第38話 【C級ゲート・2】


 オーガ、二足歩行型の中級クラスの魔物。

 主に近接系を得意としており、【身体強化】等の強化系スキルを保持してる事が多い。

 素材は主に防具に使われており、そこそこなお金になる。


「ハァッ!」


 タンク役である陸は、一番先頭に立ち盾を構えてオーガ達の攻撃を防いだ。

 何匹を一斉に陸に襲い掛かるが、陸は自身に【身体強化】を掛けて一切押されてなかった。


「よくやった。智咲、右側のオーガを頼む」


「了解」


 後方で魔法の準備をしていた智咲に指示を出し、俺自身も前に飛び出し左側のオーガに攻撃を仕掛けた。

 オーガは攻撃力と防御力がバランスよく、こいつを難なく倒せるのがC級探索者の証のようなものだ。

 そんなオーガ相手に俺達は、危なげなく戦闘を終わり解体を済ませて先へと進んだ。

 その後も何体かオーガが出現し、偶にゴブリンやスケルトンの上位種等が出て来たが事故も無く奥へと進んで来た。


「この奥まで来てるのは、俺達ともう一つのパーティーだけみたいだな」


「って事は、一番最初に攻略出来るチャンスがあるって事ですかね?」


「いや、そこは厳しいかもな、入る時の条件として先に一ノ瀬のパーティーが挑戦してからって言われてるからな、もう一つのパーティーが失敗したら行けるかもだけど、人の失敗を願うのは違うからな」


 正直、初攻略の報酬はどのゲートでも美味しい。

 特にC級とかだと、偶に良い物を貰えたりするから狙い所だが、今回は一ノ瀬家に入れさせてもらってる立場である。

 しかし、ここに来た理由として初攻略よりも欲しい物があったからだ。


「武蔵、この先に魔物が集まってる場所があるわ」


「俺も確認した。陸、杏奈。ここから先、激戦になると思うから気を引き締めてくれ」


「分かりました」


「了解」


 俺の言葉に式守姉弟は返事をして、その魔物達が集まってる場所へと向かった。

 俺と智咲はここのゲートについて、回帰前の記事を見て知っていた。

 C級ゲートの一部がB級ゲートレベルの強さとなっていて、多くの探索者の犠牲を出した。

 その事故を防ぐ為、そしてそこで得られる宝を取る為に俺達は態々、ここのゲートに探索に来た。


「あんなに大きな蛇、初めて見ました……」


 向かった先に居た魔物は、巨大な蛇型の魔物とその魔物の取り巻きの魔物。

 取り巻きの魔物はC級レベルの魔物だが、巨大な蛇はB級の魔物だ。


「陸。蛇にだけ集中しろ、それ以外の魔物は俺がどうにかする。杏奈は陸のサポートに徹してくれ」


「「はい!」」


 式守姉弟に指示を出し、俺は剣を持ち魔物達に攻撃を仕掛けた。

 初手で数を減らさないと、後で面倒になる事は確定してる為、惜しまず最初から全力で攻撃を仕掛けた。


「シャャャャッ!」


「チッ、あと少しで取り巻きは全部倒せたのに」


 陸が巨大な蛇を引き連れてる間、取り巻きを全部倒そうとした。

 しかし、蛇は自分の部下が死んだ事に気付いてしまい、陸から視線を外して部下達を守るように体を動かした。

 そして、蛇は天井近くまで頭を上げると広範囲に毒の霧を吐いて来た。


「智咲!」


「大丈夫よ。準備出来てるわ」


 俺の指示に対し、智咲は落ち着いてそう言うと【風属性魔法】でその霧を魔物達側に向かって吹き飛ばした。

 しかし、魔物達は毒の耐性がある為、今の毒が決定打になる訳ではない。


「……陸。二人をちゃんと守れよ」


「えっ、武蔵さん? 前に出たら危ないですよ!」


「大丈夫だ。智咲、頼むぞ」


 陸に智咲達の事を頼み、俺は陸よりも前に出た。

 そんな俺に蛇は睨みつけると、その巨大な頭で叩き潰そうとして来た。


「よっ、と」


 しかし、俺はその蛇の動きを見切って回避。

 そして蛇が体を動かした事で守られていた部下達に向かって、後方で魔法を準備していた智咲の魔法が部下達を襲った。

 破壊的な魔法によって、蛇の胴体に傷がつき、更に残っていた取り巻きの魔物は全部死んだ。


「キシャャャャャ!」


「シャアシャア、うるせぇッ!」


 激昂する蛇に向かって俺はそう叫びながら、天高くに飛びバフを重ね掛けして蛇の頭部に剣を突き刺した。

 その剣は頭で止まる事無く、胴体を真っ二つに切り裂き、巨大蛇の討伐に成功した。


「はぁ、はぁ……きっつ」


 強化魔法の連発、更に動き回った俺は体力の限界が来てその場に寝転んだ。

 回帰前で多くの探索者の命を奪った魔物の討伐に成功した俺は、報酬を受け取る前だが、嬉しさが込み上げて来て自然と笑みを浮かべた。

 その後、心配した式守姉弟に休憩をする様に言われたが、早く報酬が見たい俺は智咲と共に説得をして奥へと向かった。

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