第41話 【運び屋・1】


 陸から相談を乗った数日後、俺達は近くのショッピングモールへと行きそれぞれの両親に対してのプレゼントを選びに行った。

 俺の両親、まだ実家に住んでた頃は二人で出掛けたりしていた。

 しかし、パーティーハウスに引っ越してきてから、建物内で一緒に過ごしている。

 何で出掛けなくなったの? と聞いたが、行かなくなった理由は特になく、パーティーハウスで過ごすのが楽しいからと言われた。


「それで武蔵は両親に運動靴を贈るのね」


「ああ、今の二人に必要そうな物ってこれ位だからな、それに父さん達が使ってる運動靴って結構前に買ったのだから丁度いいかなって」


 今の両親が使ってくれそうなもので考えた俺は、運動用の靴か服しか思いつかなかった。

 服に関しては前から結構持っていて、今更俺がプレゼントした所で量が増えるだけだ。

 しかし、靴に関しては結構前に買ったのをずっと使ってて、そろそろ買い替えても良い感じだった。


「智咲は何を選んだんだ?」


「私はキッチン用品ね。最近、お母さん達でお菓子作りにハマってるらしく、そっち系のキッチン用品が色々と欲しいって言ってたのを思い出したから適当に選んで買ってみたのよ」


「確かに最近、母さんよくお菓子作ってるな……パンとかも作ってなかったか?」


 母さん達はパーティーハウスのキッチンが色々と高性能で、今までやりたかったけどやれなかったお菓子作りにハマっているみたいだ。

 更に最近は、そこからパン作りも初めて夕食にパンが出で来る事も多い。


「そうみたいね。次はピザとかも作ってみたいって言ってたから、取り合えず色々と買ってみたわ。使わなくても、置いておけばいつかは使うだろうしね」


「備えあれば患いなしって言うしな、所で式守姉弟は何処に行ったんだ?」


 最初は一緒に見て回っていたが、自分達の両親に渡すのが中々見つからない式守姉弟は二人で何処かに消えた。

 グループチャットで呼びかけてみたが、そもそもスマホを見てないのか既読にすらならない。

 それから俺と智咲は、二人で式守姉弟を探す事にした所、杏奈は直ぐに見つかった。


「こんな所に居たのか、何してるんだ?」


「お母さんの為に楽器買おうかなって思ったんだけど、楽器の知識が無くてどれが良いのか分からなくって……」


「成程ね。まあ、ピアノ一つでも色々とあるみたいだからな、陸は何処に行ったか知ってるか?」


「陸なら、もう少し考えたいって言って上に行ったよ」


 杏奈から陸の居場所について聞いた後、智咲は杏奈と一緒に楽器を選ぶためにその場に残り、俺は陸を探しに向かった。

 上の階に着いた俺は、店の中を見て回って陸を探していると、探索者用の品を置いてる店で陸を発見した。


「プレゼントしたい物、まだ見つかったないのか?」


「あっ、武蔵さん」


 俺が声を掛けると、少し体をビクッと反応をさせて陸は振り返った。

 陸は未だ何も買っておらず、この店の中でも歩き回っていただけだった。


「そんなに悩みすぎなくてもいいと思うぞ、子供からのプレゼントって基本的に親は喜ぶんだから」


「そうなんですけど、折角渡すならって考え込んじゃって……武蔵さんは何を選んだんですか?」


「俺は運動用の靴だな、智咲はキッチン用品を買ってて、杏奈は多分だけど母親に楽器を購入するのかな? だから陸は父親に対して、何かプレゼントを選んだらどうだ。二人にって考えたら、色々と考え込むだろうけど弘人さんに対してなら何か考えつくんじゃないか」


 杏奈は多分、あのまま楽器を購入するだろう。

 そうなると、父親に対してのプレゼントをまた同じ時間をかけて考えるとなると、夜になってしまう。

 そうならない為に、式守姉弟にはそれぞれの親にプレゼントするという風にしてもらおうとそんな提案をした。


「父さんに対して……それだったら、サウナ用のグッズとかいいかも」


「おっ、良いんじゃないか? 弘人さん、よく大浴場のサウナ使ってるからな、陸からのプレゼントを貰ったらもっと行くと思うぞ」


 陸は俺からの言葉を聞くと、弘人さんに対してのプレゼントが思いついた様でそのままサウナグッズが置いてある場所へと向かった。

 そしてそこで色んなサウナ用のグッズを購入をして、智咲達と合流をした。

 杏奈も無事、母親に贈る楽器を見つけたみたいだ。

 ちなみに杏奈に先程、別々で親に渡せばと言った所、もう一度プレゼント選びに悩むのは今日は嫌だと言って俺の案に乗る事になった。

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