第13話 【レベル上げ・1】
目が覚めた俺は、今回は長時間寝たためか寝汗が出ていたのもあり、風呂に入ってサッパリする事にした。
「武蔵。起きてたの?」
「少し前にな、智咲は今起きたのか?」
「ええ、スマホの通知音で起きたのよ。ほらっ、杏奈から連絡が来てたの」
そう言って智咲が見せてきたは、俺と智咲、そして式守の三人のトークグループ。
そこには数分前に式守がコメントをしており、それに智咲が返答をしていた。
「心配で毎日送ってたみたいよ。それでさっき既読つけたら、色んな事を聞かれたわ」
「まあ、別れる時に既に心配してたからな。早く今回の問題が解決して、元に戻れたらいいけどな……レベル差が開きすぎると、式守が自信無くしそうだし」
「それはそうね。でも、杏奈も自分で頑張ってみるみたいよ? 一人で行けるゲートに挑戦して、少しでも後れを取らないようにしてるみたいね」
智咲にそう言われてトーク画面を見ると、最低ランクのゲートに一人で挑戦して戦いの感覚を鈍らせないようにしているみたいだった。
「式守の為にも早く終わらせないとな……」
その後、智咲が風呂に入りに行ったので俺は装備の手入れをする事にした。
以前まで使っていた剣は予備用の剣にして、今回新しく手に入れた剣をメイン武器にした。
「聞いてはいたけど、流石は【大宰府迷宮】で出た武器だな」
報酬として貰った剣は、普通の片手剣の様に見えるがその性能はかなり高い。
剣本来の強さも高く、鉄製武器であれば軽く切れる性能。
更には武器にスキルが付いていて、【身体強化】と【自動修復】の二つが付いている。
剣の【身体強化】と俺が使う【身体強化】は重ね掛けが出来る為、これだけでも既に剣を手に入れて正解だったと言える。
「そこに丸薬とスキルだからな、まさか迷っていた全部を貰えるとは思わぬ収穫だった」
俺は探索を始める前からずっと決めきれず、報酬を受け取る際に決めようと考えていた。
武器も欲しいし、能力値も上げたいし、スキルも欲しいと迷いまくっていた。
「昔からこういう所で優柔不断だったからな、よく智咲にも怒られてたっけ……」
飯屋とかに行った際も俺は中々決められないから、結婚してからは基本的に智咲に注文を任せていたりした。
今回はそうならないように頑張ろうと思っていたけど、まさかこんな直ぐに優柔不断さを見せてしまった。
「取り合えず、これから挽回のチャンスはあるだろうし頑張ろう」
「何を頑張るの?」
「へ? あ、別に?」
勢いよく宣言したが、既に風呂から上がって来ていた智咲が俺の後ろに居た。
俺は智咲にそう返すが、少し前から俺の後ろに立っていた様で俺の言葉を聞いていた。
「そんなに笑わなくても良いだろ……」
「ふふっ、武蔵はいつまでも可愛いわね。そう言う所、私は好きよ」
智咲は拗ねる俺の頭を撫でながらそう言い、俺達は出発の準備を始めた。
それから10分程経ち、ホテルの外に出た俺達は一ノ瀬家の用意した車に乗ってゲートまで移動した。
その車の中で、一ノ瀬家に食材を頼んでいた俺達は食材を受け取った。
「一ノ瀬家ほデリバリー代わりに使うなんて、君たち位だよ」
「ちゃんとお金は払ってますし、ついでじゃないですか。それに信士さん、当主命令で俺達との仲を良くしておけって言われてたから些細な事は聞いてくれるかなって」
「ハハッ、これでも次期当主なんだけどな~……」
智咲との仲を取り戻したい零士から、信士は当主命令を下されている。
その内容としては、一ノ瀬家に負担にならない程度の頼みは聞くようにと俺達の前で言われていた。
なので俺は遠慮なく、ゲートに入ってる間の食材と着替えの追加をお願いしていた。
信士の情けない表情には、智咲も満足していた。
その後、ゲートに到着した俺達は次に迎えに来て貰う日付を伝え、そのままゲートの中へと入った。
「ここは洞窟型みたいね」
「ああ、それも階層型のゲートで10階層あるゲートだ」
「へ~……って、武蔵ここのゲートの事を知ってるの?」
「知ってる。ほら、智咲が一時期怪我で休んでた時があっただろ? その時、一人で潜りに来たことがあるんだよ」
「あ~、あの時ね。私の怪我を見て武蔵がソワソワしてて、一人でゲートにでも行きなさいって怒った時ね」
その時には既に一ノ瀬家が管理していなかったので、堂々と俺は一人で探索に来ていた。
なので俺の頭の中には、このゲートの構造の大半が入っている。
「昔の事で覚えてない所もあるけど、大体は覚えてるからさっさと地下に潜ってレベル上げしよう」
そう智咲に言い、俺は記憶を頼りに地下深くへと進んでいった。
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