第19話 【落とし前・3】


 それから一時間後、俺と智咲は本家から少し離れた所で下ろしてもらい歩いて向かった。

 本家の門には、二人の門番が立っていた。

 その門番の内、一人は俺の顔を見ると驚いた顔をした。


「武蔵様ッ」


「覚えてたか? お前等が俺達の事を探していたから、こっちから来てやったぞ。中に入れろ」


「ちょ、ちょっと待ってください。直ぐに中の方に」


「煩い」


 俺達を止めようとした門番に対し、俺は【威圧】で意識を飛ばし門を開けて中に入った。

 敷地内に入ると建物の方から、報告が入ったのか多くの探索者が俺達の前に現れた。


「神代 武蔵がやって来たって、報告が入ったんだろ? なら、すんなり中に入れさせろや!」


 【威圧】と【威嚇】を同時発動し、現れた探索者達の殆どは意識を失った。

 辛うじて意識を保ってる探索者もいたが、武蔵達の歩みを止める事は出来なかった。

 そして俺達は本家の建物の中へと入り、奥の部屋へと向かった。


「武蔵……本家を襲撃なんて、どういう考えだ?」


 その途中、複数の本家の人間を従えた信也が俺達の前に現れた。


「先にお前等が俺に手を出そうとしたんだろ? だからこうして、邪魔をしてくる前に話し合いに来てやったんだよ。言っておくが、まだこっちは指一本動かしてないぞ?」


 信也に対し、忠告交じりに圧を出しながらそう言った。

 しかし、俺の忠告を無視して信也は本家の人間達を従え、俺達に向かって攻撃を仕掛けて来た。


「……ねえ、武蔵。そろそろ、私も力使っていいかしら?」


「いいぞ。どうせ、この建物は壊す予定だったから派手に行っちゃって」


 ここまで我慢していた智咲は、俺の返答を聞くと杖に魔力を通し魔法を発動させた。

 智咲は昔から新しい武器や防具を手に入れた時、その性能を確かめるために直ぐにゲートに潜りに行っていた。

 しかし、今回は神代家への挨拶をしに行く為、性能チェックは我慢してついてきてもらったが、かなり我慢させていたみたいだ。

 その結果、智咲は我慢の限界を迎え一瞬で壊滅させてしまった。


「殺してないよな?」


「え、ええ、流石に殺したら政府に目付けられるからそこはちゃんとしてる……筈よ」


「……一応、死んでないか確認してから先に行くか」


 本家の襲撃、そこで殺害までしていたら流石に政府に目を付けられてしまう。

 それから俺と智咲は、信也達の状態を確認して無事死んではない事を確認して、更に奥へと向かった。


「本家者達が手も足も出ないとは、たった一月でよくそこまで強くなったな」


「そうさせたのが貴方達神代家ですけどね」


 奥の部屋に居たのは、現神代家当主の神代 一心かみしろ いっしんとその長男であり次期当主の神代 栄一かみしろ えいいち

 共に俺の持つ【武道の天才】に似た【武道の才能】という固有能力を持っており、俺と似た性能をしている。


「それで何で今更、俺に興味を持ったんだ? あれ以降、俺には接触をしてこなかっただろ?」


「おい。口には気を付けろよ。お前に居る方がどれだけ偉いか分かってないのか?」


「分かってて、この口調なんだよ。こっちはお前等の行動のせいで、折角楽しいゲート探索が厳しい訓練期間になったんだぞ?」


 一心に対しての口調に栄一が嚙みついて来たが、俺はそんな栄一に向かって【威圧】を込めながらそう反論した。


「うぐっ……」


「やめてやれ、既にお主は栄一より強い。それにここで栄一に危害を加えれば、立場が悪くなるのはお主達だぞ?」


「何だ。自分達に危険がせまったら政府を頼るのか? 自分達は探索者を襲って、誘拐してるのに?」


「ッ!?」


 俺の言葉に一心は目を見開き、近くにあった刀に手を伸ばした。


「やっても良いけど、既に現場には一ノ瀬家と政府が動いてるから俺達を相手してる暇はないと思うぞ?」


「一ノ瀬家に漏らしたのか!」


「漏らすも何も、先に手を出したから行動しただけだ。どうせ、この件は分家のどこかに罪を擦り付けするんだから、ゆっくり話し合いでもしようぜ?」


 怒りで顔が真っ赤になった一心に対し、俺はそんな挑発気味にそう言った。

 すると、一心は俺の言葉に耳は貸さずスキルを使って攻撃を仕掛けて来た。


「儂の攻撃を防いだじゃとッ!?」


「ずっと部屋に閉じこもってる爺さんに、押し負ける筈がないだろ!」


 攻撃を仕掛けて来た一心の攻撃を受け止めた俺は、勢いを使って一心を建物の外へと吹き飛ばした。

 そして俺は吹き飛ばした一心を負って、外へと出て既に起き上がっていた一心に向かって今度は俺から攻撃を仕掛けた。


「これ程の力、お主はもってなかった筈だ! 何をした!」


「あんたの持つ【武道の才能】は俺の【武道の天才】の下位互換な事は、既に知ってるだろ。能力値が低くても、多少はやりようがあるんだよ!」


 俺の力に驚く一心に俺はそう言い、手を緩める事無く攻撃を続けた。

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