第4話 【回帰・4】
「それじゃ、式守さんまた明日」
「うん。智咲さん、武蔵君。またね」
話し合いはあれから一時間程続き、今日は解散する事にした。
正直、今日からゲートに行きたい所だけど一応俺達は親元が暮らす学生だ。
いくら免許証があるからといって、何も言わずにゲートに行ったりしたら怒られるのは確実。
その為、一旦今日の所は話し合いだけにしてそれぞれの親に話をする時間を作った。
「ふむ、武蔵がゲートにか……」
「珍しいわね。学生の間は、ゲートには行かないなんてこの間まで言ってたのに」
話し合いが行われた日の夜、夕食後に両親に話があると呼びゲートに行く事を伝えた。
父、
母の
そんな両親に俺は説得の道具として、夏休みの宿題について話をした。
「俺が探索者アカデミーに通ってるのは、父さん達も知ってるでしょ? 夏休みの宿題にさ、ゲートになるべく行く様にって書いてあるんだよ」
強制では無いが、アカデミーの夏休みの宿題の一つにゲートでの経験を積むようにと書かれている。
「あら、本当ね。私達の頃はこんな宿題無かったわよね?」
「無かったね。まあ、でもアカデミーがこんな宿題を用意したのも分かる気がするよ。最近は探索者の許可証を発行する事は多いけど、探索者としてのちゃんと活動する人は減少してるんだよ。だからアカデミーは探索者活動の後押しをしてるんだと思う」
探索者減少期。
前回、この減少期のせいで日本で活動する探索者が少なく、近い未来では多くのゲートが破壊されて魔物が外に出る事件が多発した。
その頃の俺達は探索者として既に実力者で、色んな都市を自分達の力で救えたが救えなかった都市も沢山あった。
今の俺達が変えられるか分からないけど、自分達の強さを見せて少しは探索者が増えたら嬉しいとは考えている。
「武蔵の言い分は分かったよ。僕としては武蔵がやる気を出してくれて嬉しいしね」
「そうね。武蔵が頑張ってる姿が見れるだろうし、私も反対はしないわよ」
「ありがとう。父さん母さん、ちゃんと頑張って成果を見せるね」
「ああ、でも無茶はしちゃ駄目だからな? 武蔵も智咲ちゃんもまだ学生なんだから」
父さんからそう心配されたが、無事に俺の方はクリアした。
両親との話し合い後、俺は自室に戻って来て智咲に連絡を入れた。
連絡は直ぐに返って来て、特に何事もなく許可を貰えたと書かれていた。
「まあ、一ノ瀬家はそうだよな」
一ノ瀬家は家族仲は良いけど、結構な放任主義。
智咲が俺と一緒にサボっても、特に怒る事は無く注意程度で済ませていた。
訓練をサボるようになって本家の方から小言を言われても、智咲本人には言わなかったりと智咲の事は大事に想っている。
「さてとこれでゲートに行く前準備は終わったか、後はここからどれだけ早く強くなれるかだな」
俺と智咲の持つ、それぞれの【~の天才】という固有能力。
それは成長促進の効果をも持つ、強力な能力。
この能力のせいで俺や智咲は、分家の家の子なのに本家からの接触が多かった。
「まあ、本家連中に関しては接触があれば対応するとしよう。今の時点でも、かなり揺さぶる事は出来るけど俺自身の力が無くて逆に処理される可能性もあるからな……」
まずは強さ、そして次に信頼できる仲間を増やす。
一度の人生では俺と智咲は、二人で完結してしまう為に探索者の繋がりもそんなに広くなかった。
そのせいもあって情報が少なく、かなり面倒な事を多くしていた。
「取り合えず、前回活躍してた同世代には一度声を掛けてもいいかもな……それでギルドを作って、効率的に動くのも良いかもしれん」
回帰した事で一度目で得た知識は、今回の人生で大きな力となるだろう。
そんな事を考えながらベッドに横になっていた俺は、いつの間にか眠りについていた。
そして翌日、智咲が家に呼びに来たので一緒に待ち合わせ場所に向かった。
「おはよう。智咲さん、武蔵君」
待ち合わせ場所に行くと、既に式守は来ていたので互いに挨拶を交わしてそのまま目的地に向かった。
向かう場所は、回帰して初めて行くゲート。
既に昨日の時点でスマホでゲートの予約と、パーティーの申請をしている。
一昔前は探索者協会まで行って、パーティー登録やゲートの予約をしなきゃいけなかったらしい。
「お母さんも探索者だったんですけど、ゲートの予約は本当に面倒だったらしいですね」
「それ俺の両親も言ってたな、初心者の頃は後回しにされがちだったから凄く時間が掛かったらしい」
「昔は探索者も多くいて、実力主義だったものね。今じゃ探索者協会が若者向けに探索者の良い所を宣伝したりしてるけど、あれで探索者が増えてるのか微妙よね」
そんな事をバスの車内で話しながら移動をして、30分程して目的のゲート前に到着した。
回帰したS級夫婦 霜月雹花 @hyouka
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