第22話 【日常へ・2】
翌朝、朝食の際に両親の髪を調べてみた。
素人目ではあるが、両親共に特に薄毛には見えなかった。
「となると、武蔵の生活習慣が悪かったからって事になるわね」
「そうだな、若い頃は色々と髪で遊んでたからな……それにストレスもかなり感じてたから、それが原因だろうな」
「そうね。でも今回はそのストレスの原因はもう取り除いたし、後は髪を出来るだけケアするだけだな……」
前回見たく薄毛に悩まされない人生を歩む為、俺は高校生の今から髪のケアを頑張ろうと心に誓った。
それから俺達は途中で式守と合流をし、今日もゲートへと探索に向かった。
「武蔵君、智咲ちゃん。本当に私もあの【大宰府迷宮】に入れるの?」
「ああ、一ノ瀬家からも俺達のパーティーメンバーなら是非使ってくれって」
パーティーでの探索を再開して数日後、無事に式守のレベルが29に上がり俺達は再び【大宰府迷宮】へと来ていた。
しかし、今回は前回見たく俺達は中に入る事が出来ない、なので一ノ瀬家側が用意した探索者と共に式守は中に入ってもらう事になっている。
「……まさか、ここで貴方に会うなんてね。元気にしてたかしら、隼士?」
「まあ、元気にはしてたよ。少し前にこっちに戻って来て、親父達から急に【大宰府迷宮】をクリアしろって言われて、慌てて準備したけどお前等が関係してたのか」
信士の長男で本家の直系な為、幼い頃から魔法使いとして英才教育を受けているが本人は剣が好き。
その為、隠れて剣の訓練ばかりしている為、レベルもようやく29になったばかりだと信士から聞いた。
「本家の人間なんだから、もう魔法から逃げなきゃいいのに」
「別に良いだろ、それより他のメンバーはまだいないのか?」
「何を言ってるの? このゲートに行くのは、隼士と杏奈の二人よ」
智咲のその言葉に隼士は驚き、振り返って逃げようとした。
しかし、俺はそんな隼士の肩に手を置き逃がさなかった。
「どうせいつかは行くゲートだろ? ここで逃げても意味ないだろ」
「だとしても、もう少しクリアできるメンバーの方がいいだろ! どう考えても、魔法使いとサポーターでクリアできるゲートじゃねえよ!」
「剣ばかり訓練してる癖に、こういう時だけ魔法使いを名乗るの?」
「スキルはそっちよりだからいいだろ!」
隼士はそう叫ぶと、俺達の隣で話を聞いている式守の方を見た。
「あんたもあんただ。ここのゲートの事は聞いてるだろ? 一度しか入れないのに、こんな無茶なメンバーで行きたいのか?」
「武蔵君達が行けるって言ってるから、大丈夫だと思うけど? それに私も訓練して来たし、腕試ししたいかなって」
「……俺がおかしいのか?」
隼士はこの場で自分一人だけがおかしいのかと錯覚をしつつ、俺と智咲は隼士と式守にゲートの攻略方法を伝えた。
それから二人はゲートの中へと入って行き、俺と智咲はゲートの近くに止めた車の中で待つ事にした。
「武蔵、あの二人どれくらいで帰ってきそう?」
「流石に俺達の記録には届かないとは思うけど、それなりにいい成績は残せると思うな。なんだかんだ言っても、隼士の魔法使いとしての能力は高いし、式守のサポートもあるからな」
隼士は智咲の様に多彩な属性魔法を使うタイプではなく、火と土の属性魔法と近接攻撃を使う魔法剣士タイプ。
剣術に関してはそこそこの腕だが、魔法に関しては智咲も認める程の能力を持ってる。
「それに万が一の事を考えて、式守には【体術】を教えてるから報酬選択も二つは確実に行けると思うな」
智咲にも教えた通り、俺は式守にも【体術】を教えていた。
他の武術と違い、武器が無くとも戦える【体術】は魔法使いの智咲とサポーターの式守には持っていたらいいスキルの一つ。
その為、俺達と一緒に探索が出来ない間も連絡を取って、【体術】の基礎から教えた。
そのおかげで式守は新たに【体術】のスキルを獲得して、多少だが魔物が近くに寄って来ても闘える術を身に着けた。
「武蔵、そう言えば彼とは連絡は取ってるの?」
「運び屋か? いや、まだあっちは普通の生活に慣れる為の時間が必要だからな、一応連絡先は一ノ瀬家経由で渡してるけど、そう早くに連絡は来ないだろうな」
救出された探索者達は、支援金が渡され普通の生活に戻ろうと頑張っている時期だ。
しかし、まだ救出されてそんなに時間が経っておらず、中々普通の生活に戻れない探索者が多くいる。
日光をずっと浴びず、うす暗い空間で生活していた人が多く元に戻るには時間が掛かるだろうと、信士から連絡が入っていた。
「まあ、気長に待つしかない。正直、彼の能力は仲間に欲しいけど無理に仲間にしたら、やり方が違うだけで神代家と同じだからな」
「そうね。気長に待つしかないわね」
運び屋の話はそれで終わり、俺達は式守達が無事にゲートから出て来るまでの間、久しぶりにゲームをして時間を潰す事にした。
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