第24話 フロンティア


 夕飯は魚料理だった。下ごしらえが丁寧で、ハーブやフルーツで味付けされた淡白な魚が美味しく仕上がっている。ルナは「素材が一番」のようで、何もつけずにそのまま味わっていた。


「ご馳走様。今日も美味しかったよ」夕食を終えたアキラは、満腹感に包まれてセレナ達と別れて寝室に入り、横になる。


「美味しそうで羨ましいです。さて、起きてください! すごく重要なお話をしますよ!」ラピスの言葉で、アキラの眠気が一気に吹き飛んだ。


「それでは、フロンティアモードについて簡単に説明しますね。いわゆる町づくりモードです。リーダーとして土地を開拓し、町を大きくしていくモードですよ。町で起きる様々な問題を解決していくことになります」


「全然わからないよ」


「簡単に言うと、アキラさんが住む町を作るモードです」


チュートリアルが流れる。

—ゲーム画面のモードをタップし、フロンティア(F)モードに移行してください—


アキラが指示通りにFモードに切り替えると、画面のメニューが変わった。

—村に名前をつけてください—


「ラピさん、どうしよう?」


「アキラさんの好きな名前でどうぞ。後からでも変更できますよ。」


「空蝉町とか、大寒町とか……」


「……」沈黙が痛い。


「なんとなく思いついただけだよ。じゃあ、候補を出してよ。」アキラは耐えきれず、ラピスに頼むことにした。ラピスは決してアキラを馬鹿にしていたわけではなかったが、少し動揺しつつも、それを悟られないように言葉を選んだ。


「わかりました。では、エリシオン、アイリシア、水原」


「うーん、水原は町っぽくないし、どこかで聞いたことがある気がする。アイリシアかな」


 ラピスはくすりと笑い、「それは、嫌です」と一言。


「え?なんで?候補に出したくせに」


「選択肢は3つ出す決まりなので3つ出しました」


「他にも出してよ」


「わかりました。エリシア、エイザリア、アイリスタ」


「どれもよくわからないなぁ……じゃあ、さっきのエリシオンでいいかな。それで、何か意味はあるの?」アキラには特にこだわりがなかったので、実際どれでも良かった。


「仕方ありませんね。まあ、いいでしょう。意味は特にありません」そう言いながら、ラピスは微笑んでいた。


フロンティアモード

エリシオン村


• レベル: 1

• 人口: 3

• 軍事力(攻): 23(守): 23

• 環境: ◯

• 文化: 1

• 税収: ➖

• 建築可能: 無

• ゴールド: 4210G

• 保護期間: 90日(保護エリア: 監視塔付近)

   コマンド: ガチャのみ。


「ラピさん、人口が3人って本当?」


「はい、アキラさんと私、そしてセレナです」


「え?」


「冗談です。実際にはアキラさん、セレナ、ルナの3人です。ガチャを引くことで人口は増えますよ。ガチャで手に入れたキャラは翌日に到着するので、どんどん引いてくださいね」


「そうか。セレナみたいなキャラが増えるのかな?」


「それは難しいかも。PSRの排出率は非常に低いので、簡単には出ませんよ。それに、ガチャから出るキャラクターカードには、バトル用の冒険者カードと住民カードが含まれています。詳細はガチャの時に説明しますね」


 フロンティアモード開始ボーナス(1日目)


 • ガチャ10連チケット

 • 村長の家 1軒

 • 緊急食料 10人分

 • 砂糖 一袋 

 • パン30個


「ラピさん、家があるってどういうこと?」アキラは驚いた。


「すごいでしょう。この家が本拠地です。フロンティアモードの進行に必要なコマンドもここで実行します」


「なるほど。でも、今から出すのはちょっとなぁ」机の上には、さっき川から引き上げて来た、冷えたビールがあったからだ。


「明日の朝でも大丈夫ですが、ガチャだけは引いておいてくださいね!」


 アキラはガチャ画面に移動した。最初のガチャの時とは異なり、派手な演出はなく、サクッと引くことになった。


フロンティア住民ガチャ(10連目はSR以上確定)

配布確率


•1.5%: PSR ネームドキャラ(初期キャラ)

•8.5%: SR ネームドキャラ(初期キャラ、10キャラのみ排出)

•60%: R 農民(男女)、工芸職人(男女)、建築職人(男女)

•30%: N 子供(男女)


結果


 N子供(男)R農民(女)R建築職人(男)R建築職人(女)N子供(女)R農民(男)R農民(男)R農民(女)


 SR 狩人 ノクス(女、エルフ)

 SR メイド ステラ(女、人間)

•SR衣装(ノクス用初期衣装)

•SR衣装(ステラ用初期衣装)


「どうですか、この結果は?」アキラがラピスに尋ねる。


「まあ、特に問題はありませんが…女キャラが多いですね」ラピスが少し不満そうに答えた。


「ガチャだから僕が選んでるわけじゃないよ!」


「はいはい。では説明しますね。PSRとSRは冒険者としても使えるバトルカードですが、それ以下のレアリティは戦えません。基本的にレアリティは変わりませんが、子供キャラはレベルがMAXの10になると再抽選でレアリティが変わり、ジョブも自動的に出現します」


「アキラさんとセレナのステータスを見てみてください」


• アキラ: 商人 LV13 / 魔術師 LV8

• セレナ: 調理人 LV12 / 魔法戦士 LV8

• ルナ:


「あ、ステータスが増えてる」


「はい、元々あったのですが、表示されていなかっただけです。ちなみに、職業レベルのMAXは全職種・レアリティで20ですから、アキラさんは商人として一流ですよ。それに、褒めたくはありませんが、セレナもなかなかの腕前ですね」


「だからセレナは料理が上手だったんだね。僕は商人なんてしたことないけど」


「基本的に、本人の適性や趣味がないと職業にはつきにくいですから、どこかで商人に興味があったんでしょうね」


「なるほどね。ところで、仕事レベルが上がるとどうなるの?」


「スキルを取得できるようになります。レベル12からスキルが取得可能ですよ。それと、冒険者のジョブは1つだけですが、職業ジョブは増えます。PSRは3つまで、SRは2つまで増やせると思います」


「そうだね、楽しみだね」アキラは、にこにこしながら寝床に腰掛け、セレナからもらったナッツをつまみに、ビールを飲んでいる。どれだけ理解しているのだろうか?ビールってそんな強いアルコール設定だったっけ?


 そんな事を考えていたら、いつの間にか、アキラが寝落ちしていた。


「全くもう、今日はお疲れ様でした。お休み、アキラ」


 川の流れる音しか聞こえず、森は不気味な静寂さを演出している向こう側で、世界は、静かに動き始めていた。












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