第24話 【日常へ・4】
それから10分程して、試験監督が部屋にやって来て試験についての説明をした。
試験は二つあり、実技と筆記の二つだ。
実技はランクに合わせて、協会が用意した試験を担当する探索者と戦い、戦えているのか等を見られて点数が付けられる。
「まずは筆記だな、智咲と式守は自信はあるか?」
「まあ、普通の勉強よりかは自信はあるわよ」
「武蔵君達と一緒じゃない期間が長かったから、その間に勉強を進めてたからちょっと自信があるかな、そういう武蔵君はどう?」
「まあまあかな、正直筆記は苦手だからな……」
そんな風に試験前に言っていた俺達は、試験が始まると私語は禁止なのでそれぞれ試験に集中して解き進めた。
それから一時間後、筆記試験が終わり20分の休憩時間となった。
「武蔵、大丈夫?」
「……久しぶりに頭を使ったから、体動かすより体力を使ってしまった」
「まあ、少し難しかったもんね。私も分からない所があったし、智咲ちゃんはどうだった?」
「普通ね。私も分からない所は飛ばしたりしたけど、自身がある所もいくつかあるわ」
そんな感じで筆記試験は終え、俺以外は特に心配は無さそうだった。
そんな俺達の所へ、試験中に見回りをしていた先生が近づいて来た。
「神代、勉強ちゃんと家でしてるのか? かなり苦しんでたみたいだが」
「まあ、筆記は苦手なので……その分、実技で取り返すつもりです」
「確かにお前なら可能だと思うけど、筆記もちゃんと勉強しておくんだぞ」
先生はそう言うと、次の試験の為に準備の手伝いがあるらしく部屋から出て行った。
それから休憩時間にトイレを済ませ、部屋で待機していると試験の用意が出来たみたいで順番に移動するように指示をされた。
俺達は試験部屋に入ったのが中間辺りなので、呼ばれるまでまだ少し時間が掛かりそうだ。
「実技、大丈夫かな……」
「式守の場合、サポーターだからそっちの技能を見られるけど、大丈夫だと思うぞ? 俺達とパーティー組んで探索してる時、式守の安心感かなりあるからな」
「ええ、私も同じ意見よ。杏奈のサポーターとしての能力はかなり高いから、そんなに心配しなくても大丈夫よ」
筆記とは違って自身が無い式守に対し、俺達は元気づける様にそう言った。
その後、俺達よりも前の探索者の試験が終わり、一番最初に部屋に入った俺の順番となった。
「神代 武蔵。主に近接を得意としています」
試験場に入った俺は、そう一人の試験官に伝えると近接用の探索者が俺の相手をする事になった。
装備は協会が用意した物を使う為、革装備と片手剣を選んだ。
そして互いに準備が出来ると、試合開始の合図が鳴った。
「フンッ!」
スキルの使用は自由である為、試合開始早々に【身体強化】を使用して一気に詰めた。
ここから一気に行くぞと思っていた俺だったが、一発目があまりにも早すぎたせいか担当者が壁にぶつかって気絶してしまった。
「……あ~、この場合どうしたらいいですか?」
「試合結果で判定していたのですが……その、探索者の方が気絶してしまったので神代さんは満点合格とさせて頂きます」
試験官の人も試合結果に呆気に取られてしまい、そんな風に言われた俺は取り合えず無事に試験を突破した。
その後、智咲と式守も無事に試験を終え、少しして試験結果が伝えられ俺達は無事にD級探索者に昇格をした。
「外食、それも焼肉なんて久しぶりだわ」
「私も、でもいいの? 武蔵君の奢りで」
「まあ、稼いでるし、今日は合格祝いって事でリーダーでもある俺が払うよ」
試験が終わった後、丁度昼時だったので合格祝いとして近くの焼肉へと食べに来ていた。
普通の学生からしたら、ここの焼肉屋は高い方だが俺達は探索者として稼いでいるからそこまで高いとは感じない。
「そろそろ、夏休みも終わるわね」
「長いようで短かったね。私は、自分がこんなに早く探索者として活動するなんて夏休み前は思わなかったよ」
既に夏休みも終盤を迎えており、残り数日で夏休みが終わってしまう。
「夏休みの思い出って、普通だと海と山に遊びに行った。みたいな感じだけど、俺達の場合はゲートに探索に行き続けてたからな……」
「そう言えば、今年は海に一度も行ってないわね……杏奈は、そう言えば両親とは旅行には結局いったの?」
「うん。武蔵君達とゲートいけない間、時間も余ってたから私から誘って行ったよ。お父さん達凄く喜んでくれて、冬休みもまた旅行に連れて行こうかなって今から計画立ててるよ」
「それは良いな、俺も冬休みにまた連れて行こうかな」
昼食の間、旅行の話で盛り上がりパーティーで県外にゲート探索兼旅行にも行きたいみたいな話もした。
昼食後、ゲートには行かずショッピングモールへと移動した。
そして買い物を楽しんだり映画館に行って人気の映画を見たりと、午前中は試験だったが午後は休暇を楽しんだ。
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