第24話

「女子の考えていることが分からない? それを俺に相談するのか?」


 昼休みになると、屋上の手前にある階段の踊り場部分に雄太郎を呼び出した。教室にいると、マナやリサが寄ってきたりするので場所を変えたのだ。


「それも、わざわざこんなところに呼び出すなんて……」

「どうしても二人きりになりたかったんだよ。相談できるのが、雄太郎しかいないんだ」


 雄太郎は疑う眼差しを向けていたが、僕の真剣な表情を見ると、向き合ってくれた。


「そうなのか? それだったら俺がしっかり聞いてやるよ!」


 雄太郎は、見た目こそ金髪でチャラく見えるが、中身はとても真面目で優しいやつだ。一番頼りにしているし、頼りになるやつだ。


 僕は、昨日の生徒指導の件と、その後にヒナのエッチな動画を撮らされた話をした。



「またお前……。エッチな神様でも取り憑いてるのか? 初対面な女子のエッチな動画を撮影するなんて、自慢話にしか聞こえないぞ?」


「ち、違うよ! 真面目な相談だよ。なんで僕にエッチな動画撮らせると思う?」



「そりゃあ……、女子のみぞ知るってとこだな。女子って好きなやつに見られると、綺麗になるって言うし。綺麗に撮られたかったか、もしくは見られて興奮するっていうのも言うし。もしかして

 、それなんじゃね?」

「そもそも、僕が好かれてるわけないじゃん……!」




「あはは。母性本能ってやつかもな。恭介って小さくて可愛いし」

「真面目に相談してるんだよっ!」


 僕が真面目な顔で言い返すと、雄太郎も笑うのをやめて、また真剣な顔に戻ってくれる。……男の僕が言うのもおかしいけど、雄太郎はイケメンだ。こんなに見つめあっていると、雄太郎にも「動画を撮れ」と、迫られてしまうんじゃないかと勘ぐってしまう。


 雄太郎は、少し考えると答えてくれた。


「ヒナってやつは、よく分からないけど。嘘ついてないと思うぞ。恭介、人を見る目はあるし」


「そうかな? ヒナは考えてることが読めないんだよ……。他の人も分からないけどさ……」



「ヒナは自分から答えを言ってたから、その通りだろ。他の奴らにも直接聞いてみろよ。『エッチな動画を撮って欲しいのは、なんで?』って」


「なるほど……?」



「あっちからのアプローチに遠慮してると、相手の気持ちなんて、すぐにどっか行っちゃうぞ?」


「……と、言いますと?」



「言葉の通りだが?」


 雄太郎は余裕そうな顔をして言ってくる。モテる男の余裕というやつかもしれない。けど、言葉の通りって言うと、みんな僕の事を……?

 雄太郎は確信をついてくる。


「好きな相手じゃなけりゃ、エッチな動画なんて撮ってもらわないだろ。女子友達だっているだろうし、その友達に撮ってもらうだろ、普通?」


「……確かにそうなのかもしれないけど。……マジですか?」



「あぁ。俺はそう思う」


 雄太郎はふざけているわけでも無い。真剣に相談した時は、きちんと返してくれる。そして、雄太郎の恋愛経験の豊富さから導かれた答えだ。というと、本当かも知れない……。


「もし、そうだとしたら、僕は誰かを選ばないといけないのでは……? みんなが僕を好きになってくれてるっていうことなの……?」


 雄太郎はうんと頷きつつ、答える。


「けどまぁ。撮りたいなら、みんな撮ればいいじゃん?」


「……う、うん」


 雄太郎に相談したおかげで、分からなかったことの答えが分かったきもするが、他の問題が出てきてしまった気がする……。


 これからどんな顔をして、動画撮影に協力すればいいんだろう……。

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