第42話 魔法が出来たー!

 友人三人には姫の解呪について当たり障りなく伝えた後、

 タマラさんに相手を任せ、カタリヌさんも置いて村の屋敷へ戻ってきた。

 何か友人が呼べばすぐ街の屋敷へ戻るつもりだが、帰るまでは大丈夫だろう。


(何せタマラさんに夢中だからね、特にお胸に)


 そして僕はというと、

 アンナさんナンスィーさん、

 ついでのおまけにゲンズブールさんに来て貰って魔法の修練である。


(村の村長がグザヴィエさん、街の町長がゲンズブールさんね、後者が爺ちゃんの弟子)


 まずはアンナさんが見てくれるようだ。


「……さあ御主人様、まずは杖を」

「とぉくべぇつにぃ~、ごよぉ~いし~ましたぁ~」

「あっ、眼鏡外しちゃったんだ」「ちょっとねむぅ~~~いですぅ~~~」


 ちょっとどころじゃなさそうだけれども、ナンスィーちゃん。


「あっ、これクリスタルの杖かな」

「そぉですぅ~~、がくぃんで、うらやましがられるかとぉ~~」

「次期領主様、魔法伝導に最も優れた杖のひとつですな」


 ゲンズブールさんもお墨付きだ。


「でもナンスィーさん、なんでこんなもの」

「つくりぃ~~ますぃ~たぁ~~~」

「ナンスィーちゃんが?!」「はいですぅ~~」


 アイテム袋だけじゃなく、

 こんなものまで作れるんだ!!


「御主人様……ではまずは……光魔法を」

「と、言われましても」

「まずはスパークの魔法から行きましょう」


 いまゲンズブールさんが言ったのは光属性の初期魔法だ、

 光の魔力を使って一瞬だけ光らせるという……


「ええっとじゃあ、『スパーク!』……あれ」

「御主人様は……おそらく何も考えていないように……お見受けします」

「もっとぉ~、たぃなぃのまりょくを~、ほ~しゅつするかんかくでぇ~~」


 イメージの問題か、よし!


(光れ光れ、光れ光れ光れ光れ光れ……えぇいっっ!)


「スパーク!!」


 おっ、杖の先から光がでた!!

 見ていた三人も安堵している。


「……良かった」

「でぇきまぁしたぁ~~」

「お見事です、次期領主様」


(魔法が、打てたーーー!!!)


 初歩の初歩だけれどもねっ!!


「これで、これで僕も『魔法が使えない』って、もう言えないね!!」


 初めての魔法、めっちゃ嬉しい!


「では次期領主様、もう一段階上の初期魔法『ライト』を」

「はい、今度は長く光らせるイメージですよねっ!」


 今度は空に向かって、えーーーい……!!


「ライト!!」


 パッ、と明るい光が!


「……素晴らしい、御主人様、素晴らしい」

「すっぅごぉ~~~い~~~!!」

「いやいや次期当主様、さすがに御座います」


(……あれ? 僕、ひょっとして馬鹿にされてる?!)


 いやいやいや、さすがにそれは被害妄想だろう、

 一応、褒めて伸ばそうとしてくれているんだろう、

 小説なんかでよくある『主人公くんすごーい』なハーレムを思い出すな。


(まあいいや、ここはおdてられておこう)


「それじゃあ次は」

「ついにぃ~、こ~げきまほぉ~でぇ~~~」

「御主人様……光の矢『アロー』の魔法です」


 うん、いつのまにか用意されていた的に向かって、

 あの◎の中心目がけて杖を……そして念じる!!


(光よ……僕の中の、光の魔力よ……矢になって、放てっ!!)


「アロー!!」


 びゅんっっ!!!


「あっ、当たった! ってうえっ?!」


 ボフッ!!


 光の山というより、

 雪玉みたいになってぶつかっていった!

 そして的は、当たってというより……ぶつかって、もがれた。


「御主人様……魔力は強かったようですが……荒い」

「みずぞくせぇの~~、すの~ぼ~るのおっきいのみたいでしたぁ~」

「次期領主様、もっと鋭利な矢を想像してみては」


 そうだね、では再び……


(とんだれとんがれとんがれとんがれ……とんがれえええええ!!!)


「アロー!!」


 ……うん、何も出てこない。


「これは……御主人様、おそらく……」

「まりょくぎれですねぇ~~~」

「いやはや、こんなに早く尽きるとは、次期領主様はまだ使えて初日ですゆえ」


 えええええぇぇぇぇぇ……


「僕の存在的な光魔力って、膨大だって聞いた覚えがるのだけれども!」

「……可能性がいくつか、まずは燃費が悪い、魔力を魔法に変換する効率が悪い……と」


 アンナさんの言葉の直後。

 スチャッち眼鏡をかけたナンスィーさん!


「数値にすると、通常は魔力5で撃てるアローが、ダルマシオ様では500くらいになったのかと!」

「なんでまたそんなことに」「わかりませんっ!」


 ゲンズブールさんも難しそうな表情だ。


「問題はこれが通常でなのか、経験を積むと軽減されるかですな」

「つまりそれって」

「先ほどのナンスィーの話で言えば、今後ずっと消費が500なのか、徐々に300、200、100と減って行くのか」


 うん、それは大きな問題だ。


「……そのあたりは、毎日の鍛錬で見極めましょう」

「はいアンナさん、それで魔力の回復方法は」

「一晩……寝る事」「えっ、じゃあ今日の魔法練習は、終わり?!」


 自然回復どこ行った。


「大丈夫……私の魔力、あげる……」

「うん、でもどうやって」

「……こうするの」


 そう言って僕の正面までやってきて……!!


「んぐっ?! んぐっぐぐぐ!!!」


 唇を重ねて、しっ、舌がああああ!!!


(まさかの方法きたあああああ!!」


 いやこれ、えぐい、えぐいってえええええ!!!


「……ぷはぁ」

「い、いきなり何を」


 腕でヨダレをぬぐう、もうっ、こんな所で……

 ナンスィーさんは、あっ、眼鏡を外してた!

 ゲンズブールさんは気を利かせて、あっちの方向を向いていた。


「これで……回復しています」

「ええっと……『スパークル!!』あっ」


 ホホォオオオオオ!!!

 

(光の束が、壁にいいい!!)


「ダークブロック……」


 屋敷の壁にぶつかろうかという瞬間、

 真っ黒な壁が地面から出現して防いでくれた!


「今の、アンナちゃん?!」

「……今のは、御主人様ですか」

「うん、『スパーク』のつもりがつい、『ル』が付いちゃった」


 スパークの上位攻撃魔法である。


「……魔力を分け与えすぎたようです」

「の~こ~でしたからねぇ~~」

「私は何も見ておりませんぞ、次期領主様」


 という感じで夕方まで魔法の練習、

 訓練をやりました、うん、これでもう無能じゃない……かな?


(少なくとも魔法に関してはねっ!!)


 学院へ行くまで、頑張ろう。

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