第39話 【C級ゲート・3】


 巨大な蛇との戦闘をした奥地には、小さな洞窟がありその中には一つの宝箱が設置されていた。

 その宝箱を一応警戒しつつ開けてみると、中には一つの指輪が合った。


「……この指輪。見た目は普通なのに凄い効果してるよ」


 その指輪を【鑑定】が使える杏奈に見て貰うと、杏奈は驚いた表情をしてそう言った。

 この宝箱に入っていた指輪は、回帰前ではとある外国のギルドがオークションで手に入れた。

 その能力とは、装備しているとドラゴンに対して特攻を付与するという能力。

 特攻系の宝は、これまでゲートで数種類出ているが、どれも価値が高く最低でも100億はする。


「正直、この指輪の能力は今後に役に立つと思うから使いたいんだけど、皆はどう思う?」


「私は持ってた方が良いと思うわね。お金なんて稼げばどうにかなるけど、この指輪は似た性能を探す方が難しいと思うし」


「私も武蔵君達と同じ意見。もしも、これが本格的に探索者を始めた頃だったら売りたいと思ってたかもだけど、今はお金は稼げるからね」


「俺は武蔵さん達の意見に従います」


 そんな感じで、これまで稼いでいたおかげで式守姉弟は売却するという思考は無かった。

 俺と智咲はこの指輪の存在を知っていて、これの為に来たようなものだから売るという選択は元々なかった。

 こうして宝を手に入れた俺達は、そこで少し休憩をしてから再び探索に戻った。

 それから一日ゲートの中で過ごし、一ノ瀬家側の探索者パーティーがボスを倒したみたいで、ゲートの探索は終わった。


「武蔵達、最後は何処に居たんだ? 最初、凄い速さで奥に進んでなかったか?」


「途中で違う道に行ってしまったんですよ。それで遅れたので、その辺を探索してました」


 指輪の事は明かせないので、話しかけて来た信士に対してそんな風な言い訳を言った。

 まあ、実際にボスが居る場所に向かう道と、あの巨大な蛇が居る場所は近いようで遠く。

 道を一つ間違えば、かなり距離が遠くなってしまう。


「何とか切り抜けたな……」


「ええ、見つけた宝は自分達の物とは言え、あの指輪が知られたら色々と聞かれそうだったものね」


「今回のゲート探索で一番緊張した気がするよ……」


「俺も姉ちゃんに同じく……」


 ゲート探索後、周りには一ノ瀬家側の人間しか居ない状況だったので俺達は少しも気が緩められず。

 パーティーハウスに戻って来て、緊張感が解けた。


「指輪だけど、今は取り合えず保管しておくか。どうせ今の行けるゲートにドラゴンは居ないし」


「そうだね。着用してる時に、見つかっちゃうか可能性もあるしね」


「でも、いざ使うって時に手元になかったら意味が無くないですか?」


「それもそうだな、じゃあ取り合えず俺がいつも持ってるアイテムバッグに入れておこう。それでいいか?」


 そう俺が聞くと、皆は頷き納得してくれた。

 まあ、この指輪を使うとしたら俺か智咲になり、事前に智咲とは話しをしており、この指輪は俺が使う事になっていた。


「今日は疲れたし、訓練は流石にやめておくか」


「一日ゲートに入ってたのも久しぶりだし、ゆっくりお風呂に入りたいわ」


「私も、智咲ちゃん行こ」


 ゲートで一日過ごした俺達は、今日はゆっくりと過ごそうと言うと、我慢していた智咲と杏奈は、直ぐにお風呂に入りに行った。

 そんな二人を見送って俺と陸も風呂に入りに行き、一日の汚れと疲れを風呂で取り、入浴後は自分の部屋でゆっくりと過ごす事にした。


「……なんだ。焔からか」


 自室のベッドに横になって、溜めていた漫画を呼んでいるとスマホの通知が鳴り確認すると焔からだった。

 内容を確認すると、俺達がC級ゲートを攻略した事を知ったらしく、お祝いのメッセージを送って来ていた。


「祝ってくれるのは嬉しいけど、俺達はドンドン強くなってるぞ?」


 メッセージを確認していると、既読を付けたからか直ぐに焔から電話が掛かって来たので、俺はそんな風に焔に言った。


「ふっ、俺を舐めて貰っちゃ困るぜ! この間、協会に俺の作った剣を出品したんだがC級って認めて貰ったんだからな!」


「なっ!? マジかよ……」


 生産系の探索者の多くは、ゲート内での戦闘能力でランクを測る事が出来ない。

 なのでそれぞれの作成物によって、個人のランクが変わってくる。

 ランクに関しては、普通の探索者達と同じでランクが高くなればなるほど、審査も厳しくなってくる。

 ちなみに鍛冶師の一人前と認められるのは、B級が基準となっている。


「武蔵達よりランク上げは遅かったけど、もう追いついたぜ! このままいくと、俺の方が上になっちゃうかもな!」


「ふっ、言ってろ。勝負は冬休みが始まる日までだから、時間はまだ沢山あるからな」


「その分、俺も成長出来るけどな!」


 俺と焔は互いを牽制しつつ、電話を切った。

 その後、俺は焔の成長速度に感心しながらも、このままだと負ける可能性もあるので次のゲートについて考え始めた。

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