第8話

 パソコンの電源を入れて、SDカードを筐体の中へと入れる。画面にはフォルダーが映し出される。その中には、何個か動画が入っているようだった。

 リサの持っていたビデオカメラから引っこ抜いてきたSDカードだけれども、僕が撮った以外にも動画があるらしい。まさか自分一人でもエッチな動画を撮っていたのだろうか……?


 幸いにも、僕は今一人でいる。

 昔撮られたと思われる動画を再生してみたい気持ちが湧いてくるけれども、グッと堪える。マウスを握る手に力がこもる。プルプルと震える手を抑えながら、僕が撮った動画を探す。


 見つけた動画をデスクトップへとコピーしてくると、動画編集ソフトをダブルクリックする。砂時計マークが表示されて、なかなか起動されない。その間に、昔の動画を見てしまおうかと思っては踏みとどまった。


 この時間の間に、僕は一旦机の前を離れてコーヒーを入れることにした。



 今僕は、一人で自宅のパソコンで動画編集をしようとしている。

 動画編集をするためには、それ相応のソフトが必要になるのだが、学校にそんなものはあるはずもない。心当たりがあるのとすれば僕のパソコンの中だけということで、僕の家で編集しようという話となった。


 リサは僕の家まで来ると駄々をこねまくっていたけれども、「絶対ダメ」とマナがキッパリと断ってくれた。

 その代わりに、マナが僕の部屋に来て手伝うと言い出したけれども、それは僕が丁寧にお断りした。


 どちらが僕の部屋に上がり込むにしても、何をされるか分からないし。マナに至っては、どこから持ってきたのか『男性用貞操帯』みたいなパッケージの代物を出してきて、僕に付けるように言ってくるし……。

 あの二人は、間違いなくエッチだ。絶対に距離を置いた方が良いだろう。


 そんなことを考えていると、動画編集ソフトが起動した。先ほどコピーした動画をソフトに読み込ませる。


「うーん。二人を追い払えたのはいいけど、エッチな動画を編集するってどうすればいいんだろう……」



 とりあえず最初から動画を再生させてみると、ワイシャツを脱いだリサがディスプレイに映し出された。昨日は直に見ていたけれども、あらためてみるとやっぱり綺麗だ。


 昨日はあまり直視できなかったけれども、綺麗な胸の形をしている。赤色のブラジャーに気を取られてしまったけれども、上乳部分はブラジャーからはみ出しているようだ。柔らかそうな上乳は窮屈そうな顔をしながら、谷間を作っていた。

 直に見るよりも綺麗かもしれない。谷間部分を食い入るように見てしまう。


 しばらく見つめてしまう。アングルが変わったところで、我に返った。


「そ、そうだよ。見ている場合じゃないんだよ。編集しないとだな。けど、エッチな動画ってあまりわからないし……。参考に別の動画を見ながらにしようかな」


 隣に並べた画面に動画を映し出すと、どこかのグラビアアイドルがセクシーなポーズをとっていた。リサよりも年上のはずだけれども、並べてみるとリサの方が大人っぽく見える。


「まだ高校生だけど、成人向けって言っても通る気がする……」



 人気動画を横目に観察しながら、僕は編集を続ける。

 過激すぎると不適切な動画として削除されちゃうし、どこまでがセーフなのかな……。


「バズりたい」って言っても、学校の背景が映ってしまったら特定されるかもしれないし。そういうところは背景をぼかして対応するしかないかな。もしくは、こっちの動画みたいに、身体の部位をアップするっていう手もあるかも。


 画面の中のリサをズームアップにしてみる。良いカメラだからであろう、ズームしても鮮明に写されている。肉眼で見るよりも、くっきりと……。おへその形まで……。


 思わず僕は目を瞑る。



「見ちゃダメなところが多いよ、リサさん……」



 ◇



 そうこうしながら、どうにか編集して五分くらいの動画としてまとめた。

 色んな見せ場があったけれども、ワイシャツをはだけさせている部分と、スカートを捲り上げる部分をピックアップした動画となった。下着部分は、見えちゃいけないものが見えているらしいから、うっすら影が見えるくらいで動画を止めるように編集した。


 最終チェックとして確認していく。


 最後のシーンは、足元からアップにして縦パンしていく。カメラを固定して、左右に動かしていくことをパンと呼ぶけど、縦方向に動かすことを縦パンと呼ぶのだ。


「縦パン、パン、パン、パンツ……!」


 ギリギリ見えるくらいで止めたつもりが、見えてしまっていた。慌ててその部分はカットした。


 ……けど、パンパンパンツなんて。自分で言ってることに情けなくなった。相当疲れているに違いない。

 二日連続で、赤い下着を見せられて。闘牛だったら、頭から突っ込んでディスプレイを壊していることだろう。ひらひらと、レースが付いていて。

 男子は、本能的にこういうのが好きなのかもしれない。ひらひらしているところに注目してしまう。


「ダメだ、キリがないから終わりにしようっ!」


 リサの顔についても、上手い事映らないように加工出来てる。

 動画投稿をする際には、身元がバレてしまうのも危険だ。バズるって言っても、その辺りは考慮しないとだし。最悪、学校を退学するなんて言うこともあるかもしれないし……。


 そう考えていると、全部消せているのかが気になってしまった僕は、フレーム事にチェックして、顔と、肌と、見えてしまっている場所がないか、何度も何度も繰り返して視聴した。


 多分、僕の目玉には、またブラジャーが焼き付いていることだろう。けど、あとは投稿すれば良いだけだ。


「……あれ、そういえば、投稿する動画投稿チャンネルは、既にあるのかな?」

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