第17話
「垢BANされない、ギリギリを目指すんですよね」
「ミクさんだっけ? 分かってるじゃん。昔YouTuberとかやってたの?」
「いえ、私は裏方専門です。プロデュースの方を少々……」
「へぇー! これは中々な逸材が見つかったかもだね!」
下着屋でたまたま会ったミク。マナと話が合うみたいで、帰りの道でずっと話していた。ミクは大人しめに見えるけれども、意外とやり手なのかな……?
楽しそうにYouTubeのチャンネル登録数の増やし方の話をしていた。「エッチな動画を投稿するだけでは限界がある」とか、「男は出さない方が良い」とか。
盛り上がっているのに水を差すのも申し訳ないと思い、僕はリサと手を繋いで歩を進めていた。なんでなのか、リサの方から手を繋いでくるから僕は断れずに繋いでいた。
「恭介くん、今日もいっぱい撮って下さいね! 新しく買った下着を撮って欲しいですっ!」
「は、はいっ!」
◇
自然な流れで僕の家へと帰宅した。……というよりも、マナとミクを先頭にして、僕とリサが連れられて帰宅した。なぜマナとミクの方が乗り気なのかはよく分からない。
「遠慮せずに入ってー!」
「お邪魔します……」
そう言いながら、マナはミクのことを僕の家に招き入れた。もはや、誰の家なんだか……。
それにしても、リサの「一緒に動画撮らない?」という発言を色々考えてみていたけれども、話を聞く限りミクは裏方なわけだ。まさか、ミクの下着姿なんて撮るわけもない。一緒にカメラ係をやってくれるということだろう。
僕の部屋に入ると、ミクの方から僕に話しかけてきた。
「私も協力するから。任せて」
「あ、ありがとう」
「ただ、やり方を少し変えていきたい。マナさんに話を聞く限り、今の進め方ではいつまでもバズりません」
「そうなんですか……?」
段々とミクの言葉がキツくなっていくのを感じた。
「言っちゃ悪いけど、今やってるのはただの遊びと変わらない。恭介くんとマナさんがイチャイチャ遊んでるだけで終わりです」
「は、はい? い、イチャイチャなんてしてないですよ!?」
「遊んでる時間は無いし。早くバズらないと」
「……ん、早くしないとって、どういうこと?」
「冬までが期限。早くバズらせて、チャンネル収益化しないと、リサは退学になっちゃ……」
そこまで言うと、リサが「言わないでーーっ!!」と止めてきた。けれども、僕とマナの耳には既に聞こえていた。
「リサさん、退学になっちゃうんですか……? そんな大事な話、今までされなかったですけれど……」
「……うん」
リサのことを問い詰める形になってしまったようだ。リサは俯いて、元気なさそうに答えるところを見ると、どうやら本当のことらしい。
どういう事なのか深く聞きたいところもあるが、今の状態のリサは答えてくれないだろう。それよりも、今の話が本当だとしたら遊んでる場合じゃないというのは、その通りかもしれない。
ミクは、真面目なトーンで場を仕切り始めた。
「詳しくは、リサが言いたくなったら聞いて。今日久しぶりに会ってみて、リサがやる気なのが分かったから、私も全力で協力したい」
「……う、うん。今の話を聞く限り、協力してもらえるとすごく助かります!」
僕が答えると、ミクは少し微笑んで頷く。
「今までのやり方をマナさんに聞いていたけれども、それだとバズるのには時間がかかり過ぎると思った。もっと攻めないと、間に合わない」
「そ、そうだとしたら、ミクさんはどうするのが良いと思いますか?」
マナは何か言い返したそうな顔をしていたが、マナ自身もバズらないだろうことは分かっていたのかもしれない。本当に僕とイチャイチャするために長引かせるやり方をしていたのかは、謎だけども……。
ミクは話を続ける。
「今の状態だと『企画』が無い。特徴の無いエッチな動画を垂れ流してるだけになってる。それだと、他の動画に埋もれるだけ。またこの人の動画を見ようっていうリピートは無い」
「なるほど……、企画……。YouTuberって、色々楽しいことを考えて実際にやってみてますよね。『実験企画』とか、『ガチンコ勝負』とかってことですよね?」
僕の回答に、ミクは指を指して頷く。
「その通り、大正解。手に汗握る勝負をして、演者の人間性を見せる。それと同時にエッチを全面に出す」
マナもリサも僕も、ミクの話に聞き入ってしまった。
「夏らしく、凍らせたチューペットの早食い競争をします。コスチュームは、今日買った下着姿。身体と舌の熱だけで、いかに早く食べるかを競います。叩いたり、歯を立てるのはNG。優しく舐め上げて下さい。私も対決に加わります」
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