第48話 【三人目の仲間・4】


 ギルドの条件として、人数の確保の他に重要事項として事務所の場所が必要だと知った。


「事務所はここで良いよな?」


「ええ、そのつもりでそれ用の部屋作ってたでしょ?」


「あ~、そういや全く使って無かったら存在自体忘れてた」


 この建物にはギルドを建てた時の為、それ用の事務所のような部屋も用意していた。

 パーティーで使うには広すぎるから、普通の住居用の部屋をパーティー用として使ってた俺はその部屋を忘れていた。


「まあ、万が一駄目だった時は俺か智咲の実家の場所を使わせてもらうか」


「そうね。偶にお父さん達が見に行ってるみたいだけど、使ってないから有効活用できるならそうした方が良いものね」


 特に問題は無さそうだと判断した俺は、智咲とも別れ明日からのゲート探索が楽しみで少し早めに寝た。

 翌日、平日の為、午前中はアカデミーにいかないといけない為、朝早くに起きて登校した。


「ちょっといいかしら」


 登校してきて直ぐ、俺達は今井先生に呼び止められた。

 そして、ここで話す内容じゃないからと別室に通された。


「どうしましたか?」


「神代君達も苦労してるとは思うんだけど、どこかのギルドに入ってくれないかしら? 私の休日まで、生徒と連絡を取らせてくれって色んなギルドから連絡が来て……」


「あ~、今井先生に迷惑掛かってたんですね」


「私は神代君達の先生だから、そういう対応もしないといけないってのは分かってて先生をやってたけど、流石に多すぎて疲れたわ」


 今井先生は目の下に凄い隈が出来ており、相当俺達の事で悩まされてるんだなとハッキリと分かった。

 俺はそんな先生に対し、迷惑を掛けたのもあるから今後の事について伝える事にした。


「先生、もう少し待っててください。今、新しいメンバーを入れようとしていて、そいつと連携がうまくいくようでしたら、そのままギルドを作ろうと思ってるので」


「それは本当! 私の安眠が戻って来るんだ!」


「そこまで喜ぶ程、迷惑を掛けてたんですね……」


 今井先生は目を見開き、ガチャで目当てが出た子供の様に喜びを体で表現していた。


「一日に全国色んなギルドから来てたわね。まあ、アカデミーの生徒に対して勧誘行為は禁止されている事だから、私に連絡が来るのは仕方ないけどね……」


「そう言えば、そんなのもありましたね。でも普通に来てたわよね? 流石にパーティーハウスには少なかったけど、ゲートとかで張り込みされてた時は本当に魔法で吹き飛ばすか悩んだわ」


「見えない所だったらやっても良かったわよ。禁止されてる事を先にしてるのは向こうだから、ただその後に協会やら色んな所から怒られるからお勧めはしないわ」


「経験した事があるような言い方ですけど……」


 今井先生の言葉に対し、杏奈がそう言うと先生は笑みを浮かべて「やったわよ」と過去の事を隠さずそう言った。


「正当防衛を過剰にしてしまったっていい訳が何とか通じて、一ヵ月謹慎とかだったから休む事が嫌じゃないならやっても良いと思うわね」


「……今は成長の機会を失いたくないし、今はしないでおいた方が良いわね」


「今、少し悩んでなかったか? 絶対、やる前に話してくれよ? 絶対に止めるから」


「そ、そうだよ。嫌な事が溜まる前にショッピングとかで、気分を張らそうね智咲ちゃん」


 危ない思考をしてる智咲に対し、俺と杏奈はそんな風に止めていたが今井先生は楽しそうに笑っていた。

 その後、もう少ししたら解決すると分かった今井先生から解放された俺達は、そのまま自分達の教室へと向かった。

 そうしてその日も一日、知ってる人や知らない人からパーティーに入りたいや入ってほしいという勧誘などの話を断り続け。

 一日の授業が終わった瞬間、智咲の【空間属性魔法】で即パーティーハウスに帰宅した。


「正直、ここ最近は智咲の【空間属性魔法】の有難みを凄く感じるな」


「ふふっ、感謝してよね。この距離感を転移するのでも、相当訓練しないと出来ないのよ」


 その後、訓練室で訓練をしてる渚を呼びに行き、ゲート探索の準備を行った。

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