第15話
放課後になると、リサとマナと一緒に校舎を出る。もちろん僕は、ビデオカメラを片手に持ちながら。公共の場を歩く時はカメラを止めようと思うけれども、学校の敷地内ならまだ平気だろう。
「恭介、ちゃんと動画撮る準備できてる? 今から買い物デートに行くんだから、気合い入れてよねっ!」
「そうですよ、恭介くん! これは、デートなんですよ? 楽しそうに撮ってくださいね!」
女子という生き物は、買い物をすると言うとすごく元気になるらしい。今にもステップを踏み出しそうなくらい陽気に歩く二人。それを映像に収めることができた。
校門を出るところまでは試し撮りをしようとカメラを構え続けていると、終いには二人で手を繋いで歩き出した。
リサとマナは、なんだか仲良くなったらしい。出会った当時は、マナが反抗的なことを言っていたと思ったけれども。女子同士だと分か合うのが早いのだろう。マナは友達が少ないと思っていたけれども、ちゃんと友達が作れるんだな。
そんな様子を撮るのも良いかもしれない。繋いでいる手にズームアップしていくと、マナの腕に血管が浮き出ているのが見えるけど、気のせいかな……?
「リサさんは、今日は見てるだけですよ? 私の『勝負下着』を選ぶんですからね?」
「そうなんですかー? 三人でデートなんで、みんなの分の下着を買いましょうよー!」
「絶対リサさんのは買わないからね! 絶対ダメ! アウトだからっ!!」
「私が下着を着る前から、何を言ってるんですか? まさか、私がエッチな下着を選ぶとでも思ってるんですか? もうもうー!」
「うっさいわ、この痴女っ!! どんな下着だろうと、絶対選ばせないし! 裸映してBANでもされてろっ!!」
「あぁー……? なるほど、なるほど? マナさん、ナイスアイディアですね! 下着をつけないで、『手ブラ』っていう選択肢もありかもですね! 天才マナちゃん!」
僕は、『メンチを切る』というのを初めて見たかもしれない……。マナが下から見上げる形で、リサにメンチを切った。マナの美少女顔が般若のようになっている。と、とりあえず映像に収めておけばいいのかな……?
二人は今にもキスしてしまいそうな距離まで顔を寄せている。リサは目を瞑った。思わぬキス顔に、僕はドキッとした。
それはマナも同じようだった。緊張しているようでドギマギしだした。
「今度、『キス顔』を撮る回も考えておこうかな。これは再生数稼げそうな気がした……」
「マナさんまだですか? 私はいつでも準備ばっちりですよ……?」
「ばか、痴女! それは、今日はしないの! 前見て歩いてつ!」
「はーい」
あのマナもたじたじになってしまうなんて、リサの天然ぶりはすごいな……。僕も気を付けなきゃだな……。
そう思いながら、僕も後ろを付いて行った。
◇
お目当ての下着屋さんに着くころには、なぜだか僕はリサとマナに手を握られる形になっていた。
「デートですから、手を繋ぎますよねっ!」
「いや、だからさ、『デート回』っていうだけなの。YouTubeの演出的に、デートをしている風を装った動画にするっていうだけなのっ! 本当のデートをするわけじゃないのっ!!」
「えー? けど、マナちゃんも恭介くんと手を繋いでいるじゃないですか?」
「それは、あんたが恭介の手を離さないからでしょ! 私の恭介を取るなし!!」
「恭介くんは、みんなの恭介くんですよ? カメラマンを独り占めしようっていったって、そうはいかないですからね!」
「恭介はカメラマンだけど、カメラマンじゃないんだよーーっ! 今日は私の回なのっ!!」
両手を取られていたら、映像は撮れないわけで。僕はただ、二人の美少女に手を繋がれて下着屋さんを歩く男子になっている。
リサが僕の手をグイッと引っ張る。
「恭介くんは、どんな下着が好きですか? 最初見せたみたいな、赤い下着が良いですかぁ? スケスケのやつ! 似てるのありますよ、これって良くないですか?」
「そ、そ、そうだね。ほぼ透けてて、とても刺激的です……」
リサが見せてくるのは、ほぼ透けてるブラジャーだ。向こう側が丸見え。
今度は、マナが手をグイッと引いてくる。
「恭介! こっちも見てよ! やっぱり可愛いのが良いでしょ? 色が大事じゃないかな? リサさんには似合わないパステルカラーとか良いと思わない? 私にはピッタリだよ!」
「う、うん。マナのブラジャーとか想像できないけども。色は可愛いと思うよ」
マナは嬉しそうに笑っていた。何だか見たことないような、上目遣いでうっとりした顔をこちらに見せてくる。
「……うーん。とりあえず映像を撮らないといけないんじゃないかな?」
そう言うと、マナは真っすぐ透き通った眼差しをこちらに向けて来た。
「ここじゃ撮れないから、恭介の家で試着しながら、撮りましょう!!」
「マナちゃん、それはナイスアイディアです! 恭介くんの家なら、いくら見せても大丈夫ですね!!」
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