第9話
「おっ、恭介。今日も目が充血してるぞ? 昨日と同じくらいになってるってことは、またエッチな動画でも見てたのか?」
「うん……。半分強制なんだけどね。なんで僕は見せられてるんだろうって思いながら頑張ったよ……」
昨日の夜、動画編集が終わったあとは気絶するように眠ってしまった。結構寝たと思ったけれども、目の充血は治らないようだった。
「そうか、それは大変そうだな……」
「うん、労わってくれてありがとう」
僕にとっては、雄太郎だけが唯一の良心だ。少し涙が出てくるようで、優しさが目に染みる。
マナも話に加わってきた。
「お疲れ様だけどさ……。私が手伝ってあげるって言ったのに、一人で楽しんだりしてないよね?」
「うん。昨日は大丈夫だったよ。終わったらすぐ寝たよ」
「ん? 昨日は?」
マナが言葉の端に食いついて来た。
「いや、特に深い意味は無いよ。一昨日も特に何も無いから!」
「やっぱり怪しいなー……。何もしてないっていうなら、証拠が見たいよね。今日、家を見に行こうかな? ゴミ箱とか見ればわかると思うんだ? 恭介の頑張りの成果がさー?」
そんな話をしていると、教室のドアが開いた。
また朝から、リサが来たようだった。ニコニコと笑顔をこちらに向けてくる。
昨日と同じく教室には入って来ないようで、ドアのところから大声で話しかけてくる。
「恭介くーん! 今日は、恭介くんの家に行ってもいいですかー?」
「あ、あの……? いきなりですか……?」
元気よく大声で話してくるものだから、クラス中が僕に注目する。リサは構わず続けてくる。
「昨日も、すっっっごく頑張ってくれたと思うんです。私、それが見たいんです! 確認したら、その続きに進みましょ!」
「リサさん……。話の流れ的に、誤解されちゃいそうですよ。僕、頑張りましたけども……」
僕の回答に、リサは嬉しそうに小躍りしていた。
「じゃあ、放課後は昇降口に集合ね! 昨日の成果、いっぱい見せてね! いっぱいチエックするからね!」
それだけ言うと、リサは満足そうに帰って行った。教室の中は静まり返ってしまった。
雄太郎がおそるおそる聞いてきた。
「成果って……? 恭介、お前……? そういうプレイ……?」
「せっかく頑張ったから、僕の成果を見せてくるよ」
雄太郎は誤解してそうだけれども、説明が難しいのでそのままにさせてもらおう。心の中で雄太郎に謝った。
けど、投稿するためには、リサのチャンネル作ったりしなきゃだからね。それだけだったら、いかがわしい雰囲気にならないで済むだろうし。サッと終わらせてしまおう。
教室のドアの方から向きを変えて前に向き直すと、マナもニコニコして僕の方を見ていた。
「私も恭介の成果が見たいな?」
「マナの場合は、意味が違いそうだけども……?」
「どちらにしても、リサさんみたいな天然な子と家で二人きりになんてさせないから! 私も行くからっ!!」
◇
女の子が入るなんて考えてなかったし、昨日も一昨日も何も手につかなかったから掃除なんてしてなかった。散らかった部屋に入ると、早速マナが「掃除してあげる!」と言いながら、ゴミを漁り始めた。
マナのことは気にせずに、リサに動画チェックをしてもらうことにした。
「こんな感じに仕上げてみたけど、チェックお願いします」
動画を再生させると、リサは嬉しそうに眺めていた。なんだか、懐かしそうな遠い目をしている気もするけど。自分のことを食い入るようになんてみないか。
しばらく見るとリサが口を開いた。
「うんうん、良いですね、良いですね! ギリギリで編集してありますし、オッケーです!」
リサは楽しそうに最後まで見てくれた。うんうんと頷いてくれた。
「そうしたら、私のアカウントでログインするので、そこに投稿して欲しいです!」
ササッと慣れた手つきでログインすると、リサのチャンネルが表示された。
アカウント作成は一年前。高校入ってから作ったのだろうか、動画は投稿されていない。初めて作るのかもと思ったけれども、色々準備は出来ていたらしい。
そういえば、カメラにも動画が何個か入ってたし。それであれば、なにかしら投稿していてもおかしく無いんだけれどな……?
そう思いながらも、予め考えていた紹介文を入れて、サッと投稿してしまう。リサは、「お願いします!」と手を合わせて拝んでいた。
「これでバズらかなかったら、もう脱ぐしかないんです……」
なんでそんなに追い詰められているのかは分からないが、一生懸命に祈っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます