第22話 牙狼の森
オークナイトを一匹倒した。オークキングを一匹倒した。
経験値 80pを獲得しました(セレナ100p) 600ゴールドを獲得しました。
アキラはレベル8になりました。セレナはレベル7になりました。
マップ機能が強化されます。
※フロンティアモードが開放されました。 ゴールド: 3,460- 保護時間: 7日
「アキラさん。おめでとうございます。ついに、この世界のもう一つのモードが始まります。夜にレクチャーしますのでお待ち下さい!」
「何だそれ!まあ、楽しみにしておくよ」
アキラは、戦いで更地になった場所に敷布を敷き、セレナとルナを寝かせていた。
レベルアップのアナウンスと共に、二人は目を覚まし、横たわっていた体を起こした。
「アキラ、ありがとう。そして、ごめんなさい」セレナは頭を下げて感謝と謝罪を口にした。
「いいよ、それよりセレナの服を預かっている。着替えたらどうかな?倉庫から出すよ。」
アキラは怒ることなく、むしろ彼女たちの気持ちに気づかなかったことや、武器や装備を準備してあげなかったことを反省していた。
「まったくもう、お人よしなんだから」ラピスは、誰にも聞こえないくらいの声で呟いた。
彼の変わらない優しさが嬉しくもあり、同時にその対象がセレナであることに少し嫉妬してしまう。
セレナは、戦闘で破れ汚れた自分の姿を見て恥ずかしくなったらしく、静かに頷いた。アキラは倉庫から、PSR専用の初期衣装と武器を取り出した。
それを見た瞬間、セレナは「これで十分だ。そんな高価なものは受け取れない。」と、小屋にあった服ではない予想外の品に驚いて断った。彼女の思わぬ拒否に、アキラは言った。
「これは、神様からの贈り物なんだ。だから、あなたが受け取る権利がある」
「でも……」セレナはためらいながらも、目は衣装に釘付けだった。あと一押しだ。
「今日一日着てみようよ。嫌なら、明日から着なくていいよ」
「わかった」セレナはその場で服を脱ごうとした。
「こら、アキラ!ロリコン!」ラピスの大きな声が響いた。
「目をつぶれ!テントを出せ!」さらに叫ぶ。
「目を瞑るとテントは出せないよ」とアキラは返す。
しかし、なぜか操作していないのに、ドスンと大きな音がし、一瞬でテントが現れた。
「セレナ、この中で着替えなさい!これは命令です。」ラピスの声がアナウンス機能を通じて響き渡る。
突然の指示に驚いたセレナは、衣装を手に持ち、慌ててテントの中に入った。
「え?何が起きたの?」とアキラはラピスに尋ねる。
「仕方ありません。これは介入ではなく、コンプライアンス的対応です」ラピスはしらを切った。
「そうだね。法令順守だね」とアキラが理解すると、
「黙れ!ロリコン男!」彼女は本気で怒った。
しばらくして、セレナが照れくさそうにテントから出てきた。ルナが「ワオーン、ワオーン」と鳴いた。
衣装はリサイズ機能があり、小さな彼女にもぴったりだった。
動きやすく耐久性の高そうな革と布のチュニックとレギンス、靴。肩当てや腕当ても備わっている。呪文が刻まれた銀の腕輪、足輪、ネックレス、マント。
全てに牙狼族の紋章が刻印されている。
武器は短剣で、鞘にも牙狼族の紋章が刻まれている。デザインは既に渡している片手剣と同じだ。
「ラピスさん、この装備と武器、凄くない?」とアキラは尋ねた。
「初期衣装とはいえ、PSRです。手は抜けません。自信作ですよ。作成には苦労しましたが、衣装はアキラさんの衣装レベルを簡単に超えますよ」
そんなやり取りをしていると、セレナとルナが真剣な顔で近づいてきて、頭を垂れ足元に跪いた。
「混沌にして、創造の神 エリス神の命により、アキラ様をお守りいたします」
ルナも、今までで一番の大きな声で吠えた。彼女にも、牙狼族の紋章の首輪がつけられていた。
ラピスのしてやったりの笑い声が、そよ風のようにその場を包んだ。
※
「アキラ、お腹減った!」
「じゃあ、一度帰ろうか。」
「ううん。ここで食べて、オークを倒しに行く」セレナが、もう普段の調子に戻っている。アキラは、少し残念なような、でもどこか嬉しいような気がした。
パンと干し肉の簡単な食事をしながら、アキラはセレナたちから事情を聞いた。
南西の森にいるオークを殲滅しても、狼たちは戻ってこないだろうなと考えながらも、レベルアップも必要なので、アキラも協力することに決めた。
「オークと戦いはしたが、禁じられた戦いじゃない。禁じられた領域にも入ってない。敵が勝手に出てきた。
川の近くで戦って、何かあれば川に逃げる予定だったの」
セレナは自分たちの論理を説明したが、ラピスの舌打ちが聞こえた。
「いや、誘き出したんだよね。川に逃げるの失敗したよね。」アキラはそう思いながらも、心の中に留めて黙っていた。
南西の森に棲むオークたちは、オークキングが倒されたことで、恐れて遠くへ逃げる者、無関心の者、隠れる者など、反応はさまざまだった。
元々、個人主義の強い種族であり、集団で復讐を企てるような考えはなかったようだ。
「南西の森、真ん中にある泉までならば、入ることを許しましょう!」
ラピスの言葉を聞いたセレナは、「アキラ、先に行ってる!」とルナを連れて駆け出そうとする。彼女たちは狩りを始めるつもりだ。
「これを持って行って」アキラはセレナのリュックに薬草×2、毒消草×2、RP×1を入れた。
多く渡すと無理して戦うことになると言われていたので、最低限だけ渡すことにした。
両刀を腰に差し、マントを羽織り、高貴な武具に身を包み、フェンリルを従えたセレナは、一流の冒険者のように見えるだろう。
森の入り口にはほとんどいないオークだが、森の真ん中には、数多く、少数で存在している。
セレナたちは昨日までと違い、他の魔物には目もくれず、オークだけを狩っていた。オークたちが敏捷性に欠けるわけではない。むしろ魔物の中では素早い方だ。
しかし、セレナたちは最初の一撃を加える優位性、オークキングを上回る圧倒的
な速度、そして今回装着した武具によってさらに強化された速度を誇っていた。
セレナとルナの狼族のチームワークもあり、目をつけられたオークが生き延びることは不可能だった。
一方で、アキラもオークを単独で討伐しようと試みたが、オークは魔法防御とオートヒールを持っており、一撃では倒せなかった。
そして、戦うことなくすぐに森の中へ逃げ込んでしまった。結局、倒せたのは2匹だけだった。
仕方なく、アキラはマップ機能を活用しながら、森からわずかに見える空を眺めつつ、蜘蛛を撃っていた。
しばらくして、セレナたちが少しガッカリした様子で戻ってきた。
「レベルが8に上がったじゃないか?」
「うん。でも8匹しか倒せなかった。」
話を聞くと、最初の数匹は順調に倒せていたらしい。しかし、徐々にオークたちはセレナの周囲から姿を消していった。
彼らも匂いや音に敏感な魔物であり、狼が狩りに回っていることが分かると、今まで無関心だったものや隠れていた者たちまでも、一斉に遠くへ逃げ出したのだ。
一夜にして、いや、半日にして、オークの森は牙狼の森となった。
※※
ラピスはオークキングとの戦いを観戦し、違和感に気付いた。オークたちが明らかに強すぎるのだ。
ランダムに割り振られているはずの数値が設定値を超えており、獲得可能なスキルやその数も異常だった。
そういえば、キラービークイーンの時も同じだった。誰かの意図的な介入があるのだろうか?あの男の仕業か。だとしたら狙いは?
ラピスはアキラを守らなければいけない。
ゲームを進めるための堅実なプランを捨て、積極的なプランに変更する決断をした。リスクを取らないことが最大のリスクとなることを避けなければならない。
ラピスが使えるリソースは限られている。彼女は、次のカードを切った。
バトルモード
ステータス
アキラ セレナ ルナ
魔術師 魔法剣士 フェンリル
レベル8 レベル8
HP: 70/80 HP: 100/100 HP: 94/94
MP: 50/82 MP: 62/62 MP: 31/31
Exp: 383/474 Exp: 321/474
親愛度: MAX
スキル: 火 7/10 雷剣 4/10 跳躍 4/10
風 7/10 稲妻 2/10
水 3/10
鑑定 3/10
SP: 5 SP: 15 SP: 15
ゴールド: 4,210
保護時間: 7日
ウィークリーミッションは、二週目に入っているが、1週目は全て達成している。新人冒険者応援ミッションも全て獲得した。
**ウィークリーミッション**
1. デイリーミッション達成 1/7 150ジェム
2. 未踏エリア7箇所開放1/7 1,000ゴールド
3. 魔物30匹倒す20/30 パン、干し肉×10 ✖️
4. 全て達成する 300ジェム
特別ミッションも確認する。
**新人冒険者応援ミッション**
①レベル到達 各500ジェム
レベル6 ◯ レベル7 ◯ レベル8 ◯
②-next複合魔法を使う MP(M)✖️3 ◯
②-last 魔法を3種類使う MP(H)✖️3 ◯
③-next魔物を5種類倒す RP(M)✖️3 ◯
③-last 魔物を10種類倒す RP(H)✖️3 ◯
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