第25話 【二学期の始まり・1】
昇格試験から数日後、久しぶりに学生服に袖を通してアカデミーへと登校していた。
探索者アカデミーは全国に10校も無く、入学する事自体がかなり難しいとされている。
普通の学校とは違って、探索者アカデミーは能力を見られる。
幸いな事に俺や智咲は、能力は生まれつき良い物を持っていたので特に苦労する事無く入学は出来た。
しかし、回帰前の俺達はその能力に胡坐をかいて、特に努力もせず三年間過ごしていた。
「何かこの学生服着てるのに、凄い違和感を感じてるんだけど智咲はどうだ?」
「ふふっ……私もよ。夏休みの間、学生服を着て慣れておけば良かったって後悔してるわ」
他人から見たら別に変でも何でもないが、学生服を着てる自分達をおかしいと俺たち自身がそう認識をしていた。
これから先、3年間は着ないといけないから早くなれないといけない……。
「武蔵君、智咲ちゃん、おはよ~って二人共顔が暗いけどどうかしたの?」
「いや、ちょっとな夏休み明けで少しだけ気分が落ち込んでるだけだ」
「ええ、後は久しぶりの学生服で違和感を感じてるだけよ」
アカデミーに到着後、自分達の教室に向かっていると式守と遭遇した。
式守はいつもとは違って、沈んだ雰囲気の俺達を見て驚いていた。
それから俺達は、自分達の教室へと入り席に座った。
席に座る際、俺と智咲は数十年前の自分達の席なんて忘れており、一瞬だけどうするか迷った。
しかし、式守が居てくれたおかげで自然な流れで自分達の席を教えて貰った。
「式守と仲良くなってて良かった」
アカデミー生活の為に式守とパーティーを組んだ訳では無いが、アカデミーで忘れてる事を自然と聞けそうで本当に助かる存在だ。
俺は心の中で式守に感謝を伝え、夏休みの為に持って帰ってた大量の教科書を机の中に入れて授業の準備をした。
「やっ、おはようおはよう。夏休みが終わって、みんな浮かない顔をしてるな」
俺達が席に座って数分後、俺達の担任の今井先生が教室にそういいながら入って来た。
「ふふっ、そんな皆にプレゼントを用意してるぞ。明後日、実力テストが行われるぞ」
「「え~!」」
先生の明るい言葉から出された嫌な単語に、教室ほぼ全生徒がそんな声を出した。
ちなみに俺と智咲、そして式守は別に嫌では無いので特にそういった反応はしなかった。
アカデミーのテストは、筆記試験も見られはするが基本的には実技の方を見られる。
その為、実技には自信のある俺として普通の授業よりも断然そっちの方が嬉しい。
「あっ、そうだ。夏休み中に探索者のランクが変わった生徒が居たら、アカデミー側にちゃんと報告をするんだぞ」
朝のホームルームが終わり、先生が出て行こうとしたタイミングで視線は俺達の方を見ながらそんな事を言った。
「さっき先生が言ってたけど、アカデミーに報告って武蔵君達もまだしてないよね?」
「ネットでも報告は出来たけど手続きが面倒だと思って、今日の放課後にしようかなって式守もその時に一緒に行くか?」
「うん。一人で職員室に行くの心細かったから、一緒に行くね」
そうして放課後の予定が決まり、次の時間からは普通の授業なので集中して受ける事にした。
アカデミーでの一日は、基本的に午前中に普通の学生が勉強する教科を勉強して、午後からそれぞれの役割毎の授業になる。
俺場合、近接戦闘の授業があり、授業では主に実践を想定した模擬試合などが多く行われる。
「神代、今日の授業だが先生と一緒に生徒達の能力を見てやれないか?」
「えっ?」
午前中の授業を難なく過ごした俺は、昼休みになって直ぐに今井先生に呼び出しをされた。
教室を出る際、智咲から「何かしたの?」と聞かれ、特に思い浮かぶ事が無かった俺は謝る準備だけしていた。
そんな俺は先生から、そんな事を言われて変な反応をしてしまった。
「何だ。その反応は?」
「いや、先生から呼び出しされたので何か怒られるのかなって身構えてて、全く違う事を言われたので反応できませんでした。それで授業の手伝いですけど、別に良いですよ」
「おっ、そうか助かるよ。いや~、本当は同じ近接戦闘を教えてる先生に頼もうと思ってたんだが、怪我で暫くは安静にしないといけないらしくて困ってたんだよ」
先生は俺が了承すると、嬉しそうな表情でそう言った。
それから俺は授業の手伝いは、また後で詳しく伝えると言われて教室に戻って来た。
「何で呼ばれたか分かった?」
「授業の手伝いを頼まれただけだったよ。正直、何か怒られるのか不安だったけど、そうじゃなくて安心したよ」
教室に戻って来ると、智咲から呼び出された内容を聞かれ、俺は先生から頼まれた事をそのまま伝えた。
そして呼び出しを受けて食べれてなかった弁当を取り出し、少し遅めの昼食をとる事にした。
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