第33話 【二人目の仲間・1】


 翌日、俺達はアカデミーの授業が終わり最寄り駅へと行き、陸と合流をしてからタクシーに乗って宇鉄工房へと向かった。

 事前に連絡をしていた為、工房に到着すると中へと案内された。


「武蔵、智咲! 久しぶりだな!」


 俺達の装備作り振りに会った焔は、以前よりも更に鍛冶師らしい見た目となっていた。


「昨日の今日でよく作り上げたな」


「これでも父ちゃんの息子だからな! 鍛冶の腕もあれからメキメキと成長してるんだぜ!」


「それは今から見る盾で分かるな、ってか今日は陽炎さんは居ないのか?」


「父ちゃんなら一昨日から出掛けてるんだよ。それで、そっちの大きい奴が俺が作った盾を使う奴か?」


 焔は俺達の後ろについて来ていた陸を見ながらそう言うと、陸は焔に向かって挨拶をした。


「初めまして、式守 陸と申します。この度、武蔵さん達のパーティーに臨時で入る事になりました」


「おう。よろしく、俺は宇鉄 焔だ。お前の盾を作った鍛冶師って事だけ、今日は覚えてけ」


 互いに挨拶を交わすと、焔は早速奥から作った盾を取り出した。

 陸の体格に見合う盾で、移動時等は背中に持てるような工夫もされている。


「写真で大体の形を判断したけど、ピッタリだな!」


「はい。本当にピッタリで驚きました。ありがとうございます!」


 焔は陸の体格にピッタリと合う盾を作り上げており、その盾を受け取った陸は凄い嬉しそうにお礼を言った。

 その後、代金は事前に決めていた通り杏奈が支払った。


「姉ちゃん本当にいいの?」


「良いわよ。私も少しは稼いでるし、姉としていい所は見せておきたいもの」


 杏奈は胸を張りつつそう言い、それから盾を受け取った陸と一緒に俺達は早速ゲートへと向かった。

 陣形としては前衛に新たに陸が加わったが、初心者探索者の陸に最初から全て任せたりはしない。

 まずはタンクの動きに慣れる為、弱い魔物と戦いながら感覚を掴む訓練を行った。


「武蔵さん、どうでしたか俺の動き……」


「まあ、初めてにしては良かったと思うぞ」


 一時間程、狩りをしていた俺は陸が疲れてるのを見て休憩を挟む事にした。

 そしてその休憩時、陸は自分の動きについて聞いて来た。


「ただやっぱり、元の戦い方を捨てきれてないな。まだここが最低ランクのゲートだから通用してるが、早い内にその癖は治した方がいいな」


「気付いてましたか、そうなんですよね。ずっと使ってた剣術だったので……」


「その気持ちはよく分かるよ。ずっとやってた動きを変えるのは、本当に難しい事だからな」


 慣れた動きから新たな動きに変えるのは、俺だとしても直ぐには無理な事だ。

 S級へと昇るまで、俺は何回が自分の動きを改善する為、戦い方を変えて行った。

 そうして今の動きが完成して、回帰後の世界では初めからその動きをしてるおかげで楽が出来てる。


「ただ盾の使い方は初めてにしては上手いと思うぞ、やっぱり体格がいい分魔物の攻撃を受けてもブレないのは良いな」


「そうね。タンク役として一番重要な部分は、既にあるみたいだからこのまま上手く成長すればパーティーの重要な盾になれると思うわ」


「陸にタンクの才能があるなんて思わなかったわ。姉弟揃って支援よりの才能ね」


 そう俺達が各々、陸の事を褒めると褒められた当人である陸は嬉しそうな表情を浮かべた。

 その後、初日のゲート探索を終えた俺達はパーティーハウスへとより、訓練室で今日の探索の復習を行った。

 ゲートで魔物を倒した事で、レベルが少し上がった陸は数日前よりも力強さが増している。


「陸。今日はここまでにするぞ」


「は、はい。でも、まだやれますよ?」


 探索から帰って来てから、2時間ぶっ通しで訓練をしていた俺は終わりだと陸に伝えた。

 しかし、陸はまだやり足りないのかそんな事を言った。


「これ以上、訓練を続けたら明日の探索に支障が出るから今日はこれで終わりだ。帰って筋トレとかもするなよ? 家に帰ったら、飯食って早く寝るんだぞ」


「分かりました」


 隠れて訓練をしそうだなと思った俺は、陸にそう忠告をしてから一緒に大浴場に入りに行った。

 そして汗と汚れを落とし、陸達を見送り俺達も帰宅の準備をしてパーティーハウスを出た。


「今日はいつより遅かったな、パーティーハウスで何かしてたのか?」


「ほら、陸をメンバーに入れたって言ったでしょ? 午後にゲートに行って、そこからパーティーハウスに行って訓練してたらこんな時間になってたんだよ」


「頑張るのは良い事だけど、無茶はしないようにな」


「分かってるよ。休みも取ってるし、パーティーの体調管理はリーダーである俺の務めだからちゃんと見てるよ」


 父さんの言葉に俺はそう言い、夕食を食べた俺は自室へと移動して直ぐにベッドに横になり眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る