第37話 【C級ゲート・1】
真との話し合いから数日後、金曜日の夕方に俺達は山奥にあるゲートへと向かっていた。
今回、俺達が挑むのはC級ゲート。
勿論、正規ルートで入る為に俺と智咲はC級に昇格した。
「もう少しレベルが上がってたら、私も武蔵君達と一緒に受けたんだけどな~」
「仕方ないわよ。サポーターの杏奈は、レベル上がる速度が私達とは違うんだし」
レベルょ上げるための経験値は、パーティーに対して均等に振られるようなものでは無い。
戦闘を行った際の貢献度で割り振られ、支援に徹してる杏奈は俺と智咲よりもレベルが上がる速度が遅い。
その為、今回は試験を受けても落ちそうだった杏奈は、俺達と一緒に試験は受けなかった。
「今回のゲートを攻略したら、昇格試験を受けても大丈夫なレベルになると思うし、今は探索にだけ集中しよう。陸もそんなに緊張しなくていいぞ、いつも通り役割に徹してくれたら大丈夫だから」
「は、はい。分かってるんですけど、やっぱりC級ゲートに自分が入ってると思うと緊張しちゃいまして……」
陸は、これまで自分に合ったゲートにしか行った事が無い。
その為、初めて自分よりも強い魔物が居るゲートに、かなり精神的にきてるみたいだ。
「陸、大丈夫よ。何かあれば私が守って上げられるし、隣には貴方が尊敬する武蔵君が居るのよ? そんな心配しなくても大丈夫よ」
杏奈はそう陸を安心させ、俺達はゲートの中へと入った。
今回のゲートは既に攻略されたゲートではなく、少し前に新たに出現したゲート。
その為、多くの探索者が探索の許可を巡って競り合い、見事一ノ瀬家がその権利を獲得した。
そして俺達は、そんな一ノ瀬家の別動隊として今回のゲート探索に来ている。
「なんだかんだ一ノ瀬家に世話になってるな」
「まあ、使える物は使うって決めたし、良いんじゃない? それに前程、そんなに干渉してこないし」
智咲としては神代家の様に、痛い目に合わせてやりたかったという気持ちもあった。
しかし、神代家にした俺達の行為を見て一ノ瀬家側は智咲に対して、以前程の干渉をしなくなった。
その為、今は使える時に使ってやろうという精神で利用している。
あちらもその俺達の利用のおかげで色々と得る物も有り、利用し合ってる。
「それにしても、ここのゲート。凄く暗いね。森って聞いてたけど、なんだか洞窟の中を探索してる気分」
「姉ちゃんもそう感じた? 俺もなんか洞窟の中を探索してるみたいだよ」
式守姉弟はゲートに入ると、ここのゲートの異様な空気感にそんな事を言った。
ここのゲート、回帰前では攻略された後に【暗黒の森】と呼ばれるゲートとして多くの探索者が訪れていた。
人気な理由としては、ここで採れる素材はどれも価値が高く、生産系の依頼で探索者は稼いでいた。
「そろそろ大きなアイテムバックが欲しくなって来たな……それか収納系のスキル」
「収納系ね。空間魔法は今も訓練中だけど、使えるレベルにするにはまだ時間が掛かるのよね……一時的にパーティーから離脱して、訓練に集中すれば早く使えるようになるけど、どうする?」
「流石にそれはパーティーとして痛手だから、智咲はゆっくりと訓練をしてくれ、取り合えず新しいアイテムバッグの購入を検討しよう」
探索をしてるいと、素材がいつの間にかパンパンになっている事がある。
素材の移動方法としては基本的に三つあり、一つは普通のバッグに入れて持ち運ぶというやり方。
これは初心者探索者が多く行っており、金がない時期はこれで凌ぐしかない。
次にアイテムバッグと呼ばれる魔道具を使うやり方。
これは見た目は普通のバッグだが、中が異空間に繋がっており見た目以上に物を入れられる。
そして三つ目は、空間魔法が使える探索者に素材を入れて貰うというやり方。
回帰前は智咲が空間魔法を訓練して、日用品から探索で採れた素材を全てその中に入れて行動していた。
「さてと、そろそろ魔物に接敵しそうだから気を引き締めて行くか」
話しながら進んでいた俺達は、魔物の気配が近づいて来たので警戒をしつつ、前へと進んでいった。
それから数分後、俺達はこのゲートで現れる魔物の中で一番見かけやすい、オーガの群れを発見した。
オーガは力が強く、並大抵の探索者であれば盾で防いだとしても怪我をしてしまう。
「陸。あいつらの攻撃、受け止められそうか?」
「……少し不安ですけど、行けます」
「よしっ、ならいつも通りの陣形で行くぞ」
陸は目に闘志を宿しながら言ったので、俺はそんな陸の言葉を聞いていつも通りの陣形で行くと伝えてオーガ達へと近づいた。
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