第10話 【迷宮型ゲート・2】
制限ギリギリで来ただけあり、ゲート内の魔物に足止めされる事はなく。
ゲートに入って二時間程が経ち、未だ速度が落ちる事無く進んでいる。
「やっぱりスキルを早めにとって正解だったな、制限内だけど敵が簡単に倒せる」
「そうね。特に私の場合は、魔法強化系のスキルも取って来たから魔力効率も良くて、探索者始めた当時の私を既に超えてる気がするわ」
「そりゃ、超えてるだろうな。当時の智咲より、落ち着きもあるしな」
「それはそうね。あの頃の私、肌荒れも凄かったけど今はそんな事もないし、本当に回帰して良かったわ」
その後、俺達は一度も止まる事無く迷宮の半分近くまでやって来た。
この迷宮、来た事は無かったが回帰前の一ノ瀬家とのやり取りの際、迷宮の具体的な地図を見た事があった。
智咲はそれを覚えていて、ここまで迷宮で取れる物は全て取って最深部へとやって来た。
「鉱石やら薬の材料も取れるって、本当に良いゲートだな……一度しか来れないけど」
「そうなのよね。まあ、数年後に出て来る〝運び屋〟が居れば何度も来れるけど、彼は直ぐに海外に出るし接触は難しいわよね」
〝運び屋〟という異名を持つ探索者が回帰前の世界に居た。
そいつは空間系のスキルを持っていて、制限付きの迷宮ゲートに何度も入る事が出来た。
「どうだろうな、俺達のせいで世界線が既に変わってるからな……」
「世界線って、神代家と一ノ瀬家のやり取りが数年早まっただけよ?」
「だからだよ。あれ、智咲は知らなかったっけ? 運び屋は神代家が誘拐した探索者の一人なんだよ」
その事実を知ったのは随分と後だったが、運び屋が探索者を始めたのは20代後半だった。
その間、何処にいたのかというと神代家が誘拐した探索者を働かせる場所で生活をしていた。
「それもこの間、俺が一ノ瀬家に知らせた場所だからな」
「……知らなかったわ。えっ、そんな大事な話を聞かされてなかったの?」
「言ったはずだぞ? 俺が智咲に隠し事しないってのは、智咲が一番知ってるだろ?」
回帰前の智咲は精神系のスキルも持っていて、隠し事をしたとしても意味が無かった。
まあ、俺自身が智咲に隠し事をしなかったけど、サプライズプレゼントを用意しようとしてる時はその能力が邪魔だなとは感じた事がある。
「だとしたら、私が必要ない情報として扱ったのかしら?」
「まあ、その時はもう〝運び屋〟は海外に行ってたからな。意味がない情報といえばそうだったからな」
「だったら、まだ彼は日本に居るし、一度は接触してみても良いんじゃない? 仲間に出来るか分からないけど、知り合い程度になっておけば依頼は出来そうだし」
「そうだな、今回の件が落ち着いたら会っても良いかもな」
そうして話を一旦終え、俺達はゲート内に居る二体居るボスの内、一体目との戦闘を始めた。
【大宰府迷宮】には二体のボスが存在する。
一番奥のボスは五m程の巨大な鬼の魔物で、中ボスは二m程の中くらいの鬼。
「智咲。援護は頼んだ」
「分かってるわ」
「グルォォォ!」
中ボス戦開始早々、中ボスの鬼は叫ぶと周りに1m程の鬼を複数体召喚した。
しかし、事前に召喚されると分かっていた俺は智咲にその鬼達の駆除を頼んでおり、一直線に中ボスに向かって走った。
「ハァッ!」
小鬼の消滅に一瞬だけ俺の存在を忘れた中ボスの鬼。
その隙を見逃さず、俺は全力で走って一瞬で中ボスの鬼に接近し、首を切り落とした。
「ふぅ……まあ、知っていればどうって事無かったな」
「そうね。下級の魔物を召喚する系のボスの場合、大半は情報不足で事故に繋がるけど、今回は事前に知っていたからそんな事も起こらなかったしね」
中ボス戦を僅か5分程で終えた俺達は、そのまま部屋を進んで最深部へと進んでいった。
中ボス戦以降の最深部は、それまで出て来た魔物とは違って少し強さがある魔物が出て来た。
しかし、どの魔物も遠距離攻撃が出来るタイプではなく、智咲に処理を任せて先を進んだ。
「智咲。魔力は大丈夫そうか?」
「う~ん……ボスにそのまま行くのは難しいわね。ボス戦前に休憩は必要かしら」
「了解。なら、丁度あそこで休めそうだし休んでおくか」
丁度、良い感じに休めそうな場所を見つけた俺は休憩を挟む事にした。
ここまでほぼ止まる事無く進んでいる為、少し休んだ所で問題は無い。
「武蔵、ここから出たらまた別のゲートに行くのよね?」
「そのつもりだよ。流石に今のレベルでは神代家とは戦えないからな、ゲートから一旦出て来たのもこのゲートでの宝ガチャをする為だからな」
「だったら、ゲートから出たらまたホテルに行きたいわ。ゲートに行く前にお風呂に入りたい」
「了解。その位の時間はあると思うから良いよ」
ゲート内なら我慢は出来るけど、外に居たら我慢は出来ないのは今も昔も変わらないなと俺は内心そう思った。
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