第42話

「ふふ、じゃあ早速だけど、脱いでくれるかな?」


 マナの顔がすごく近い。キスしてしまうのではないかという距離だ。

 ベッドに押し倒されて抱き着いてきてたと思ったら、そんなことをマナが言い出した。何を言い出してきているんだ……?


 目をキラキラと輝かせながら、顔を寄せてくる。



「私もさ、恭介のおかげでやる気が出て来たからさー……。今から始めちゃおっか!」


「え、えっと……、服を脱いで何を始めるんでしたっけ……?」



 マナはイタズラっぽく笑った。そして、僕のワイシャツのボタンを一つづつ外していく。馬乗りされてしまっては、抵抗もできない。


「そりゃあさ、やる気が出たって言ってるんだから。することって言ったら一つじゃない?」


「いや、えっと……。わからないんですけども……? 服を脱ぐ……の?」


 マナは丁寧な手つきをしながらも、素早くボタンを外していく。今から楽しい時間が始まるんだというような、すごくウキウキした顔をしている。

 僕は抵抗もできず、シャツのボタンをすべて外されてしまった。



「そうしたらさ、下も脱ごうねー?」


 マナはそう言いながら、ズボンのベルトに手をかける。


 これって、やっぱりマズイのではないだろうか。不純異性交遊というものではないだろうか……。

 さっきは、「全部上手くいったら付き合おう」って言ってたばかりなのに、順序が違うのではないだろうか……。


 スルスルとベルトを取ってしまうと、慣れた手つきでチャックをズズーっと下ろしていく。もうダメだと思い、マナの手を制止する。



「マナっ! そういうことをするのは、ちゃんと付き合ってからにしようっ! マナのこと真剣に考えてるからっ!」



 マナを少し突き飛ばす形で体勢を起こす。マナはベッドの上でよろけてしまう。その隙に、脱がされかけていたズボンを少し上げる。


「さっき、全部上手く行ったら付き合おうって言ったばかりじゃん! だからさ、そういうのはさ、ちゃんと付き合ったらったら……、しよう……」



 男らしくキッパリと断っておきたかったけど、語尾に自信の無さが出てしまった。マナがそんなに僕のことを求めていたなんて嬉しいけども、少し恥ずかしいし……。


 マナは、驚きながら目をパチパチとさせている。が、すぐに嬉しそうな顔に変わった。



「なになに? なんか嬉しいこと言ってもらえたんだけど! 私のこと真剣に考えてくれてるってこと?」


 今キッパリ断ったばかりなのに、はだけている状態の僕に抱き着いてくるマナ。またベッドに押し倒されてしまった。


「けど、恭介。勘違いしているよ?」


「……うん? 勘違いって?」



「やる気が出たから、今からちゃんの撮影をしようってことだよっ!」


「……あっ! そういうこと……?」



 マナは起き上がって、ベッドから立ち上がった。高い所から僕のことを見下ろしてくるように言う。



「そうだよ、全員助けるんでしょ? 恭介のことも助けないとだよ?」


「そ、そうか。僕も動画撮影しないとだったっけ……。自分のこと忘れていたや……」



 マナはうんうんと頷くと、今度は自分の制服シャツのボタンを外しだした。


「借金背負いながら、闇社会でご奉仕してもらっても良いけどね。そうなったら私がお客さんとして行ってあげるよ。ふふっ」


「い、いや。大丈夫です。動画撮影しようっ! ……けど、なんでマナが脱ぐの?」


 ニコッと笑うマナ。



「私も協力するからさっ!」




 ◇




「初めまして。マナって言います。こちらが恭子ちゃん!」


 僕はカメラに向かって、お辞儀をする。マナから着させられた女子の制服を着ている。少し化粧もしてもらったけれども、バレないだろうか……。

 僕はうつむいて、なるべく顔が見えないようにする。


 マナはというと、僕の着ていた制服を着ている。最近の女子は、ズボンを履く子もいるという謎情報により、これで良いらしい。



「それでは早速、ゲーム実況をしていこうと思います! 今日のゲームはこちらっ!」


 マナは、テレビ画面に映し出されているFPSゲームを見せる。これは、僕がYoutuber活動をしようとした時にやっていたゲームだ。これを使って実況動画を作るらしい。

 後で動画編集して、ゲームの動画を取り込むのだろう。



「恭子ちゃん、すっごく上手いから見ていてねっ!」


 そうは言っても、あまり上手くないから人気が出なかったというのに、今また同じことをやっても人気が出ないんじゃ……。


「私も補助で入ってやってみまーす! 早速、最高ランクで対戦してみよー! レッツゴー!」



 そう言いながら、ゲームを始める。こんな難易度のランクじゃ、ボコボコにやられて終わってしまうんじゃないだろうか……。


 そんなことを思っていたら、開始直後マナは敵軍に突っ込んでいく。

 ヤケクソになって、すぐやられてしまうんじゃないかと思っていると、敵がどんどん倒されていくようだった。


「あっ、恭介。私、このゲーム上手いから任せてねっ! あとで、私と恭子ちゃんの画面差し替えるからっ!」



 そう言っている間に敵を殲滅してしまい、画面には『WIN』の文字が表示されていた。

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