第32話 【親睦会パーティー・4】
あれから30分程経ち、出前を受け取ってから部屋に戻って来た。
親達の話し合いは終わっているみたいで、返答を聞く事にした。
「正直、今も迷ってはいるけど……武蔵達が本当に良いなら、この建物に私達は住もうと思う」
「マジ。本当にいいの?」
「正直、自分達の家より過ごしやすかったんだ。これは皆、思ってる事だよ」
父さんがそう言うと、他の面々はウンウンと何度も頷いていた。
「それぞれ家庭を持ち、諦めていた物とか沢山あったんだよ。武蔵も知ってるだろ、父さんが筋トレグッズを置きたかったけど諦めたの」
「知ってるよ。ってか、それは俺もだからね。家のスペース的に、筋トレグッズは自分の部屋におけるだけって」
「そう。でも、この建物には最高の設備が揃っているだろ? あれを見た時、ここに住みたいって父さんは考えていたんだ」
他にも俺の母と智咲の母は、昔から大画面で映画を好きな時に見たいという夢があったらしく、それを偶然にも叶えてしまった。
式守の母、
だが今は賃貸で暮らしてて、防音もそこまで完璧じゃないから気にしながらやっていたと言った。
「だけどここには、防音が整った部屋もあるでしょ? あれを見た時、ここなら好きなだけ出来るわと感動したの」
「調子に乗って色々と作ったけど、それが意外と両親達の心を掴んでたって感じね……」
それぞれの親達の夢や願いを知らず知らず叶えていたみたいで、金を掛けて色々と作ってて良かったとそう思った。
「まあ、でも住みたいと思ってくれてるなら良かった。無理に住んで嫌な思いとかして欲しくなかったし」
「そうね。無駄に色々と作ったおかげね」
「武蔵君と智咲ちゃんが探索頑張ってくれたおかげだね」
あの後、話し合いが終わり朝食を食べた俺達は親達と陸を見送り、パーティーハウスに残って話をしていた。
「引っ越しに関しては、まあ来月までには終わらせようって話になったけど、それまでに必要な家具とか追加で用意しないとな……その辺、智咲と式守に任せてもいいか?」
「ええ、いいわよ。最高の家具を選んでおくわね」
「うん。頑張るね。それと武蔵君一つ言おうと思ってたんだけど、これからは私の事は下の名前で呼んで欲しいんだけど大丈夫かな? 今度、陸も一緒に探索に行く事になってるのに私を苗字呼びだとどっちも反応しちゃうから」
「あ~、確かにそうだな。分かった」
式守から言われて、俺は確かに今度の探索から陸が加わる為、これまで通り式守と呼んでいたら二人が反応してしまう。
その事に気付かされた俺は、今の内に慣れておく為に今後は式守を〝杏奈〟と呼ぶように決めた。
「そう言えば、陸の装備だけど盾とか持ってたり知ってる?」
「う~ん……多分、タンク用のは無かったと思うけど、陸に聞いてみようか?」
「ああ、頼む。それと同じパーティーメンバーになるんだし、グループに誘っておいて欲しい」
杏奈にそう頼むと、直ぐに俺達のパーティーのグループチャットに陸が追加された。
陸は杏奈から連絡が行ってたのか、直ぐにチャットに入って来て挨拶を打ち込んでいた。
陸が見てるなら、直接そこで聞いてみると防具はあるけどタンク用の盾などは無いと返信された。
「一応、俺が誘った訳だし用意してやるか、オーダーメイドは多分引かれるだろうから、店頭に並んでる物を買っておくか」
「それなら、私がお金出すよ。弟の装備だし、偶には姉としていい所を見せておきたいから」
陸の盾のお金を俺が出そうとすると、杏奈はそう言って自分が出すと言った。
それなら俺が出る幕はないなと思い、何処で買うか話をしていると俺のスマホの通知が鳴り、画面を見ると焔からだった。
「どうした?」
「武蔵、智咲から聞いたけどタンクを見つけたんだろ? そいつの盾、俺が作ってやるよ!」
「……智咲。焔になんて伝えたんだ?」
焔の言葉を聞いた俺は、隣に座っていた智咲にそう聞いた。
「鍛冶師見習いの焔。腕はいいでしょ? 今なら安く作れると思って、連絡してみたのよ。武蔵が出すなら、こんな事はしなかったけど杏奈が出すなら出費は抑えた方がいいでしょ?」
「それはそうだな……焔。金はあまり使えないけど、盾用意できるか?」
「おう! 任せろ! 写真で大体の体格は分かってるから、明日までに作っておく!」
焔はそう言うと、俺の言葉を聞く前に通話を切ってしまった。
「杏奈。明日、予定空けておいてくれ焔が明日には出来てるから受け取りに来いって」
「う、うん。その元気な人なんだねその人」
「煩くて暑い奴だけど、腕は確かだよ。宇鉄工房の未来の工房主だからな」
そう杏奈に言い、一応その盾を使う本人である陸にも連絡を入れ、明日一緒に盾を取りに行く事になった。
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