第16話 【レベル上げ・4】


 そうして一つ目の大事な話を聞き終えた俺達は、それから俺達がゲートに居た間の他のニュースも聞いた。

 そのなかでも大事だなと感じたのは二つ。

 一つ目は俺達の仲間でもある式守家に、神代家が接触を図ったという事だった。


「杏奈は無事なの?」


「勿論だとも、それも警護レベルMAXとしてA級の探索者一人、B級探索者を5人。式守家の警護に当てているから、神代家が彼等を全力で襲わない限りは安全だ」


「……そこまでしていたのね。私達が頼んだ事だとは言え、そこまでしてくれるとは思わなかったわ」


 俺達の時代ではS級も増えていたが、この時代のS級は世界で見ても少ない。

 なので実質的にトップは、A級探索者という事になる。

 なので式守家の警護にA級探索者がいるという事実は俺も含め、智咲を驚かせるのに十分だった。


「最初はB級が二人だけだったけど、当主命令によってそこまで警護レベルを引き上げる事になったんだよ。武蔵君達が一度外に出て来た時、話をしただろ? 万が一にでも武蔵君達の機嫌を損ねるような事があれば、今は神代家に向いてる牙がこちらにも向きかねないって当主がそう判断したんだ」


「成程ね。まあ、そういう判断はするでしょうね。あの会話をしていたら」


 他にも情報があるという事を匂わせたりしていたからな、その中に一ノ瀬家に関する事もあるかも知れないと思われたんだろう。

 まあ、実際には一ノ瀬家に関する情報も無い訳では無いが、神代家程その内容が世界に与える衝撃は少ない。

 というのも、一ノ瀬家は自分達の強さをより高めるという目的しかなく、金儲け等は二の次となっている。

 なので必然的に悪に手を染める事は少なく、やったとしても強引な勧誘程度だ。


「ってか、式守家の事もそうだけど神代家の動きの方が大事だと思うぞ」


 信士から伝えたられ二つ目の内容は、神代家自体の動きの事だった。

 俺達に最後の接触は信也だったが、神代家は俺達や俺の両親との接触を図っていたみたいだ。

 その中には当然の如く探索者も居て、正式な探索者も中には居たが探索者として登録されてない奴等もいたと報告を受けた。


「多分、登録されてない探索者は失踪した探索者か、その失踪した探索者の子供が成長したという可能性が高いですよね?」


「流石、武蔵君だね。一ノ瀬家もそう判断をして戦闘になった後、血痕や髪の毛を採取した。その結果、以前失踪した探索者との血縁関係が発覚したんだ」


「やってる事がとことんえげつないわね……」


 神代家は捕らえた探索者の中から、能力が良い者を選び自分達の駒となるように言い、神代家との子を作らせていた。

 まあ、簡単に言ってしまえば一ノ瀬家よりも悪いやり方で強い探索者を集め、子供を作らせていたという内容だ。


「この内容を世間が知れば神代家も多少のダメージにはなるけど、潰れる程の内容ではないんだよな……」


「知られた所で世間には、自分達は知らなかったと言ってトカゲの尻尾切りの様に身内を切るでしょうね」


「だろうね。神代家は大きいから、把握しきれなかったというだろうね。だから、一ノ瀬家も世間には無暗に公表が出来ないんだよね……」


 そうして信士からの情報を聞いた後、ホテルに到着した俺達は次の予定を伝えてホテルの部屋に入った。


「ねえ、武蔵。私に言ってなかった事があるわよね?」


「……な、何のことでしょうか?」


「神代家があそこまで酷い家だったって、私は初めて知ったけど武蔵は知ってたのよね。私、それ聞いてないんだけど?」


 信士の話を聞いた時、俺は心の中でどうするか悩んでいた。

 あの内容を知らなかったとすれば、一ノ瀬家からの信頼が薄くなる可能背があった。

 だから俺は知っていたという事実を隠さず、信士との話を合わせていた。

 その結果、回帰前に言っていた内容と違う事を智咲が知ってしまい、こうして詰められる流れになる事も俺は分かっていた。


「ほら、あんなに悪い家って智咲が知ったら俺以上に暴れてただろ? だから、情報を伏せるしか無かったんだよ」


 俺と智咲、智咲の方が大人しいイメージを世間からされていたが、実際は智咲の方が暴れ出したら止められない性格をしている。

 だから俺は神代家がしていた事の半分程度しか、智咲には伝えてなかった。


「全く、私がそれを聞いたからって一人で暴れると思ってたの?」


「思ってたよ。だって、神代家での俺の話を少し聞いただけでも潰すって言ってただろ? それなのに、探索者を捕まえて洗脳して、子供を作ってるなんて知ったら誰も止める事が出来ない位に暴れてたでしょ?」


「……そんな事はないわよ」


「いや、智咲ならするね。何十年一緒に居ると思ってるの? 智咲の考えや、行動理由は完全に理解してるよ」


 言い淀んだ智咲に対し、俺は少し勝ち誇ったような表情でそう言った。

 そんな俺の言葉に対して、智咲は反応した。


「そう。じゃあ、私が今からする事も分かってるかしら?」


「……はい。でもゲート帰りだから、程々でお願いします」


 その後、俺は智咲に怒られた。

 隠し事は無しと互いに決めた約束を破っていた代償は大きく、次に時計を確認したら3時間が経っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る