第8話 【最初の仲間・4】
家を出た俺は智咲と合流をして、式守との待ち合わせ場所に向かった。
本来であればそのまま、ゲートへと向かうのだが昨日の事があるので雄二さんのカフェへと移動して昨日の事を伝えた。
「そんな事があったんだね……その大丈夫なの?」
「まあ、流石にあの神代家でも一ノ瀬家の本家までは襲えないだろうからね。逆に自由に動いてる俺が狙われると思うけど……だから、今日はその話をしにきたんだ」
俺はカフェに連れて来たのは、ただ情報交換をする為ではない。
現時点ではただのパーティーの一人にすぎない、式守を危険な事に巻き込まないようにするためだ。
「式守、今日でパーティーを解散しようと思う」
「……それって、私を巻き込まない為だよね」
「そうだ。これ以上俺達、というか俺と一緒に居たら危険な目に合うのが分かってる。だからその前に離れた方が良いと思うんだ」
式守はただのパーティーメンバーだった。
そう神代家に思わせた方が、式守と式守の家族に迷惑を掛ける事は無い。
「私は大丈夫だよ。それに仲間でしょ、危険だから離れるってそれは仲間じゃないでしょ? それとも私、仲間じゃなかったの?」
「いや、仲間だと思ってるよ。でも、これは俺の家系の話だし一緒に居たら家族にも被害が及ぶ可能性もあるんだぞ?」
「そこは心配だけど、でも友達の事情を聞いて自分だけ逃げるなんて出来ないよ」
式守からそう言われた俺は、智咲の方へと視線を向ける。
智咲は俺からの視線に気づき、助け船を出してくれた。
「杏奈が今回、パーティーから抜けたとしても友達は友達だし、仲間なのは変わらないわ。相手を欺く為、一旦離れようって言ってるのよ」
「でも、私だけ何も出来ないなんて……」
式守は自分だけ何も出来ない事が嫌なのか、そんな事を言った。
正直、式守とはこれからもパーティーの一員として一緒に活動をしていたい、その為に離れて貰いたいのだが……。
「式守の気持ちは十分伝わったよ。でも、考えは変わらない。一旦、俺とは離れて過ごす。これが今出来る一番いいんだ」
式守の気持ちは十分に伝わってきたが、それでも俺は考えを変えない。
智咲は一ノ瀬家で一緒に居たとしても問題は無いが、式守の家庭は一般家庭だ。
そんな所に神代家が迷惑を掛けないなんて、絶対にないとは言い切れない。
「式守。この件の埋め合わせは、絶対にするから」
あの後、何とか俺の気持ちが伝わり式守は一度俺達と離れると決めた。
「うん。凄く心が傷ついたから絶対に埋め合わせしてね……そのためにも生き残ってね」
「勿論だよ。死ぬつもりはないさ、逆にあいつらを潰す為に動くから安全な所から見てて」
そうして長居すれば、それだけ危険という事で式守とは店で別れ、俺と智咲は二人でゲートへと向かった。
「杏奈。いい子ね」
「本当にな、最初は回帰前の世界で活躍したからって理由でパーティーに引き入れたけど、今じゃ大切な仲間だしな」
「ええ、そんな仲間からの約束だもの絶対に生き残らなきゃね」
智咲の言葉に頷き、俺達はゲートへとやって来てそのまま中へと入った。
ゲートの探索方法、式守が居れば【マップ】頼りに効率的に潜っていた。
しかし、智咲と二人になった今、そんなスキルも無いから探索方法を変えた。
「ふふっ、なんだか昔を思い出すわね」
「このやり方は若い頃にしてたけど、30過ぎたあたりからは走り回るのが嫌で徐々にやらなくなったよな」
俺達のやり方は単純で、速度を合わせて走りながらゲートの中を探索するというやり方。
力のごり押し、長年共に戦った経験から出来る芸当。
回帰前、このやり方を見つけてから格段に探索スピードが上がって、良い感じに負荷も掛ける事が出来て訓練としても最適だった。
「改めてこのやり方で探索してみて、若さって本当に凄いって実感したわ……老いたくはないわね」
「確かにな……そう言えば、老いを遅くする宝があったよな? 先に俺達がその宝が出たゲートに行って宝を手に入れても良いな」
「良いわね。有能なアイテムが出たゲートの記憶。今の内に書き出しておいた方が良いわね。今回の問題が落ち着いたら、回収してまわっても良いわね。別に悪い事に使う訳でも無いし、誰かから奪う訳でもないしね」
「ああ、ただその宝がある場所を事前に知ってるってだけだからな」
そんな事を智咲と話ながら俺達は探索を続け、一週間近く俺達はそのゲートの中で過ごす事にした。
外に出た所で、あの馬鹿の報告を聞いた本家が動いてるだろう。
それならゲートで過ごした方が良いと判断をして、入る前に急いで準備をしていた。
「武蔵。どう予定してた強さにはたどり着けた?」
「二日前には俺の最低ラインは超えてたよ。回帰前の経験があったおかげで、欲しかったスキルも大分揃ってその練習をしてたんだよ」
一週間のゲート探索のおかげで、このゲートでの目標にしてた強さは達成した。
そうして目標を達成した俺は、予定通りゲートの外に出る事にした。
「武蔵君、智咲様。お迎えに来ました」
そしてゲートの外に出ると、予定通り一ノ瀬家の使いの人が待っており、用意された車に乗って移動した。
移動先は一ノ瀬家系が運営しているホテルで、最高級の部屋に通された俺と智咲は一週間ぶりに風呂に入り疲れと汚れを落とした。
その後、ある人が来るまで部屋でベッドで寝る事にした。
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