何を馬鹿なことをやってるんですか? 次は蛇にでも噛まれる予定ですか?」不意に現れたラピスが険しい声を上げた。


「あれ、さっきまでいなかったよね?」アキラは驚きを隠すためにとぼけたふりをした。


「私だって、やることがあるんです」彼女も洗濯や掃除などやる事があるのだ。


「もう、帰るよ。帰り道で蜘蛛くらいしか狙わないよ」


「いなかったら、蛇撃ちしてましたよね」


「ははは。ラピさんは過保護だなぁ」


「どの口が言うんですか!」ラピスは反論しそうになったが、不毛な争いを避けて口を閉ざした。


 アキラが狩りから村に戻ると、村人たちが上下水道の整備のため水路作りに取り組んでいた。ギルドホールが大きいため、作業は困難を極めている。


 道具は倉庫や納屋から持ち出され、ダリオスが陣頭指揮を執りながらメモを取っていた。


 アキラが覗き込むと、上下水道の図面や必要部材一覧が丁寧に書き込まれているのが見えた。


「恥ずかしい話ですが、土木については素人でして、職人さんに教わりながら作業手順や必要なものを書き出していました」


「ありがとうございます。足りないものを買い出しに行きます。村の人たちの生活に必要なものもまとめてもらえませんか?」


「よろしいのですか?」


「もちろんです。夕食後に打ち合わせをしましょう。後ほど」


 アリアを訪ねたが、ギルドホール1階の彼女の部屋に姿はなかった。ギルドホールの事務所は、ダリオスとアリアに与えたのだが、2人とも寝室も兼用にしてしまった。


 部屋には草が干され、机の上には周辺の地図と注釈が書きかけで置かれていた。その図面を見るだけで、彼女の優秀さが伝わる。


 アキラの家に戻ってステラを探そうとしたが、彼女もいなかった。


「どこに行ったのかな?」アキラは自分が心配性であることを自覚していた。マップ機能を見ると、こちらに向かっている小さな反応がある。


 家の勝手口を開けると、いつの間にか物干し竿が取り付けられていた。大きな籠に洗濯物を持って、ふらふらと川から歩いて来るステラを見つけた。


「ステラ、何しているの?」アキラの突然の声にびっくりした様子だったが、「わーい。アキラさんだぁ!」と籠を置いて抱きついてきた。


「お家のシーツを洗濯してきました。これから干すところです。まとめてできるから」


「そうなんだ。偉いね!」


「偉いのはわかったから、とっととアキラから離れなさい!」ラピスが厳しい声で割って入った。


「なんか声がする。ステラは泣き顔でさらに強くアキラにしがみついた。


「……」ラピスは何も言えなくなった。


「大丈夫だよ。神様の声だから、言うこときこうね」アキラはステラの頭を撫でて、彼女を優しく引き剥がした。


「ちっ」ステラの舌打ちに気付いた者は誰もいなかった。



「アキラ! またお客さんだよ!」セレナが、勢いよく駆け込んでくる。


「どこに?」


「ここに連れてきたよ。ドワーフ達だよ」


 セレナの背後には、薄汚れたドワーフの一団が立っていた。かなりの人数だ。その中から、威厳のある気難しそうな男が一歩前に出て挨拶をした。


「我ら、ストーンファイア。名工ドワーフの一族だ。我が名は、サイアス。急にオーガ達に襲われてな、魔物の森に迷い込んだ末、ここに着いた。匿ってもらったら、必ず恩は返す。郷の再建までで良いので」


「それは構いませんが、大したもてなしはできませんよ」


「いや、酒だけもらえれば十分だ。旨い酒だけは持って逃げたんじゃが、途中で全部飲んでしまってな」


「お酒は少ししかなくて……近々、町に仕入れに行くので、そのときに買ってきますよ」


「お酒がないと皆の手が震えるからな、頼むぞ」


「ドワーフのおじさん、それでオーガはどうしたの?」セレナが興味津々に尋ねる。


「ああ、ワシらの寝床の洞窟ごと吹っ飛ばしてやったが、どうなったかな」


 その答えに、彼女はがっかりと肩を落とす。表情がくるくると変わる。


「それに耐えてるかも。アキラ、後で見に行こうよ」セレナは諦めない。


「ところで、この村の手伝いをお願いできませんか? 給金はお支払いします。道具は、倉庫にありますので」


「手伝いはする。しかし、雇われるつもりはない。出来上がった物を買ってくれればそれでいい。道具はいらん」


「道具がなくても?」


「いや、言葉が足らんかったな。大事な道具は我らの命だ、空間魔法で持ち歩いておる」


「そうなんですね。わかりました。寝る所と食事は無償で提供します。出来上がった物は買い取らせてもらいます。ギルドホールにいるダリオスさんと、打ち合わせをお願いします」


 必要な道具の種類や値段なんてわからない。商人に任せたほうがいい。


「感謝する。じゃあ、しばらく世話になる」ドワーフの一団は、セレナに連れられて、ギルドホールへと向かっていった。


レベル3

エリシオン村

人口 43

軍事力(攻)38(守)38

環境 ◯

文化 5

税収 ➖

建築可能 農地、住宅、市場、商店、薬局、学校、工房

ゴールド 10,910G

(保護期間 86日、保護エリア 建築物周辺 100m)

 レベルが3に上がりました。500ジュム獲得しました。

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