第12話 【迷宮型ゲート・4】
あれから少しして、車が止まると外から零士が車に乗って来た。
「信士から話は聞いておる。宝を6つ得ただと?」
「はい。スキルは見せる事が出来ませんが、武器と能力向上のアイテムならみせられます」
俺はそう言って、報酬として選んだ宝を智咲と共に見せた。
俺は、剣と筋力が20上がる丸薬。
智咲は、杖と魔力が20上がる丸薬。
「武器とアイテムだけで4つ、そしてスキルを一つずつ選んだという訳か……宝の複数獲得の理由もお主は気付いておるのか?」
「自分達の攻略状況から察する事は出来ますよ」
笑みを浮かべながらそう言うと、零士は俺の事を睨みつけ、信士はそんな零士の様子を見て慌てていた。
「ったく、一ノ瀬家はお主の頼みを聞いてやってるというのに強欲な奴だな」
「仮にも神代家ですからね。一ノ瀬家に無償で何かやっては、後が怖いですから」
なんだかんだ言っても、俺は今はまだ神代家ではある。
だから無償で一ノ瀬家に何かしたとしても、俺に特になる事は何もない。
両親を任せてるとは言っても、それは既に事前契約の内容だ。
ここで俺が一ノ瀬家の当主に良い顔をしたとしても、いつ裏切られるか分からない。
「用心深い奴だな、智咲よ。こんな奴が彼氏だと息苦しくないのか?」
「全く、一ノ瀬家の人達と一緒に居るよりマシよ」
「……」
零士は智咲からの返答に対し、口をポカーンと開けた状態で固まった。
そしてその隣で必死になって、零士の意識を取り戻そうと体を揺らす信士。
そう言えば、零士は孫馬鹿だったな。
特に、魔法使いとして才能がある智咲を目の中に入れても溺愛している。
俺と智咲の結婚こそ反対では無かったが、幸せにしないと殺すという呪詛のような文字で手紙を何十枚も送って来た。
「ふ、ふふ、いつの間にか孫に嫌われていたみたいだな……」
この人もなんだかんだ悪い人では無かったが、智咲に対して口を出し過ぎたがあまりに嫌われてしまっている。
まあ、口出ししていたのは今から1年後の話で今の零士には関係ないが、智咲の中ではそうでもないらしい。
あの当時はまだ俺も力を付けてないときだったからな……。
「それでどうしますか、先程の件は聞かなかった事にしますか?」
「……いや、聞こう。だがまずは先に取引の対価として、何を望む?」
「簡単です。40レベル付近の探索者が行くようなゲートを用意して欲しいです」
そう言うと、零士と信士は再び驚いた表情をした。
「既にお主達はレベル40を超えておるのか?」
「【大宰府迷宮】のレベル制限は30ですよ? 流石にあそこでレベルを10も上げられません。ですが、貰ったスキルや武器を考えてそのレベルのゲートには今すぐに行けそうなので」
「……智咲。先程の発言は撤回じゃ、こやつを逃がすなよ」
「言われなくてもそうしてるし、口出ししないでくれる?」
もうやめてやれよ……爺さん、口パクパクして正気保てなくなってるぞ?
その後、何とか意識を取り戻し零士は元気が無さそうな表情でその後の取引の対応に応じた。
それから少し走った所で、俺と智咲は車から降りてホテルへと向かった。
時間的に今の時刻はだが、徹夜だったので夜にまた一ノ瀬家の使いの者が来る事になっている。
「ふぅ、サッパリした……」
ホテルに入った俺は智咲と一緒に風呂に入り、先に風呂から出て来た。
風呂好きの智咲とは違い、俺はそこまで風呂に長く入ったり何度も入ったりはしない。
まあ、温泉とかだったら何度も入る事はあるが、逆にそういった特別な場所じゃないと長風呂は基本的にしない。
「それにしても、【大宰府迷宮】を攻略するのが目的だったけど、まさか攻略時間によって宝の数が違うなんてな……」
あの後の取引の際、俺達の持つ情報と零士達の持つ情報を出し合った結果、その結論へと至った。
これまで様々な攻略方法がされた来たが、攻略時間が早いのは俺達だけだった。
一応、8時間位の攻略者はいたが、俺達はその探索者よりももっと早い。
「そのおかげで計画を少し練り直さないとな、このまま上手くいけば一ヵ月も必要じゃなくなるだろうしな……」
その後、俺は智咲が上がってくるまで今後の計画の修正を行い、その間にいつの間にか寝てしまって次に目が覚めると夜になっていた。
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