第41話 ドーム
敵と遭遇したとき、通り過ぎるか攻撃するかを考えたが、瞬殺できるなら問題ない。下手に触れてしまう方が危険だ。
直進すると、再びゾンビが2匹。緩慢な動きで徘徊している。
ノクスが放った普通の矢では倒しきれず、ゾンビが毒の霧を吐きながら近づいてきた。ノクスはすばやくかわし、ナイフを突き立てる。すると、ゾンビから体液が飛び散った。
「うわぁ…」少し体液がかかる。
「大丈夫か?それも毒か?」
「毒ですね。それほど強い毒ではなさそうですが…」そう言いながらも、ノクスの顔色が少し悪くなっているように見えた。
「毒消し草だ、使え!」毒にトラウマのあるアキラは、倉庫から急いで取り出し、ノクスに渡した。彼女はしぶしぶ毒消し草を噛んだが、ルナやアキラほど嫌そうな顔をしなかった。
「不味くないのか?」アキラが思わず尋ねた。
「エルフは子供のころから、いろんな草を噛んでますからね。」ノクスは笑いながら答えた。
「ノクス、最初から魔法も使え!出し惜しみは不要だ。MPが無くなったらこれを使え。」珍しく少し声を荒げて、アキラは倉庫からMPポーションMと薬草を取り出し、彼女に渡した。
途中、新たな種類の敵と遭遇。アキラは鑑定を試みる。
「鑑定するまでもなかったな。」
ポイズンキャタピラー
HP: 25~35
MP: 10~20
スキル: 毒の糸
芋虫型の魔物は見た目よりも速く動く。しかし、一撃で倒せれば問題ない。仮に毒の糸を吐かれても、炎で即座に焼き尽くせるため、相性の良い敵だ。
まずノクスが炎の矢を放ち、撃ち漏らしたものをアキラが処理する形で戦った。
その後、数回の戦闘を難なくこなし、マジックポーションでMPを回復したノクスは、連射した炎魔法の矢で多くの魔物を倒し、再びレベルアップした。
ゾンビを6匹とポイズンキャタピラー10匹倒しました。
経験値40Pを獲得しました。(ノクス 40P)
400ゴールドを獲得しました。
ノクスはレベル6が上がりました。
アキラ ノクス
魔術師 魔法射手
レベル9 レベル6
HP 88/98 HP 50/50
MP 74/104 MP 32/32
EXP 710/718 EXP 132/202
やがて、洞窟の外周を回り続け、商人が滑り落ちた場所に到達した。そこは中央に泥色の水たまりがあり、洞窟内の石灰岩の柱が天井から突き出ていた。大きなドームのような形をしている。
突然、小さなコウモリの大群が中央の柱から一斉に飛び立った。彼らの赤い目が光に反応し、闇の中でちらちらと輝きながら舞い踊っている。
アキラは空を見上げて鑑定を行う。暗闇の中で大量の影が移動しており、あまりの数にエリアを絞って鑑定したが、個体差はそれほどでもないようだ。数百匹はいるだろう。
ポイズンエコー
HP: 5〜10
MP: 5〜10
スキル: 毒の牙
ノクスがエコーロケーションで商人の位置を確認し、指差した。
「岩の後ろです」壁と岩の隙間に商人を見つけた。彼は気を失って倒れており、両足が不自然に折れ曲がっていた。
おそらく、両手で這って岩陰まで来たのだろう。転落時にショック死してもおかしくない状況であり、彼の精神力は驚異的だ。
アキラはリカバリーポーション(M)を取り出し、商人に飲ませた。商人は驚異的な回復力で意識を取り戻し、両足も元に戻った。
「あなた達は、一体?」商人は無意識に光の周りを飛び回るポイズンエコーを恐れて手で払った。その瞬間、蝙蝠の集団が商人に注目したようだ。
「まずい!話は後です。後ろに隠れていてください」
アキラは炎と風の複合魔法で広範囲の殲滅を試みる。
「ファイヤーブラスト!ファイヤーブラスト!」
ノクスは風魔法のスキルを取得し、炎と風の複合魔矢を放つ。アキラの時と同様に簡単には複合魔矢にはならないが、一定の効果はある。
空を飛び回るポイズンエコーを撃破し、中央の沼を中心に焼き尽くされなかった死骸が降り注いだ。
その瞬間、沼から蛇が溢れ出してきた。同時に、沼から出た水は蛇たちの外壁膜のようだ。
蛇は、死にかけたコウモリの死体を見つけると丸呑みにしている。表面がぬるぬるした蛇たちは、水の上や中を自由自在に動いている。
蝙蝠の魔物が力尽きて蛇の上に落ちた途端、蛇たちはアキラたちを敵と認識した。
「それは無いだろう、餌をやっているのに。鑑定!」
ヴェノムサーペント
HP: 10〜20
MP: 10〜20
スキル: 毒の牙、火魔法無効
「火魔法無効だと? どのくらいの防御力なのだろう?」
「ファイヤーボール!」アキラは目についた蛇に向かって放つ。ヴェノムサーペントは溢れ出た沼の水に体を浸しながら炎魔法を受け止めた。HPは2しか減らず、MPは5減ったが、ほぼ無効化されている。
「ファイヤーブラスト!」風魔法で水を飛ばしても、炎魔法は効果が薄い。効果はわずかに増えただけで、戦略を立てる時間がなくなってしまった。
なぜなら、沼から溢れ出した蛇たちがコウモリを食べながらアキラたちの周りに集まりつつあったからだ。
なんとか退路を見つけなければならない。蛇の数は、10や20では到底足りない。風魔法で進路を切り開き、ノクスの矢で敵を撃ち倒しながら進むか……。それとも、新たなスキルを取得すべきか?
その時、天井からセレナの声が響き渡った。
「雷剣!雷剣!雷剣!雷剣!雷剣!雷剣!」
一撃目は沼に直撃。二撃目はコウモリの群れへ。三撃目は周囲の水たまりに、四撃目は再び沼へ。五撃目はコウモリ、六撃目は水たまりに命中した。
まるで雷が連続して沼や空に落ちているかのようだ。雷鳴と閃光が轟き、止むことなく続いている。
沼には感電死した蛇が浮かび上がり、周囲の水たまりでも同じ現象が広がっていく。感電したコウモリたちも次々と墜落していった。
アキラとノクスは炎風魔法で自分たちの周囲を覆い、水分を吹き飛ばしながら巻き添えを避けつつ、コウモリを撃ち落としていく。
セレナは天井からロープにぶら下がり、片手の剣から魔法を放っている。軽やかにロープを揺らし、突然の飛び降り。
「危ない!」セレナの位置から地上までは、かなりの高さがある。流石のセレナでも無事に着地できるだろうか。そう思った瞬間。
ルナがドームに猛スピードで駆け込み、「跳躍」してセレナを背中に乗せ、地下に優雅に降り立った。
「えー、カッコ良すぎだろう! まるで物語の主人公じゃないか!」
セレナの合流で、戦闘体制は万全となった。戦況が不利と悟った敵は、一斉に岩の隙間や地下通路を使い、ドームから逃げ出していく。
「もう、終わりなの?」静寂に包まれたドームに、セレナの言葉が響いた。
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