第7話 【最初の仲間・3】
あの後、俺達家族は隣に住む一ノ瀬家へと家族揃って尋ねた。
「なんと、そんな事が……」
智咲の父、
その横で里美さんも同じ表情をしていて、今日の起こった出来事を知ってもらった。
「それで頼れるのが一ノ瀬家なんですが、本家の方が両親をかくまって貰う事は可能でしょうか?」
「……正直、難しいだろうとは思う。これが一般の家庭、もしくは別の家系なら良かったんだけど、神代家となると本家の方達が良く思ってないだろう」
一ノ瀬家と神代家、両家は代々因縁のある家系。
そんな中、神代家の分家である俺の両親を匿うなんて一ノ瀬家の本家はしてくれないだろう。
「……話の場を用意する事は出来ますか、説得は自分でやるので」
「武蔵君がかい? 本家の人達はお堅い人達が多いから、難しいと思うよ?」
裕太さんは元々、一ノ瀬家で暮らしていた人。
その為、一ノ瀬家がどれだけ堅い人達が多いのかよく分かっているのだろう。
「大丈夫です。こういう時の為に切り札を用意して来てるので」
「切り札?」
「はい。ですので、話を出来る場所を作ってください。お願いします」
俺はそう裕太さんに頭を下げお願いをした。
その後、裕太さんは俺の気持ちに負けて本家の人に連絡を入れてくれてた。
そして待つ間、智咲の部屋で待機する事になった。
「まさか、別れた後にそんな事が起こっていたなんて知らなかったわ」
「いつかは本家の奴が来るだろうとは思ってたけど、こんなに早く動くとは思わなかったよ」
「流石、神代家ね。それで、この後はどうするの?」
「神代家を潰したい所だけど、流石に今の俺じゃ全部を相手しきれないのは理解してる。だから、一ノ瀬家を利用させてもらう」
裕太さんには悪いけど、一ノ瀬家を神代家に当て時間を稼ぐのが俺の目的。
「良いわね。共倒れとか出来ないかしら?」
「それは難しいだろうな、出来て神代家を弱体化。まあ、それも一ノ瀬家が情報を上手く使ってくれたらの話だけど」
そんな風に話をしていると、下から呼ばれていくと既に一ノ瀬家からの使いの人が部屋の中に居た。
「……まさか、次期当主と呼ばれてる方が来て下さるとは思いませんでした」
「ハハッ、弟の頼みだからな。それに神代家の問題なら、俺くらいが出ないと処理が出来ないだろうからな」
部屋の中に居た人物は、現一ノ瀬家の当主である
ちなみに裕太さんはこの人の弟で、智咲との結婚が難しかったのも本家との繋がりが強い分家だったという理由である。
「それで、話し合いの場さえ用意したら自分がどうにかするとか言ってたみたいだけど、一ノ瀬家を動かせる程の巧みな話術でも使えるのか?」
「いいえ、話術も魔法も俺は苦手です。話すより力で解決する方が得意です」
「みたいだな、じゃあどうするんだ? 今、俺を倒して一ノ瀬家を脅すのか?」
真剣な眼差しでそう言いながら、俺はこの男からの圧に一瞬だけ息が詰まった。
「神代家の情報。それを一ノ瀬家に渡します」
「情報?」
「神代家は探索者の失踪事件の首謀者です」
その俺の言葉に信士は驚き、智咲の両親、そして俺の両親も驚いた表情をした。
探索者失踪事件、それは毎年起こっている。
政府も何年も事件を調査していたが、全く調査は進まず苦しい思いをしていた。
「……自分達の安全の為、一ノ瀬家に偽の情報を渡すつもりか?」
「そんな訳ありません。ですので、先にこの情報が本当だという証拠を見せます」
そう言って俺はスマホを取り出して、写真フォルダの中から一つの写真を見せた。
その場所は、両親と旅行を行った際に撮ったとある建物の写真。
「そこの地下に失踪した探索者が居ます。一ノ瀬家なら直ぐに確認できますよね? 救出はまだしないでくださいよ。万が一相手にバレたら逃げられると思うので」
信士は俺の言葉を聞くと、スマホを取り出して電話で指示を出した。
それから10分程して、俺が写真を撮った建物の地下から複数人の探索者の反応があったという報告かあった。
建物に関してもそこは今も使われている建物で、その建物の所有者は神代家である。
「……どうやってこんな情報を手に入れた?」
「秘密です」
それから暫くして、一ノ瀬家に連絡を入れた信士は俺の両親の保護を約束してくれた。
その際、両親の安全を守らせる為、契約書も交わした。
「全く、断るつもりで来たのにこんな事になるとはな……裕太。お前の娘は凄い奴と付き合ってるみたいだな」
「武蔵君が昔から凄い子だと分かってたつもりだったけど、想像以上だったよ」
そんな会話をして信士は、明日家に使いを出すと言って去った。
俺達もこれ以上、一ノ瀬家に居たら迷惑になるからと家に戻る事にした。
「武蔵。いつあんな情報を手に入れたんだ?」
「結構前だよ。一時期、本家で過ごしてた時があったでしょ? あの時に話を聞いて、調べてたんだよ」
これは本当の事で回帰前も、この時には既に失踪事件についてはある程度は知っていた。
しかし、神代家を相手取るには力も覚悟も無かった俺は、数年間黙り続けていた。
その結果、多くの探索者の命が失われてしまった。
「父さん達は安心して一ノ瀬家で過ごしててよ。神代家の分家だからって、酷い対応はされないように釘は指しておいたけど、もしもそんな対応をされたら直ぐに連絡してね」
翌朝、早い時間帯に一ノ瀬家からの使いの人が迎えに来た。
俺はその人達に両親を任せ、俺も荷物を纏めて家の外へと出た。
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