第11話 【迷宮型ゲート・3】


 その後、俺達は休憩を終えて先に進みボス部屋へと辿り着いた。

 【大宰府迷宮】のボス、多腕の大鬼。

 四本の腕を持ち、五m程の長身、その体格に見合う筋肉を持つ鬼。


「智咲。始めるか」


「ええ、いつも通り頑張りましょう」


 互いに見つめ合いながらそう言って、大鬼との戦闘を始めた。

 4本の腕にはそれぞれ断る武器、左下は剣、左上は槍、右下はモーニングスター、右上は杖。

 距離を詰めれば剣でやられ、中距離だと槍かモーニングスター、遠距離だと杖で魔法を放ってくる。

 前衛後衛どちらも出してくる厄介なタイプのボスとして、一ノ瀬家衰退後では多くの探索者を苦しめていた。


「まあ、俺達は攻略方法が頭の中に入ってるから苦しまないけどな」


 攻略の仕方は簡単、武器の軌道を見て避けて攻撃を繰り返す。

 智咲が後ろを守っている為、魔法での援護もあるから危険な賭けはせずにジックリと大鬼を詰めていく。


「グルォォォ!」


 ボス戦が始まって10分程が経ち、大鬼をかなり追い込んでいた。

 そんな時、大鬼は雄叫びを上げると武器を全て投げ捨てた。


「【狂暴化】か、智咲こっからは俺だけに任せてくれタゲが智咲に行ったら大変だからな」


「分かったわ。大丈夫だとは思うけど、気を付けてね」


「分かってる」


 【狂暴化】状態の大鬼は、タゲが移った的を追いかけまわす習性がある。

 その為、魔法使いの智咲にタゲが移った場合危険性がかなりあるから、ここからは俺一人での戦闘となる。


「俺が相手だ。こっちだよ鬼さん」


「グルォォ!」


 一瞬、智咲の方へと視線を向けた大鬼に向かって俺は落ちてた槍を大鬼に向かって投げて挑発をした。

 大鬼はそんな俺の行動に怒りのボルテージが更に上がり、俺の方へと向かって直進して走って来た。


「ハッ、鬼と力勝負か! こりゃ、面白い!」


 剣を構え、大鬼の突進を正面から受けた。


「うぐっ、た、耐えたぞ! ほら、お返しだッ!」


 ジリジリと後ろに下げられる俺だったが、何とか踏ん張り大鬼の突進を受け止めた。

 俺はそんな大鬼に向かって、今の衝撃を完全に吸収した【反撃】というスキルで大鬼を吹き飛ばした。


「体勢が崩れてるぜ、鬼さんや!」


 【反撃】による衝撃で大鬼は、完璧に体勢を崩していた。

 俺はそんな大鬼の背後へと周り、首元に剣を突き刺した。

 そして勢いよく上に剣を振って、頭部を真っ二つにした。


「回帰後、初めて燃える戦いだった。感謝するよ大鬼」


 頭部を真っ二つにされて粒子化され消えていく大鬼に向かって、俺は笑みを浮かべながらそう言った。

 その後、俺と智咲はボス部屋の奥にある部屋に入った。


【攻略者……神代 武蔵、一ノ瀬 智咲。功績の計算を始めます】


【……計算終了。宝の選択をお願いします】


 部屋の中に入ると、ステータスと似た半透明の板にその様な文字が現れ、宝の選択画面が表示された。

 功績は文句なしの最高値を叩き出しており、本来であれば一つしか宝を選択出来ない所、俺達は三つ選べると書かれていた。


「三つか、元は二人の宝を使って俺を強化しようと思ってたけど、まさかだったな」


「まさか、功績を最高値にするとこんなボーナスを得られるなんて、私も知らなかったわ」


「だとしたら、一ノ瀬家も知らないかも知れないな……いい情報を手に入れたぜ」


 その後、俺達は元々予定していた宝を選択して、更に追加で自分達に合う宝を選んで外に出た。

 俺達が外に出ると、待機していた信士が驚いた様子で俺達に駆け寄って来た。


「もうクリアしたのか?」


「はい。そうですよ。もしかして、失敗して戻って来たと思いましたか?」


「……そう思うのも当然だろ? ここのゲートの最速クリア時間は8時間なのに君達は5時間もかからず戻って来たんだから」


 この時代の最速クリア時間は、当然の如く知っている。

 俺達はその時間よりも早く攻略する為、色々と準備をしてきたんだからな。

 その為に当時の記録者の情報を頭の中から引っ張り出してきて、計画を立ててこの日を迎えた。


「……ちなみにどんな宝を選んだのか聞いてもいいか?」


「良いですよ。俺達が選んだのは、それぞれ武器と能力向上のアイテム、そしてスキルですね」


「……ん?」


 笑顔を浮かべて言った俺に対して、信士は一瞬だけ間をあけてそんな反応をした。


「それぞれって、聞き間違いか、いやでもそれでも3つ?」


「ええ、それぞれ3つずつ計6つの宝を選んできました」


 そんな俺達の言葉に信士は、今度は口に手を当てて大声を出さないように我慢した。

 その後、俺と智咲は早く車に乗るように言われて乗り込むと、信士は慌ててスマホで誰かに連絡を取っていた。

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