第47話 【三人目の仲間・3】


 真を連れてパーティーハウスに戻ってきた俺は、渚も一緒にパーティーメンバー達に部屋に集まってもらった。

 渚意外とは既に顔見知りな状態なので、二人には互いに自己紹介をしてもらった。


「渚には急な話になるんだが、真は今日からパーティーに臨時で入る事になった。ほぼ加入前提のお試し期間みたいなものだから、仲良くしてくれたらリーダーとして嬉しい」


「よろしくお願いします。天野さん」


「う、うん。よろしくね秋山君、その人見知りだから最初はあんまり喋れないけど、嫌いとかじゃないから気にしないでね」


 渚は何とか自身の事を説明して、互いに握手を交わした。

 その後、真に今のレベルを聞くと、先日20に上がったと言われた。


「臨時で色んなパーティーに行ってるとはいえ、かなりいいペースでレベルを上げてるな」


「一ノ瀬さんのおかげで、魔法も使えるようになって楽しくて毎週学校が休みの日は殆どゲートに行ってたのでいつの間にかレベルが上がってました」


「成程な、だったら取り合えず渚と真はレベル29を目標にゲートを潜ろうと思う」


 毎度のことながら、【大宰府迷宮】は美味しいゲートだ。

 既に攻略方法も熟知してる為、二人にはレベル29になったらあのゲートに行ってもらう。


「確かそこのゲートって、一ノ瀬家が管理してる場所ですよね。入る事って出来るんですか?」


「まあ、色々とあってな頼めば入れるんだ」


「そうなんですね。では、分かりました。29まで頑張ってレベル上げしますね」


 そう真は言って、一先ず直近の目標が定まった。


「ちなみに、パーティーメンバーは全員このパーティーハウスで暮らしてるんだが、真はどうする?」


「えっ、ここに住めるんですか!?」


「その為に作った場所だから、なんならパーティーメンバーの家族も一緒に住んでるから、真も家族を連れて来ても良いぞ」


「あっ、家族ですか……そ、そうですね。家族も一緒なら安心ですもんね!」


 家族という単語に、それまで嬉しそうな表情をしていた真は一瞬だけ困った表情をした。

 俺はそんな表情を見逃さず、話が終わり解散となった際に真を送るからと言って二人だけとなった。


「真、家族と仲が悪いのか?」


「え!? ど、どうしてそんな事を聞くんですか!?」


「さっき、俺が家族も良いぞって言った時に言葉が詰まってただろ? 何かあるかと思ってな、話せる内容なら話して欲しい」


「……その、俺は元々母子家庭だったんです」


 真はそこから自分の家族について話し始めた。

 真は元々母子家庭で小学5年生まで過ごしていたが、母が急に再婚をする事になり新しい父親が出来たらしい。

 最初は真も新しい父親に嬉しかったらしいが、その父親は母親が見てない所で真に対して虐待とも思える行動をして来たといった。

 それに新しい父親と母親の間には、新しい家族も出来てしまって母親にも言えない状況だと教えてくれた。


「中々に複雑な環境だったんだな」


「はい。まあ、探索者になって体を鍛え始めたら父親の虐待は無くなりましたけど、そんな人を武蔵さん達が建てた素晴らしい家に招待したくないと思いまして」


「ふむ……なら、真だけでも大丈夫だぞ。母親とは仲は悪くないのか?」


「母とは今でも仲がいいですけど、俺一人だけでも良いんですか?」


 真だけでもと伝えると、少し嬉しそうな表情でそう言った。


「別に家族と一緒にってのは、絶対条件じゃないからな、ただまあ未成年だから親の許可は必要だから母親に許可を貰ってさえくれば、大丈夫だぞ


「そ、そうなんですね。てっきり、家族も一緒が絶対条件だと思ってあそこには住めないんだって思い込んでました。だったら、今日中に母を説得して引っ越せる様に頑張ります!」


「まあ、何かあれば俺に連絡を寄こせば説得にも協力するよ」


 そう俺が言うと、真は嬉しそうな顔をして「ありがとうございます!」と言って走り去っていった。

 その後、俺はパーティーハウスへと戻って来て、智咲に真の境遇について伝えた。


「成程ね。それで話し合い中に暗い顔をしてたのね」


「智咲も気付いてたのか」


「当然よ。まあ、でも回帰前で〝魔槍〟の苗字が違う理由が分かった気がするわ。回帰前はそのまま一緒に暮らし続け、どこかのタイミングで親が離婚して苗字が変わったんでしょうね」


「まあ、そうだろうな。一先ず、これで人数問題は解決しそうだし、ギルドの条件とか改めて調べておいた方がいいな」


 それから俺達は、ギルド設立に関して条件等を調べ直す事にした。

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