第2話 【回帰・2】✤


「日付的に高校入学したばかりみたいだな」


 あの後、まずは現状の確認をしようと俺達は日付を最初に確認した。

 すると、今は7月下旬で高校入学した年の夏休みみたいだ。


「取り合えず、もう一度高校入学の為に勉強をしないといけないって事はないみたいだな……」


「まあ、武蔵は勉強が苦手だったものね。結局、最後まで語学に関しては私が通訳してたか、相手に日本語を覚えさせてたものね」


 勉強は苦手だ。

 特に語学に関しては、日本語以外で理解できたのは英語。

 それも聞き取れる単語がいくつかある位だった。


「今回は頑張るよ。探索者で語学出来た方が良いって、身に染みて体験したからな」


「海外に派遣された時、私と離れるって分かった時の貴方の顔。今でも思い出せる位に笑ったわ」


「やめてくれよ。恥ずかしい……」


 昔の恥ずかしいエピソードを智咲から言われた俺は、顔を赤く染めてそう言った。


「……ってか、夏休みなら時間は沢山あるからゲートに行って、さっさと強くなった方が良いわよね?」


「確かにな、幸いな事に俺達は早い内に探索者の免許は取ってたしな」


 俺達の家系は、元々探索者を多く輩出してる家系。

 その為、既に探索者の試験受け、探索者の免許を持っている。

 ただし、学生の頃の俺達は〝訓練嫌い〟だった。

 家系が家系なだけあって、子供の頃から訓練に嫌々参加させられていた。

 その為、中学に上がってから訓練をサボるようになり、高校二年生の頃までそれは続いた。


「でも急に私達がゲートに行き始めたら、また小言を言われそうね」


「いいんじゃないか? 家の援助があった方が成長が早まると思うしな」


「……私の方は大丈夫だけど、武蔵はいいの? 本家からの小言、私の方より酷かったって言ってたでしょ」


 俺の家系である神代家は、代々武家として有名な家。

 本家の人間達はそんな家の名誉を重視していて、能力のある子は本家で育てる方針を立てている。

 俺もその中の一人だったが、本家のある人物との確執で本家での訓練は無くなり平穏な生活を送っていた。

 しかし、それは俺が訓練をサボるようになってるから何も言われてないが、逆に訓練を再開したら何かしら言われるだろう。


「その時はその時で対処するよ。今の俺は、本家の裏の顔も知ってるから何か言われたら脅したり、逆に俺が本家を乗っ取ってもいいかもな……」


「武蔵。前世でやられた仕返しやろうとしてない? 凄く悪い顔してるわよ」


「そりゃ多少はやり返したいに決まってるだろ? 俺達の結婚が遅くなったのも、あのクソ本家共のせいなんだからな」


 一ノ瀬家は俺達の結婚について、そこまで口は出してこなかった。

 それもそのはずで一ノ瀬家は魔法使いを多く輩出してるが、それ以上に強力な能力を持つ血筋は歓迎な家。

 俺の強さは世間に知られていたから、一ノ瀬家からは歓迎はされていた。

 しかし、神代家はそんな事は無く、俺と智咲の結婚に色々と口を出してきて、武力行使すらしてきた。

 流石に俺もその対応にはキレ、神代家の本家を半壊させ長く続いた武家の歴史を俺が破壊した。


「あの時はカッとして潰したけど、使い方によってはドラゴンとの戦いのときに役に立つと思うからな早い内に対応してもいいだろうな……」


「今回も神代家は大変な事になりそうね」


 智咲は神代家の事を憐れみを込めそう言って、俺達は夏休み中の計画を練った。

 それから10分後、一ノ瀬家に入る際に勉強を口実に言っていた為、偶に智咲の母が見に来たので場所を移す事にした。

 移動先は家から10分程歩いた所にある〝わかば〟という名前のカフェ。

 この店は智咲のおじさんが店長をしている店で、小さい頃からよく来ている。


「おや、智咲に武蔵君じゃないかこんな時間に来るなんて珍しいね」


 智咲の叔父、一ノ瀬 雄二いちのせ ゆうじ

 母親の弟で歳は34歳で現在はカフェの店長をやりながら、魔法塾の講師をしている。

 

「少し前に夏休みに入ったんですよ。席、空いてますか?」


「空いてるよ。二人共注文はいつものセットで良いかな?」


「はい。お願いします」


 おじさんにそう返事をした俺達は、店の一番奥の席に座った。


「探索者として活動するとして、まずはお互いに今のステータスは確認しましょうか」


「そうだな。正直、戻って来てから自分の低くなった数値を見るのが怖くて確認してなかったけど、活動するなら向き合わないといけないからな……」


 智咲の言葉に俺はそう言い、同時に俺達はステータスを確認した。


名 前:神代 武蔵かみしろ むさし

年 齢:16

性 別:男


レベル:10

筋 力:150

体 力:120

魔 力:80

敏 捷:130

・固有能力

【武道の天才】

・スキル

【剣術:3】【体術:3】【弓術:3】

【身体強化:2】【威圧:4】

・加護

【武神の加護】


名 前:一ノ瀬 智咲いちのせ ちさき

年 齢:16

性 別:女


レベル:10

筋 力:70

体 力:80

魔 力:250

敏 捷:100

・固有能力

【魔法の天才】

・スキル

【火属性魔法:4】【水属性魔法:4】【風属性魔法:3】

【土属性魔法:3】【聖属性魔法:2】【魔力探知:2】

・加護

【魔法神の加護】


「……この頃から智咲は魔法使いとして、ほぼ完璧に近い能力をしてるな」


「私の場合、魔法を扱うの自体は好きだったからね。訓練は嫌だったけど」


「回帰前に覚えてたスキル。何個か残ってないかなって、淡い期待をしてたけど改めて見たら悲しいな……」


 探索者として活動していた俺の最終的なスキルの数は、今の何倍もあった。

 それが今じゃ、たったの5つだ。

 無いだろうなと思ってはいたけど、実際に目にしたら心に来るな。

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