第30話
「それでは、高橋先生の攻略を考えましょう!」
動画撮影が終了して、そのまま次の動画撮影ネタの打ち合わせに入った。マナが僕のパソコンを占領してメモの準備をする。
「高橋先生って言ったら、あれだよね。家庭科の先生の?」
「そうですーっ! なんだか今どきっぽい若い感じの先生です。二十代だと思います!」
「そうそう、私もちっひーにギャルのイロハを教えてもらったんだよ!」
「ただ、良い噂は聞かない。先生たちの中でも問題児扱いされている先生だったはず」
マナの質問に、それぞれ持っている情報を出し合う。僕はあまり高橋先生を知らないけれども、家庭科の授業で見せるやる気の無さは印象深かった。
先生とは思えない発言を授業中にすることもあった気がするし。休み時間には、男子に肩もませているのとかよく見るし。男子と喜びながらやってたけれども。
「なるほどねー。これからの動画に出演させようと思うんだよね、ある程度編集が必要そうかもだね。ギリギリの危うい発言とか多そうな気もするし……。それはそれで、好都合か……」
――カタカタ、カタカタ。
マナは、慣れた手つきでカタカタとキーボードを打っていく。なんだか仕事が出来る女子みたいで、少しカッコよく見える。これで眼鏡でも掛けててくれれば、ドキッとしちゃうかもしれないな……。
そんな風に眺めていると、マナはこちらを向いて聞いてきた。
「ねぇ? 恭介は、女性としてどう思う?」
「えっ、あっ、可愛いかもって……、今少し思っちゃった……」
僕の答えに、マナは眉をしかめた。少し不機嫌そうにキーボードを鳴らす。
「……高橋先生のこと可愛いと思うってこと? まぁ、一意見としてメモしておくけど、恭介ってやっぱりギャルが好きなの?」
「あ、あぁ……。高橋先生の事か。なんか勘違いしちゃってた、ごめんごめん。高橋先生は、男子ウケはしてると思うよ。僕は会話に混じらないけど、隣の男子グループがたまにそういう話をしてるよ」
マナに対して慌てて取り繕うが、マナには響かないようで首を捻っていた。
「へぇー。あんな気の抜けた先生が良いんだ? 歳上だったら、お姉さんっぽいところが良いとか思わないのかな?」
「えっとね、あの無防備な感じが良いらしいよ? 肩揉ませられたと思ったら、二の腕まで揉まされて嬉しかったとか? 腰まで揉ませられてドギマギしたとか」
変な受け答えをしてしまったため、なんとか取り返そうと持てるだけの情報を出してみた。すると、マナはニコッとしながらキーボードを打ち始めた。
「へぇーー。そういうのもあるんだー? それはもしかしたら、動画映えするのかもねー。高橋先生をマッサージ……」
――カタカタ。
なんだか、マナに要らない情報を与えてしまったかもしれない。マナのニヤニヤ顔が、段々と魔性味を帯びてきている気がする。
「ねぇ、ミクさん? マッサージをしているだけであれば、垢BANはしないと思わないですか?」
「それは、その通り。ただのマッサージ動画は良くある。かなり人気動画のジャンル」
「だよね。しかもさ、気持ち良くなれば口も軽くなると思わない?」
「うん。人間は気持ち良くなると無意識の部分が解放されて、話し出す。お酒とかと通じるところはある」
ミクも、表情は変えないまでも、口数が多くなっている気がする?
この流れは、少々不味い気もする……。
「高橋先生は、男子にマッサージを頼むことが多いんだよね。そういう先生だし。つまり、次の動画でやる企画が決まったかもしれない」
「うん。私もそれで良いと思う」
マナとミクは、僕にキラキラした眼差しを見せてくる。僕も勘は悪くない方だと思うから、思っている通りの依頼が来るのだろう……。
「次の動画は、高橋先生を攻略して、お金を巻き取ったことを追求することをします。攻略方法はズバリ、マッサージ!」
「恭介くんが、一人で高橋先生を訪ねてマッサージをする。隠しカメラを忍ばせて」
マナとミクにそう言われながら、肩を叩かれた。
「二人の借金問題が、解決するなら安いもんでしょ! 潜入捜査動画、頑張って来てね!」
「期待してる!」
「……はい。頑張ります」
かくして、僕は高橋先生のマッサージをすることになりました。本当にやるのかぁ……、どうしよう……。
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