第32話
「んーー! いぃー……。気持ちいい……。もっと強く、指を押し込んで……」
「は、は、はい!」
保健室の奥のベットに寝そべる高橋先生。カーテンを閉めて周りから見えないようにしている。僕は、先生の横に立って背中の辺りに親指を押し込んでみている。
とりあえず、精一杯やるしかない。それが僕に与えられた使命。
「気持ちいいー……」
「ごくりっ……」
満足そうに吐息を漏らす高橋先生。その姿を見て保健室の篠原先生の喉がなる。
チラリと篠原先生を見ると、頬を赤らめているようだった。保健室でこんなことをして、怒っているのかと思いきや、何かを期待する眼差しでずっと見つめてくる。
そういえば、篠原先生がいるなんて予定に入れてなかった。予定に無いことの対応は難しいんだよな……。
とりあえず予定通りマッサージの基本を習ったので、その通りにやってみる。
「んん……。いいよー……。自分で言うだけあって、すごく上手いじゃん……」
「はい。高橋先生を癒そうと、頑張って身に付けてきました!」
背中だといっても、やはり女性の身体を触るというのはドキドキしてしまう。こっていると言っても女性特有の柔らかな皮膚に守られているわけで、女性らしさを感じてしまう。
けど、高橋先生を気持ち良くさせて、口を割らせるという使命が僕にはある。どうして借金を背負わせてまでYouTuberをさせているのかを聞き出さないと。
もう少し気持ち良くさせて、肩こりがほぐれてきた辺りにそれとなく聞こう。もう少し強く続けて……。
そう思って、マッサージを続けていると、篠原先生が声をかけてきた。
「あ、あの……。なかなか進まないようですけれども、いつになったら過激になっていくんですか……?」
「……はい?」
篠原先生は顔を赤らめながらも、しっかりと見てくれているようだった。マッサージの仕方はマナに習っただけだから、保健室の先生の方が良いアドバイスをしてくれるかもしれない。篠原先生が少し手を出してくる。
「こう、もう少し下半身側を攻めないと、気持ち良くならないのかなって……。上半身は、そのくらいでいいかもじゃないですか?」
「えっと……? そういうものなんですか……?」
「あの、私だったら……。えっと、そうです。……恥ずかしいですけども、やっぱり下半身の方に注力した方が良いです」
「分かりました。やってみます!」
篠原先生に促されるまま、ふくらはぎの方から揉んでみる。きっと、これで聞き出せるくらい気持ち良くなるはずだ。篠原先生が見ていてくれて助かったかもしれない。
「高橋先生、どうですか? 気持ち良いですか?」
「んー……? なんか違うかなー?」
高橋先生からは否定されてしまったようだが、篠原先生は僕を見つめて首を振る。
「恭介くん、焦らないで大丈夫。女性はそういうものだから、根気よく続けていくの」
「は、はぁ……。分かりました、やってみます」
「力を入れすぎないの。スーッと縁をなぞるように指を沿わせて……」
「こ、こうですか?」
「違う違う。もっと力を抜いてね……。まだ経験が少ないのかな? 一緒にやってあげるね……」
下手な僕の手さばきに見かねた篠原先生は、僕の後ろに回り込むと包み込むようにピタッと僕にくっつく。柔らかな感触を背中に感じる。そして耳元で、囁くように僕に言う。
「先生に任せてごらん……?」
篠原先生は僕の耳を攻めてくるようだった。
それによって強制的に力を抜かせてくる。篠原先生は僕の手を握り、スーッと高橋先生の足の付け根へと指を滑らせる。
「こうやってね、段々と身体の中心部へ指を動かすの。身体の神経がもっとも集まる所に向けて集めてあげるようなイメージね」
「は、はいっ」
「お尻の方を攻めるのはもう少し待っててね。足の側面からスーッと集めて、集めて……」
「お、お尻……? それが必要なんです……?」
やられている高橋先生は気持ち良いのか、くねくねと身体を動かしている。さすが、保健室の先生だ。マッサージというものを熟知しているようだ。
「もちろん必要だよ。そこから股の間へ……。ゆっくり、ゆっくり……。私に身体を預けてね……」
「はい……」
耐えきれず、高橋先生は動いた。
「あ、あぁん。……ちょっと、これなになに……?」
「大丈夫だよ、千尋先生。もうすぐ準備完了するから。そういえば、恭介くんの方の準備は大丈夫かな?」
篠原先生はそう言うと、僕の足の付け根へと手を滑らせてくる。
「……ひゃあっ!!」
「うん。恭介は、もう少し準備してあげる必要があるかもだね」
何の準備なのだか……。篠原先生に任せてて大丈夫なのか……?
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