第30話 【親睦会パーティー・2】
パーティーの開始の挨拶は適当に済ませ、用意した食事を食べながらそれぞれの家庭の事などを話し、親睦を深めていった。
智咲の両親と俺の両親は元々仲が良い為、積極的に式守の両親と話しをしてくれていた。
式守の両親もそんな両家の考えを読み取り、良い感じに親睦を深めていた。
そんな親達を見ながら、俺等子供組は別席でゲームをしながら食事をしていた。
意外にも陸はゲームが強く、レース系から格闘系と幅広いジャンルが得意だった。
「陸はゲームが好きなのか?」
「はい。でも、姉ちゃんは弱いから一緒にしてもつまらないんですよね」
「ちょっと、いつもやってる時は楽しそうにしてたじゃない。もしかして、あれは演技だったの!?」
式守は弟の言葉に驚きながらそう言うと、陸はサーと視線を逸らして言葉を発さなかった。
「ふむ、ゲームが好きならさっき案内したゲームコーナで早く遊びたいか?」
「正直、遊びたくないと言えば噓になります。でも、それ以上に早く武蔵さんに訓練を見て欲しいという思いの方が強いです」
「……普段敬語なんて全く使わない陸が、こんなにちゃんと喋れるなんて知らなかったわ」
弟の変化を近くで見た式守は、頭を下げてる陸を見ながらそんな事を言った。
俺はというと、折角の親睦会だから楽しんで欲しいと思いつつも、親同士であれ程仲が深まってるなら大丈夫だろう。
「それじゃ、智咲と式守にはこの後の大浴場までの案内とか頼めるか? 少し、陸と訓練室に行ってくるよ」
「ええ、分かったわ。怪我させないようにね」
「武蔵君、弟をよろしくね」
俺は智咲達に親達の事を頼み、陸を連れて訓練室へと移動した。
勿論、親達にも話しをしてパーティーを楽しんでと言って部屋を出て来た。
「まずは陸の今の力を見たいから、攻撃をしてきていいぞ」
「分かりました」
陸は俺の言葉に返事をすると、剣を構えて攻撃を仕掛けて来た。
事前に聞いていた通り、自ら動く攻撃的な剣術をしていて素早さは無いが力が強く、それだけでも一定の魔物とはやれるだろう。
ただ力が強いという一点だけが、今の陸の長所で他は特に良い所はない。
体格に見合わない剣術、戦闘時の駆け引きの無さ、焦る気持ちを隠す事が出来ない感情の脆さ。
「そこまで、取り合えず陸の強さ分かった。ここからはタンクとしての動きを見せる」
「は、はい。お願いします!」
陸の強さの確認を終えた俺は、そこから疑似的なタンクの動きを陸に見せた。
本職では無いからそんな凄い動きは出来ないが、そこは身体能力でカバーする。
「一応、最初とタンクとしての動きの時で違う動きをしていたが、陸は感じ取れたか?」
「はい。最初も自分の攻撃が当たる気はしませんでしたが、タンクとしての動きをして武蔵さんに対しては更に当てられる気がしませんでした」
「そういう動きをしたからな、今の動きがタンクとしての全てでは無いがああいう動きを陸は覚えたら、探索者として成功できると俺は思うな。正直な感想で言えば、剣士としては真面な探索者にすらなれないだろう」
回帰前、杏奈は世界的な探索者として名を馳せていたが弟の話は一切でなかった。
というのも、未来ではこのまま剣士を目指しD級探索者として生活をしており、あるゲートで戦死した。
俺はその事は知らなかったが、智咲がそのニュースで名前を見ていたのを思い出して俺に教えてくれた。
「武蔵さんは俺がタンクになれば、探索者として成功できる確信されてるんですか?」
「分からん。ただ今よりも良いとは思ってる。その体格、無駄にしない為にも俺はタンクを勧める。なんなら、俺達のパーティーに臨時で入って試してみるか?」
「えっ!? いいんですか!」
「勿論、指示には従って貰うぞ?」
陸は俺の提案を聞くと、物凄い勢いで頭を下げ「よろしくお願いします!」と大きな声で返事をした。
その後、俺は陸に対してタンクとしての動きを教え、大浴場へと向かった。
「父さん達、何してるの?」
「ハハッ、我慢比べをしてたらのぼせてしまってな……」
「全く、大の大人達が何をやってるんだが……弘人さん、迷惑かけてすみません」
俺と智咲の父親を近くで見てくれていた式守の父、
「いや、私も負けず嫌いでやってしまったから、同罪だよ。それにしても、ここのサウナは本当に良かったよ。毎日通いたい位だった」
「弘人さんって、もしかしてサウナ好きなんですか?」
「好きだね。サウナは勿論、温泉が特に好きでね。毎年、色んな県の温泉に入りに行ってるんだよ。特に私が好きな温泉は——」
「武蔵さん、父は大の温泉好きで話が長くなります。さっさと、風呂に入りに行きましょう」
語り始めた弘人さんを見た陸は、俺の腕を引っ張って大浴場の中へと入って行った。
その後、陸と俺は汗と汚れを流し、一緒に風呂に入った。
「武蔵さん、凄い体ですね。本当に俺と一つしか変わらないんですか?」
「それを言うなら、陸も中学生なのにその体つきは凄いと思うぞ。身長なんて学年で一番じゃないのか?」
「そんな事はないですよ。体格には自信はありますけど、身長は俺より高い奴が一人いるんです」
「そうなのか? 陸より高いって事は、180㎝後半って事になるぞ?」
そう陸に聞くと、その人物に聞いて教えてくれた。
名前は
槍術士で槍の扱いが上手く、陸の学校で行われる武道祭では二年と三年で優勝してるらしい。
「そんな奴が居たのか、知らなかったな……」
そんな腕の立つ奴なら知ってる筈だと思い、記憶の中からその名前に該当する探索者を探したが思い出せない。
それから俺と陸は、風呂場で今後の訓練について話しをして、父親達の様にのぼせる前に風呂から出る事にした。
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