第39話 ベッドで待っていた自称セクシーお姉さん!

「あらいらっしゃいって、何を笑っているのよ!」

「いやドリーちゃん、何なんですかその全身、黒い紐だらけなのは」

「セクシーランジェリーを着けられるだけ着けたのよ、どうかしら?」


 いや、ティムした猫型モンスターが、

 ベッドの上で黒い紐でじゃれているうちに、

 こんがらがったみたいだ、うん、おもしろかわいい。


「せっかくお姉さんが悩殺してあげようと」

「いや、もう笑い死にしちゃう所でしたよ!」

「……これおそらく最高級品よ?」「ええ、例の宝箱のですよね」


 でも、いかに最高級な下着でも、

 猫がじゃれちゃあ、おしまいだ。


「んもう……」

「あっ、髪の毛が下ろしてある!」

「そうよ、よりセクシーになるようにね」


 普通ならそうなんだろうけど、うん、普通の成人女性なら。


(でもドリーちゃんの場合は、より少女っぽくなるな、少女人形みたい)


「ええっと、今日はそうやってベッドの上でゴロンゴロンして寝るんだね、

 じゃあ僕は街まで転移してあっちで寝るから、肩を冷やさないようにね、おやすみ!」

「……ダルちゃん、ねえ、それ本気で言っているなら、わんわん泣くわよ?」


 あっ、洒落になってない、二十二歳なのに!


「ごめんなさい、一緒に寝ます」

「まずはロマンティックに夜景を見ながら乾杯かしら?」

「ホットミルクで、ですか」「お酒臭いの嫌でしょ?」


 まあ確かに。


「ていうかドリーちゃんお酒いけるんだ」

「大好きよ、王都でどんなお酒が飲めるか楽しみだわ」

「それまでの準備をしっかりと……あ、今日は訓練の相手をありがとう」


 S級勇者の冒険者様に稽古だなんて、贅沢過ぎだ。


「そうめったに呼べないけれどね」

「お知り合いなんですね」

「そりゃあ同じ村に住んでいれば、ね」


 当たり前か、

 特にドリーちゃんの実家は食堂だし。


「王都へは、良い男も探しに行くんでしたっけ」

「そうよ、もちろんダルちゃんのお世話をしっかりやってね」

「……いいんですかそれで僕と一緒に今夜」「単なる夜伽よ」


 どこまでやるんだか、お子ちゃま(風)が。


「さあ、いっぱい甘えて良いわよ、セクシーお姉さんに」

「あっはい、じゃあまずは、乾杯」「はい、乾杯」


 ……うん、風呂上がりのキンキンに冷えたミルクも良いけど、

 寝る直前のホットミルクもなんていうか、心が落ち着くな、うん。


(しかもこっちは、おそらく蜂蜜入りだ)


 ドリーちゃんの方はお酒入りだったりして。


「さあどうしようかしら、早速セクシーモードを発動してもいーい?」

「えっと、パジャマ着ましょうか」

「なんでよ」「そっちの方が、その」


 可愛いくて良いですよ、と言っていいものやら。


「あっそうね、刺激が強すぎだったわね」

「着替えてきて下さい」

「あっちにあるのよ、みんなの」


 そう言って隣のメイド部屋へ行った、

 あそこって結局どういう使い方しているんだろう、

 僕が『お前とはお断りだ!!』とか言ったらクスンクスン泣きながら寝るのかな。


(まあ、メイドの物置でいいや)


「お・ま・た・せ」


 出てきたのはピンクの子供パジャマに身を包んだ……!!


「こ、これはっ!!」

「何よ」

「は、はん……」


 犯罪臭が、凄い!!

 とは言えないな、どう誤魔化そう。


「はん?」「はんぱなく、可愛いです!」

「んもう、私はセクシー売りよ?」

「誰が買うんですか誰が」「んもう!」


 あっ、プンプン怒ってる、かーわいーい。


「じゃ、添い寝してあげますよ」

「逆よ、逆!」

「とりあえずベッドへさあ、どうぞ」


 なんだか妹が出来たみたいで、くすぐったいな。


「……ダルちゃん」

「はいドリーちゃん」

「ここへ来るまで、寂しく無かった?」


 まあ、寂しくなかったかと言われれば、

 ダクスヌールに来てからはメイドお婆ちゃん達が居てくれて賑やかだった、

 でも肉親が側に居ないっていう意味では、まあ。


「ウチの場合は両親がアレですから」

「アレって?」

「やたら厳しい父上と、その父に気に入られる事しか考えてない母上」


 実の娘や息子にも塩対応だったため、

 僕にとっての本当の『肉親』は姉上とひい爺ちゃんだけだった。


「……じゃあ肌を合わせられる相手は、もう」

「今更、姉上は……その代わりがメイド婚約者なのかと」

「安心して、もう私達が居るから、家族と思って貰って良いから」


 きゅっ、と抱きしめてくれる。


「……本当に?」

「ええ、だから私の事を、あ」「妹と思って良いんですかー?!」

「もーう、このこのこの」「ひ、ひぃ、ほっぺひゃ、ひっぱらにゃいひぇ」


 しかも両手で左右同時に!


「本当に、みんなどうしてここまで」

「生涯尽くすメイドだからよ」

「でも王都で男を引っ掛ける予定なんですよね?」


 少女趣味が引っかかりそう。


「それはそれ、ダルちゃんはダルちゃんよ」

「ま、まあ、ドリーちゃんが良いならば」

「じゃあ疲れて眠くなるまで、女性の扱い方を教えてあげるわ、いーい?」


 そう言って色々とセクシーぶっていたドリーちゃんは、

 僕に本当に色々と、その身体で『たっぷり』教えてくれたのであった。


(ほっ、ほんとに、本当に初めてなのサンドリーヌさああああん!!!)

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