第9話 【迷宮型ゲート・1】
次に目が覚めると、外は暗くなっていた。
時間を確認すると、19時を過ぎていてまだ連絡は来てなかった。
「まあ、夜って約束だったしな、もう少し待っておくか」
そう思いながら一緒に寝ていた智咲の方を見ると、そこには姿が無かった。
一瞬、部屋の気配を探るとシャワーを浴びているみたいだ。
「智咲、ゲートの中じゃ我慢してるけど風呂好きだからな。起きて直ぐまた入ったんだろうな」
そんな風に考えていると、スマホの通知音が鳴った。
俺は直ぐにスマホ見て確認すると、送り主は信士だった。
「智咲。一ノ瀬家が到着したみたいだぞ」
「分かったわ。後、5分で出るからそう伝えて」
「了解」
その後、俺達はホテルを出て下で待っていた信士と合流をした。
そして車の中にはもう一つ、俺達がこんな長時間待っていた相手も乗っていた。
「まさかこんな所で一ノ瀬家の当主様と会うとは思いませんでした」
「事が事だからな、それにあの神代家を弱体化出来る機会なんて早々ないからな。儂だって慎重に動いておるんだ」
同じ車に乗っている人物は一ノ瀬家現当主、
「それで一週間もの期間をあけて、儂に合わせるように信士に頼んだという事は儂にしか出来ない事を頼むつもりなんだろ?」
「はい。俺と智咲を【大宰府迷宮】に連れて行ってください」
「……その場所が一ノ瀬家が許した者しか、入らせないと知っての頼みか?」
【大宰府迷宮】はその名の通り、福岡の大宰府市に出来たゲート。
様々なゲートが存在する中、一番特殊な造りとなっている迷宮型のゲート。
地下や上階に上がる階段はなく、広い迷宮の中を探索して中心地に待ち構えているボスを倒せばクリア。
迷宮型の特徴としては、ゲートへの入場制限が存在している事、そして最初の攻略の際には迷宮から宝が貰える。
その宝は迷宮の功績次第で変わり、回帰前の情報では有用な宝が数多く出ていたと知った。
「そう言うと思っていました。なので、そのゲートに入る為の取引をしたくて信士さんに頼んできてもらったんです」
「取引? 神代家の他の情報でも持ってるのか?」
「持ってない事は無いですが、それは後で俺が使う予定なので別の情報です。一ノ瀬家の分家に羽山家ってところがありますよね? そこ、神代家と繋がってますよ」
羽山家、そこは前当主までは一ノ瀬に忠誠を誓っていた。
しかし、今の当主は学生時代に神代家の者と親しくなり、敵同士ではなく友人として接していた。
その流れでそこの当主は神代家に情報を流しており、一ノ瀬家の邪魔となっていた。
本来であれば数年後に一ノ瀬家の癌として、いい仕事をしてくれるのだが取引の材料として使う事にしたいと智咲に頭を下げた。
智咲は渋っていたが、今回は仕方ないという事でこのカードを切る事にした。
「その話は真か?」
「信士さんには事前にその話をしていて、調査を頼んでいました。どうでしたか?」
「……武蔵君の言う通り、羽山は神代家と繋がっていました」
事前に信士には伝えており、今日までに調べて貰っていた。
「……一体どこからそんな情報を持ってきたんだ?」
「前回も信士さんに聞かれましたが、秘密です。俺の生命線でもありますから、ですが情報の価値は前回も今回も良い物だと思ってますよ」
零士は俺の言葉に溜息を吐き、暫く考え込んだ。
そして数分後、ゲートへの入場許可を得た。
「そのゲート。行くのはお主と智咲か?」
「そのつもりです。その為にこの一週間、二人でゲートに籠っていたので」
「というと、期限的にも制限ギリギリまでレベルを上げて来たみたいだな……」
【大宰府迷宮】の制限レベルは30となっていて、俺と智咲は迷宮の途中でレベルが上がるようにと29で止めて出て来た。
まあ、元々式守と一緒にゲートに行っていた時点で20にはなっていたから、そこまで急いであげたりはしていない。
レベル上げよりもスキルの取得と、スキルレベル上げに集中的に行っていた。
「しかしまあ、神代家がこんな幼い子供に突かれて終わりに迎えようとしてるとはな、奴等が可哀想に思えて来たの」
零士は悪い顔を浮かべながらそんな事を言って、途中で零士とは別れて俺と智咲はそのままゲートへと向かった。
そうしてゲートの近くに到着後、信士にゲートまで案内してもらって中に入った。
「智咲。ずっと黙ってな、やっぱり本家の奴等とは話したくはないか」
「ええ、回帰前で今はそこまでされてないけど、私もなんだかんだ色々と邪魔をされて良い思い出がないもの」
「今は我慢してくれ俺の方の問題が解決したら、一ノ瀬家の方もどうにかするつもりだから」
「分かっているわよ。さっ、話はここまでにしてゲートの攻略に集中しましょう」
そう智咲は言い、俺も気持ちを切り替えてゲートの攻略を始めた。
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