第28話 【二学期の始まり・4】
翌日、アカデミーに少し早めに登校した俺達は職員室へと行き、今井先生を探した。
すると、丁度良く今井先生が職員室に入って来た。
「どうしたの? こんな朝早くに三人揃って」
「ちょっと、今井先生に聞きたい事がありまして時間ありますか?」
「ん~、ちょっと待ってて朝の準備を直ぐ終わらすから、朝に教室に行ってて」
今井先生からそう言われた俺達は、「分かりました」と返事をして職員室を出て自分達の教室へと移動した。
それから少しして、今井先生は教室にやって来て俺達は昨日の悩みについて話しをした。
「ギルドね。私がその選択をしなかったのは、単純に入りたいギルドが無かったのよね。入れるギルドがあれば、私もそっちを選択してたと思うわ。その方がこうやって、朝早くに出勤とかしなくても良かっただろうしね」
「って事は、ギルドの方がその場所に残りやすいって事ですか?」
「ええ、大きなギルドが別の県で活躍している。みたいなニュース、あまり聞かないでしょ? 個人の探索者は逆に、強ければ色んな所に派遣されるからB級以上になると自分の居場所という意味でもギルドを探す探索者が多いわ」
生徒に対する教師として、その他にもギルドの良さについて今井先生は教えてくれた。
「まあ、でもギルドを作るなら本当になんでも許せる人達か、信頼が出来る人と達と組むべきよ。ギルドを作って、互いに仲が悪くなって解散なんていくらでも聞いた事のある話だから」
「それは知ってます。大体は金とか、ギルドとしての働き方で解散したりしてるって」
「お金は本当に喧嘩の元だから、ギルドを建てる前に報酬については決めとおいた方が良いわよ」
それは俺達もよく知っている話だ。
ギルドというより、その時に集まった探索者同士でも喧嘩になるような話で、探索者はその喧嘩のせいで亡くなったりしていた。
そんな話ばかり聞いていたのもあって、俺と智咲はパーティーを組んだりする事を苦手と思って二人で行動をしていた。
「それにしても、貴方達がそんな事を聞くって事はギルドの設立を目指してるのかしら?」
「まあ、そうですね。パーティーハウスを用意したんですけど、広すぎるからギルドとかいいよなって話になったんです」
「へ~、パーティーハウスね。いいわね青春してて、学生の頃に私も似た感じで友人達と借りてたわ……まあ、その友人達とも喧嘩別れして今じゃ連絡すら取ってないけど……」
最初は楽しそうに話していた今井先生だったが、苦い思い出を思い出したみたいで雰囲気が沈んでいった。
そんな今井先生を元気づける為、今度お礼に食事を奢る事にした。
その後、他の生徒達も登校してきたので俺達は自分達の席に座り、授業が始まるのを待つ事にした。
「武蔵、お前ギルド建てるの?」
「直で聞いて来たな、その噂出所何処だよ……」
昼休み、昼食を食べ終えた俺はトイレに行き、その帰りに他のクラスの知り合いから声を掛けられた。
朝の時間帯だから、人は少なかったが特に声量を落とさず今井先生と話してたから、誰かが廊下で聞いて噂になったんだろうな。
俺はその知り合いの言葉をはぐらかし、教室まで戻って来ると智咲達も同じクラスの人から色々と聞かれていた。
「教室で話したのは失敗だったな、まさかここまで噂になるとは……」
「そうね。正直、ここまで私達のギルドの話が大きくなるなんて思いもしなかったわ」
「ちょっとだけ考えただけなのにね……改めて、武蔵君と智咲ちゃんの知名度の大きなを知ったかも」
放課後になると、知らない生徒からも声を掛けられたりした。
知り合いまでなら分かるけど、何で知らない奴からもと思いながら、俺達は逃げるようにしてパーティーハウスへと集まった。
ちなみにここが見つかったら、更に面倒だと思ってタクシーを拾って遠回りしてきたので見つかる事は、多分ないと信じたい。
「あれ、焔から連絡が来てる」
逃げる事に夢中だった俺は、ふとスマホを見ると焔から連絡が来てる事に気付いた。
その内容は、俺だけ仲間外れは悲しいみたいな内容だった。
そしてその内容を確認してると、タイミングよく焔から電話が掛かって来た。
「仲間外れって、別に元々仲間じゃないだろ……」
「武蔵と智咲は、昔からの幼馴染みたいなものだろ! そりゃ、俺は鍛冶師だから一緒に探索はしないけど、一言位話があっても良かっただろ!」
「……何か勘違いしてないか?」
凄く熱く語る焔に対し、俺は呆れた口調でそう聞いた。
その後、焔は既に俺達がギルドを作って活動をしてると噂が聞いたと言い、本当の事を教えてやった。
「本当に、ギルドを建てるか迷っていた話を先生にしただけなのか?」
「そうだよ。昔、噂などには惑わされん! みたいに宣言してた癖に、普通に惑わされてんじゃないか……」
「し、仕方ないだろ……俺だけ仲間外れかと思ったんだ」
俺から過去の発言を指摘された焔は、恥ずかしそうな声音でそう言った。
「焔はなんて?」
「噂にまんまと惑わされて、仲間外れにされたって勘違いして連絡してきたみたいだ」
電話を終え、智咲達の所に戻ってきた俺は電話の内容を二人に教えた。
「まあ、ギルド建てるならあいつにも連絡はするって事は伝えた。なんだかんだいって、鍛冶師としての腕はいいからな……ギルドには探索者の他に鍛冶師だったり、他にも必要な人材は多くいるからな」
「そうね。焔以上に適任者は居ないわね。それにギルド所属程度なら、工房にも支障は出ないだろうしね」
「武蔵君、智咲ちゃん、ギルド建てる流れに話がなってるけど、人がまず足りないよ」
「……まあ、そこに関してはおいおいだな。ギルドを絶対に建てたいって訳でも無いからな」
式守の言葉に俺はそう返し、今日も俺達はパーティーハウスで数時間過ごして帰宅した。
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