第31話 【親睦会パーティー・3】


 風呂の後は、施設を楽しんでもらう為、各々好きな所で過ごしていいと最初に伝えていた。

 その為、女性陣はシアタールームに集まって大画面で映画を楽しんでいた。

 そして男性陣は、折角風呂に入ったが訓練室へと行き、トレーニング器具を前に目を輝かせていた。

 そんな姿を見て、父さん達が家に筋トレグッズを置きたいと言ってたが、母親達に止められていたのを思い出した。


「弘人さんも体鍛えるの好きなんですか?」


「勿論だよ。これでも学生時代や、若い頃は探索者として活動してたからね。今は、子供達が居るから探索者は引退してるけど、体を鍛えるのは今も好きなんだ」


「へ~、弘人さんもそうなんだ。実は私もなんだよ。やっぱり、子供がいると危険なゲートに行くのは少し億劫になってね」


「ふふっ、世の親達の大半はそれで探索者を辞めてるからね」


 父親達はそれぞれ元探索者という経歴を持ち、今は普通の会社で働いている。

 ちなみに俺と智咲の父親は、同じ会社で働いており金曜はよく二人は部下を連れて飲みに行ってる。


「武蔵君、さっき陸から聞いたけど陸をパーティーのメンバーに入れてくれるって本当なのかい?」


「はい。臨時ではありますけど、智咲達にも許可を取ったので今度のゲート探索から一緒に行こうかなと、やっぱり心配ですか?」


 陸が筋トレをしに行くと、弘人さんは俺に近づいて来て先程の件について聞いて来た。


「心配じゃないと言えば嘘になるね。杏奈が探索者になりたいって言った時も心配だったし、子供が探索者になるっていうのはやはり親としては心配だよ」


「まあ、探索者は夢がある職業ですけど、無茶をすれば簡単に死ぬ職業ですからね」


 特に成り立ての頃の探索者は、自分の力を過信してゲートに行き死ぬという事例は今でもよくある。

 協会側も極力そういう事故が起きない様に手を尽くしてはいるが、事故が無くなる事は無かった。


「武蔵君、杏奈と陸の事を頼むよ」


「任せてください」


 真剣な表情で弘人さんから頼まれた俺はそう返事をすると、陸から呼ばれたので俺は弘人さんと別れて陸の方へと行った。

 その後、訓練室で汗を流した男性陣はもう一度、大浴場へと風呂に入りに行った。

 今度は父親達は無茶なサウナの入り方ではなく、弘人さんに教わりつつ俺達はサウナを楽しんだ。

 そうして風呂を済ませた俺達は、そろそろいい時間なのでそれぞれの部屋に分かれて就寝する事にした。


「朝からあんなに広い大浴場で風呂に入れるなんて、本当にここは凄い場所ですね……」


「正直、家に帰るのが嫌ですよね」


「もう少し探索者を続けて、お金を貯めて私もこういう建物を作れば良かったな……ここに住みたいレベルだよ」


 翌日、少し早めに起きて来たが既に父親達は起きていて、三人で大浴場を楽しんできた後だった。

 そして各々、俺達が作った建物を気に入っているようでそんな話声が聞こえて来た。


「住みたいなら住んでも大丈夫だよ。というか、その為に呼んだまであるしね」


「っ! 武蔵来てたのか、急に後ろから声を出したから驚いたぞ」


「ごめんごめん。父さん達の話し声が聞こえて来たから、それでさっきの住みたいって気持ちは本当なの?」


 驚いてソファーから落ちた父さんに手を差し出しながら、俺はそう父さん達に聞いた。


「住めるなら住みたいとは思うけど、ここは武蔵君達のパーティーハウスでしょ?」


「そう言ってるけど、実際は家族も呼べるように沢山部屋を作ったんだよね」


「そうなのか? いやまあ、パーティーハウスにしては部屋数が多いとは思ってたが……」


「後は未来のパーティーメンバーの分だったり、もしもギルドになった時の為に用意したのもあるけど、それらは二の次で俺等としては家族が安全な建物で過ごして欲しいって思いが一番だよ」


 俺はそんな説明をしていると、智咲と式守が起きて来たので二人からも父親達にこの建物の使い方を説明してもらった。

 そうして作った本人達である俺達からの誘いを受けた父親達は、その後に起きて来た母親達と緊急会議を行っていた。


「どうなるか心配だったけど、あんなに悩むレベルで気に入って貰えたようで良かったわね」


「なんだかんだ俺達が好きな様に作った建物ではあるから、あそこまで悩んでくれるのは嬉しいな」


「でも大半は大浴場目当てだよね。私もそうだったけど、いつでもあんなに大きなお風呂に入れるのは嬉しいよね」


「個人用の風呂も用意したけど、正直そっちのお金と場所を大浴場に回しておけば良かったな」


 各部屋に風呂も用意したりしてたが、そこのお金も大浴場に回しておけば良かったと早くも後悔するポイントが出来てしまった。

 その後、話し合ってる両親達と陸を眺めつつ、俺達は朝食用の出前を注文して話がまとまるのを待つ事にした。

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