第45話 【三人目の仲間・1】
渚を俺のパーティーで見る事になり、二週間が経過した。
最初の週は、体作りと俺達とのコミュニケーションする時間に使い、じっくりとゲート探索に向けて準備を進めた。
そしてそれが良い感じの所まで進んだと判断した俺は、渚を連れてゲートに潜り出した。
「渚、魔法の援護も凄く良かったぞ」
「そう? 武蔵にそう言って貰えると嬉しいな」
元々、空間魔法が使える渚はそのまま後衛に配置される事になった。
役職としては後衛のサブアタッカーという感じで、智咲の補助的役割を行う。
正直、最初は一ヵ月はD級ゲートから上はいけないだろうなと思っていたが、そんな事は無く昨日からC級ゲートに潜り出していた。
その大きな理由としては、渚の後衛としての力がかなり使えるからだ。
「正直、渚の【時/空間属性魔法】が戦闘であそこまで役立つとは思わなかったよ」
渚の扱う【時/空間属性魔法】は、智咲が覚えた【空間属性魔法】より強いスキルだった。
偶にスキルには似た名前で能力も似ており、どちらかが優れた能力を持っている。
別のスキルで言えば、【身体強化】と【筋力強化】というスキルがある。
これはどちらも身体を強化する系の魔法だが、【身体強化】の方が全てを同時に強化する事が出来る。
その為、【筋力強化】よりも優れており、また強化量も時間も【身体強化】の方が上となっている。
「正直、あれは渚が持ってる固有能力や加護の力にもよる能力ね。私があのスキルを手に入れるとしたら、数十年後とかになりそうだわ」
「そんな事はないと思うよ。智咲ちゃんの魔法の能力は凄く高いから、僕の魔法を近くで見てたら10年以内には【時/空間属性魔法】が手に入るかと思うよ」
「そうかしら? まあ、地道に訓練してみるしかないわね。最初は【空間属性魔法】さえ使えたらいいと思ってたけど、渚のスキルを見てたら欲しくなっちゃったわ」
智咲は渚がパーティーに臨時で入る事になって、凄いスピードで【空間属性魔法】に対する理解度を増してスキルとして身に着けた。
最初はそれで満足するつもりだったらしいが、渚の能力を見て訓練を続ける事にしたみたいだ。
「渚、本来の目的のレベルはどんな感じだ?」
「えっと、丁度20になったよ。武蔵が言ってた制限のあるゲートまで残り9だね」
「了解。取り合えず、今週の目標はそこだな。そこまで行けば、一ノ瀬家に連絡をしてあのゲートに行こうと思う。正直、あそこで手に入る宝はレベル30という制限があるゲートの中では凄く良いからな」
そんな報酬の中でも特に良いのが、能力値を上昇させる丸薬だ。
一つで20も上げられる丸薬を確定で貰えるとのは、あのレベル帯であれば凄く嬉しい代物だ。
「目標があるからといって、無理はしなくていいからね? 学生の皆は、学業も頑張らないといけないし」
「それは渚もだろ? 勉強の方は大丈夫なのか?」
「まあ、ぼちぼちかな……流石に数年間勉強してなかったから、分からない所が多いけどもう一度学べてるから凄く楽しいかな」
渚は事件のせいで人が多い場所は難しいので、元々通っていた高校から通信制の学校に変えた。
更に渚の事情を知っている元教師の琴音さんが、勉強を見て教えているので環境としては良い環境で勉強をしている。
「ってか、俺達もそろそろまたテストがあるよな……正直、実技だけにしてくんないかな」
「まあ、難しいでしょうね。今でさえ学生が探索者をするのは危険って言う人が一定数居て、何とか専門的に教えてるだけの学校としてアカデミーが居るのに勉強をやめたら、アカデミーへの批判がまた更に上がるでしょうね」
「言ってる人は才能が無く探索者を諦めた人達だから、学生で活躍してる姿を見るのが嫌なんだろうな」
十数年後、自分達の意見は正しいみたいな思考が加速し、S級やA級といった上級の探索者は国が管理するべきと言いだした。
当然、その事に探索者達は納得いかず、そこまで言うならと大半の探索者が国を去り、国は大きな損失を生じた。
俺は今回はそうならない為、動きたいが今の所、いい案は浮かんでいない。
「取り合えず、冬休みまでは勉強も頑張りつつだからゲート探索の時間は少なくなるな……渚もそれで大丈夫か?」
「うん。僕は頼んでる側だし、それで大丈夫だよ」
そうして今日の話し合いは終わり解散すると、部屋を出ようとしたら智咲から呼び止められ部屋の中に俺達だけが残った。
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