第35話 【二人目の仲間・3】
「陸。正式に俺達の仲間に迎え入れたい」
部屋に入った俺は、智咲と杏奈が来るのを待ち4人が揃って直ぐに陸に対してそう伝えた。
陸は俺からそんな事を言われるとは思ってなかったのか、驚いた表情をして固まった。
「お、俺が武蔵さん達のパーティーに正式な仲間にですか? 俺、この間まで何も出来ない剣士だったんですよ?」
「この一ヵ月、陸はかなり成長しただろ? その強さは俺達のパーティーには必要だと思ったんだよ。どうだ俺達の仲間にならないか?」
「なりたいです! まだ未熟者ですが、どうかよろしくお願いします!」
陸はバッと立ち上がると、俺達に向かって頭を下げながらそう言った。
内心、断られるかも知れないと思いつつ、陸が入りたいと言ってくれた事に安堵した俺は今後の事について話し合いを始めた。
「これで4人体制になったな……後一人いたら、ギルドを作れる人数だな」
「そうね。でも、増やす枠はどうするの? 正直、前衛二枚後衛二枚って綺麗なパーティー編成になってるわよね」
現在の俺達のパーティー編成は、理想のパーティー編成の形となっている。
どちらかが多くなりすぎず、また一人一人に役割がちゃんとしている。
「ギルドを目指すならパーティーに入るより、俺達の仲間になってギルドのメンバーの一人になってもらうという形の方がいいかもな……」
「前衛アタッカーである武蔵さんと、後衛アタッカーの智咲さんの火力は今でも有り余ってるから、アタッカーを増やさなくても大丈夫ですからね……」
「今のゲートで俺達が勝てないって思うような魔物は、正直に言って居ないからな」
現在、俺達は陸の育成をメインに考えていたのでD級ゲートを主に探索していた。
これがC級になっても、今の俺達なら馬鹿な行動さえしなければ、安全に探索も出来るだろう。
ただし、問題なのはB級以降のゲートだ。
「B級以上になってくると、難易度が一気に高くなるからな……」
「そこを視野に入れるなら、人は増やし続けて良いんじゃない?」
「私も智咲ちゃんと同じ意見かな、今の探索できる場所で留まるなら私達でいいかも知れないけど、上を目指すなら人も増やした方が良いって私も思うよ」
「俺も智咲さん達と同じですね。上を目指すなら、それに合わせて人を増やして行った方が事故率は少なくなるとは思います。だからといって適当に人を増やしたら、それはそれで問題に発展する可能性もありますけど……」
陸の言葉通り、人を増やす事はいいのだがそれに伴って問題も起こりやすくなる。
人を増やし過ぎて、崩壊したギルドの話は何度も聞いた事がある。
「まあ、取り合えず人を増やすに関してはおいおい考えていこう。他に何か話がある人はいる?」
「武蔵さん、少し前に話をした槍術士の事を覚えてますか?」
話がある人と俺が聞くと、真っ先に陸がそんな事を言った。
陸の学校の探索者で言うと、前に聞いた槍術士の奴の話か?
「確か、秋山 真ってやつの話か?」
「はい。その彼についてなんですけど、俺が武蔵さん達と一緒に探索をしてる事を何処かから知ったのか、武蔵さんと話がしたいって彼が言ってたんですよね」
「話がしたいって、俺にか? 俺って、別に有名人でもないのに変だな……」
そう俺が言うと、智咲達は「え?」と何を言ってるんだという表情をした。
「ど、どうしたんだ? 俺、変な事を言ったか?」
「武蔵君、今の私達ってかなり有名人だよ? アカデミーでも、結構な頻度で表彰されてるでしょ?」
「いや、アカデミー内ではまあ多少はとは思ってるけど、えっ?」
そんな反応をした俺に対して、智咲達は今の俺達について説明してくれた。
アカデミーでの表彰は基本的には、活動実績による表彰が多かった。
その中には【大宰府迷宮】の事もいつの間にか知られており、その分野の研究者からはかなりお礼を言われた。
そんな俺達は今の若い世代の探索者の中で、トップクラスで有名人だと三人から教えられた。
「全く知らなかったな……」
「武蔵さん、周りの視線とかで気づきませんでしたか?」
「元々、そう言うのに視線に慣れてたせいか視線が増えても気にしてなかった……」
元々神代家の血筋という事で、ある程度は視線を集めていた。
特に幼い時は、本家で訓練していたらそういう視線を浴びていたから、特に気にせず暮らしていた。
「武蔵の図太い性格が裏目に出てたって事ね。まあ、そんな訳で若い世代の探索者から私達ってかなり人気みたいによ。どうしたら強くなるのか、よく聞かれるし」
「ふ~ん。まあ、良く分かったよ。取り合えず、その槍術士だけど時間を作るから予定を聞いておいてくれ」
特に話したくない理由もない俺は、陸にそう伝えて話し合いは終わった。
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