第20話
「恭介くん! 昨日は楽しかったですね!」
あんなに過激なことがあったというのに、リサは楽しそうに言ってくる。
「僕は疲労困憊ですよ……。あの勝負のあと、リサさんは満足そうな顔して帰っていきましたけど、僕は大変だったんですよ? 零したチューペット液を拭いたり、僕の汚れた服を処理したり……。ミクさんは『すぐに編集しよう』って言って、ストイックだし……。結局、終電まで編集作業してたし……」
「ミクは、そういうところあるよね。はは……」
「けどさ、そのおかげで昨日の動画は、結構伸びてるよね! 今までで一番じゃない?」
マナはスマホを両手に持って、昨日の動画を確認しているようだった。自分がどう映っているかをチェックしているようで、恥ずかしい部分があったら容赦なく削除申請するつもりだろう。今のところは大丈夫みたいだ。
僕たちは、昼休みになると屋上へと続く階段に集まるようになっていた。お弁当を持ち寄って、ミーティングを行おうと言うのがミクの提案だった。時間が無いと言ってたから、急ピッチで進めようということらしい。
「まだまだ。私が入って一回目。もっとこういう系の動画撮ろう」
ミクという強力なメンバーも加入した。
みんなで協力し合って、リサのチャンネルを収益化を目指そうということだったけど、なんでそんなに収益化に拘るんだろうか。冬までに収益化しないと、退学っていうのも謎だし……。
「早くバズると良いなー!」
リサは能天気そうな声を出して、僕のスマホを覗いて来る。毎回毎回、自分で確認すれば良いと思うのだけれども、僕に確認してくるのは不思議だ。通信容量の上限か何かなのかな。学校ではWi-Fi飛んでないし。
順調に進んでいるため、のんびりした昼休みの空気が流れている。
……が、ミクが空気を壊して話始める。
「それじゃあ、次の動画考えよう。作戦会議。ブレスト開始。指名します。まずはマナさん」
「はぁ? いきなり? えっとー……。夏らしく海に行くのとか、どう?」
「水着攻め、飽きられます。次、恭介くん」
「え……、えっとー? セクシー路線は外すってことかな。うーん、歌ってみるのとか、どうですか?」
「リサは音痴。ダメ。次、リサ」
「うーん、デート動画の続きとかどうですか? あれ楽しかったですよ! 遊園地とかなら許可取りやすそう!」
「うん。みんなそれぞれ良い。けど、いまいちパンチに欠ける。私の案としては、リサにバンジージャンプとかさせるのが良いかな……」
それぞれの案が出そろったが、どれもしっくりこないと一同首を捻る。誰も実績が無いから、全部手探りでやっていかないといけないところが、難しい所だ。
ミクもプロデュースしていたと言っても、こんな風に意見だしの手伝いをしていただけらしい。
「どうすれば人気が出るなんて、良くわからないけれども。過激路線は危ない気がするんだけどね……。僕の身体が持たないし……」
次の動画が決まらないと、セクシー路線に戻ってきてしまう気がする。それだけは、僕は避けたかった。どう考えても、身体が持たないよ……。
昼休み時間は刻々と過ぎていくが、なかなか良い案が出ない。
その時、足音が聞こえて来た。
「あ、いたいた! リサさん、だよね?」
そう言って現れたのは、小麦色に日焼けした女の子だ。髪は金髪。スカートを極限まで短くして履いている。見るからにギャルという風貌だ。
「あははは、動画の人みんないるー、ウケる! 面白いことやってますよね、動画見ましたよー!」
「どうも、見てくれてありがとう……でいいのかな? けど、どちらさまでしたっけ?」
「あーしのこと知らない? 同じYoutuberとして活動している先輩なのになー?」
「そうなんですね? 私、最近Youtubeとか見れなくって。ごめんなさい」
「いーよ、いーよ。それよりさ、面白いことやってるの気になってさっ!」
黒ギャルは、そう言いながら階段を上ってくる。そして、スムーズな動作で僕たちの前に来て、右手を差し出してきた。
「あーしと、コラボ動画撮ってよ! そしたら、ぜったいバズるからさっ!」
ニコニコと楽しそうに笑う黒ギャル。
新しい風が吹き込む気がするけれども、これでバズるのかな……?
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