第34話
言われた通り、高橋先生の胸の谷間に挟まってみている。こんなに柔らかな感触に挟まれたことなんて、生まれてこのかた味わったことが無い。
ぷよぷよした柔らかさが気持ちが良いというよりも、とても息苦しい。これになんの効果があるのか分からないし。これでいいのか……?
「あ、あの……。やっぱり、なにか違いますよね……?」
高橋先生の胸の谷間から起き上がって聞いてみる。すると、高橋先生は「もう止めちゃうの?」と言いたそうな顔をして返事をしてくる。
「だいじょーぶだよ、たぶん? なんとなく、気持ち良くなってる気がするよ。こう、身体が熱くなるっていうかねっ! 血行良くなってる気がするよー?」
「ほらほらー。千尋先生もそう言ってますし、続きしましょ?」
起き上がった僕を篠原先生が抱きしめてくる。僕は相変わらず篠原先生にマッサージをされている気がするけれども。なんでなのかはよくわからない。なんでか、僕の下半身の血行ばかり良くなっている気がする……。
「ほらほらー、もういっかーい!」
篠原先生に押されて、高橋先生の胸の間へと埋められる。なんか絶対違う気もするけれども、僕の考えが及ばないところでマッサージは成功しているのかもしれない。
やり方はどうであろうと、気持ち良くなっていれば大丈夫なはず。それが目的の第一歩だったから。もしかしたら、今なら聞き出せるのかもしれない……。
慎重に聞いてみよう……。
「あ、あの。高橋先生に、少し聞いてみたいことがあるんですけれども……」
「んー、なになに? 答えても良いけど、もうちょっとマッサージしてよ?」
「はいっ!」
……よし、もう少しだ。
タイミングを間違うと警戒されて答えてくれなくなる可能性が高い。そうならないように細心の注意を払わないと。もう少し、高橋先生を気持ち良くしないと。揉んで揉んで揉んで……。
「んっ、んー……。激しいのも、良いよ……。気持ち良い……」
「はいっ!」
「恭介くん。周りだけじゃなくて、中心もツンツンってしてみてね! 場所分からなかったら直に見てもいいからね!」
「は、はいっ? とりあえず中心をツンツン……」
「ん、んっ……!」
うん。僕には分からないけれどと。多分、そろそろ良い感じだ!
もう少し、トドメに、何か……。これっていうものがあれば。確実に聞き出すために……。
後ろから篠原先生が囁いてくる。
「そろそろ、唇も奪ってみちゃいなよ?」
「え、えっと……? それが、必要なんですか……?」
「もちろん。キスされて嬉しくない人はいないよ。今だよ、今!」
「けど、僕。ファーストキスなわけで……。えっとー……」
篠原先生のアドバイスは的確だったけれども。ここでキスすべきなのか。いや、そこまでしなくても聞き出せるだけマッサージはしたはずだと思う。
けどけど……。
「もう少しだから。ほらーーっ!!」
篠原先生に押されて、高橋先生に抱きつく形で倒される。咄嗟に唇が触れるのは避けて、高橋先生の顔の隣に不時着した。高橋先生は、もう十分気持ち良くなってもらったはず。
高橋先生は、うっとりした顔で僕の方を見つめてくる。多分、今なら聞ける……!
「あ、あの……、高橋先生。生徒にYouTuberになるの勧めてますよね?」
「んー……? そうだけどぉ?」
「単刀直入に聞きます。チャンネル開設用にもらったお金はどうしてますか?!」
「それはもちろん、チャンネル開設費用に使ってるよ?」
「えっ……? えっと? チャンネル開設には費用が要らないと思うんですけれども……?」
「えーっ……? あたしもチャンネル開設する時お金掛かったし。あれ、詩織ちゃんもだよね?」
高橋先生は、篠原先生の方へと顔を向けて聞く。篠原先生も楽しそうにしたまま答えてくれる。
「そうですよ? チャンネル開設するための業者さんに頼んで、それで出来るものって私と千尋先生もしてましたよ?」
「あれ、もしかして。恭介くんもYouTuberやりたいの?」
「え、いや、えっと……」
二人の先生から、期待の眼差しで見つめられている気がする。まったくの予想外の流れなのだけれども、お金の流れを調査するには願ってもない方法なのかもしれない……。
「そのお話、詳しくさせて頂きたいです!」
僕がそう答えると、二人の先生は嬉しそうに僕のことをギュッと抱きしめてきた。
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