第38話 こんなお風呂メイドの組み合わせ!
「どうだ御主人様、痛くないか」
「あっはい、力強いゴシゴシだけれど、痛いって程では」
「アカスリという方法ですから、多少は紅くなるかも知れませんっ!」
とまあ夕食後に身体を洗ってくれているのは、
アンヌさん(拳闘士の方)と眼鏡をかけたナンスィーさんだ。
(二人とも、容赦なく攻める攻める)
魔神が元のアンヌさんはともかく、
ナンスィーさんは恥ずかしくは無いのだろうか、
眼鏡モードでやたらと張り切ってはいるけれども。
「それで御主事様、髪を洗う前に見て貰いたいものがある」
「まずはこの魔石を使いましてですねぇ!!」
「それって魂の外郭とやらを封じ込めてた、のちに使って空になったやつ?」
そしてさらに、闇魔力か何かを封じ込めたみたいだ。
「見ていてくれ、ふんっ!!」
手をかざすと闇の霧や煙みたいなのが出てきて、
それが固まって人の形となり、やがて……こ、これは!!
「アンナさんじゃないですか!」
「「ああ、これでアンヌとアンナ、両方出せる」」
「でも動きも、喋っている事も同じですね」
服も同じメイド服だし。
「「もっと魔法の制御、鍛錬をすれば別々の動きが出来る」」
「はいっ、まだ触ると崩れますが、いずれは普通と変わらない分身にっ!!」
「アンヌさんもナンスィーさんも、そんなことまでしてくれてたんですね」
完成すればアンヌとアンナを紹介するとき、
いちいち片方が隠れる必要がなくなるのかも?
「学院へ行くまでには完成させたいが、無理なら向こうでも実験を繰り返す」
「私が居ないと進みませんから、それまでは王都に滞在しても良いですよおっ!!」
「あっうん、ありがとうナンスィーちゃん」
……僕がどうしてもってお願いすれば、
ナンスィーちゃんも正式にメイドのになってくれるんだっけ?
でも仕事もあるんだよな、特にアイテム袋の製作は事実上、今や彼女だけっぽい。
(しかも父上の事だ、販売ルートや量はきっちり抑えているはず)
街でも売ってる事は売ってるがいつも売切れ状態、
ごくまれに入荷してるのは今にして思えば、そういう策略かも。
「「御主人様、そろそろ頭を洗うぞ」」
「目を瞑って下さいね!!」
「うん、それはいいけどアンヌさんとアンナさんがダブってうるさいから!」
そして頭を洗剤でゴシゴシしてもらう、
泡が立って気持ち良い……僕はナンスィーさんと話を続ける。
「ナンスィーさんって、そんなに僕のメイドになりたいの?」
「もうなっています、なっております! いつでも染めて下さいっ!!」
「いやいやそんな、ってそこ、くすぐったいからあ!!」
アンヌさんが頭を占領しちゃったみたいで、
ナンスィーさんの手が相当、なんというか、エグい所に!
メイドお婆ちゃん達でも『ここはご自分で』って言う場所だぞ?!
「ちょ、ナンスィーさん!」
「はっ!! 痛かったですか? デリケートな部分ですからねっ!」
「いや、恥ずかしくは」「二十六歳ですよ! 処女ですけれども!!」
聞いてない、聞いてない!!
(いや前も言ってた気が、こっちからは聞いていないって意味ね)
「王都にはたまに行ってるって言ってたよね」
「はい全身ローブで顔も隠して、さぞかし不気味な女だと思われているでしょう!」
「ずっと王都で僕のメイドするのって」「ダルマシオ様がどうしても、どおおおぉぉぉしてもと申されるならっ!!」
ああこれ、自分がめっちゃ行きたがっているやつじゃん、
そこまで言うなら仕方がないなあとかなんとか、面倒臭い。
「御主人様、頭からお湯を」「かけますねっ!」「うん、どうぞ」
ざばあああぁぁぁーーー……
ざっばあああぁぁぁーーー……
そして顔を拭いてもらって見ると、
アンナさんはもう居なかった、魔石も回収済みかな。
「さあ御主人様、これからは入浴タイムだがどうする」
「どうするって、そりゃあ浸かりますが」
「よろしければ、どおおおーーーーしてもと申されるなら、ご一緒に」
……相手がアンヌさんやナンスィーさんだからという訳ではないが、
今日はちょっと冷静に考える、うん、メイドが一緒にお風呂に入る、ねえ。
(それって実は失礼な事なのでは)
いや、もちろん男なら嬉しいというか、
華を飾る的な意味で喜ぶのも居るだろう、
でも主人がメイドしかもピンクのリボン付けたの相手に一緒に入浴となると……
(あっ、これってひょっとそして、誘われている?!)
どうしようか、
そうだ、ここはひとつ、試してみよう。
「じゃあナンスィーさんだけ」
「はい! はっ、はいいいいいいいいいい?!?!?!」
「そんなに驚くのならいいよ」「いえいえいえいえ、よ、喜んで!!!」
眼鏡を直してきらーんって光らせてる。
「御主人様、私は」
「アンヌさんは、また今度」
「そうか……わかった、では私は失礼する」
そう言って脱衣所へ、
ってナンスィーさんも一緒に行ったぞ、
あっそうか、脱ぐのか、ってええええええ!!!
(今更、取り消せないよな)
メイドと一緒にお風呂に入るとか、
おそらく生まれて初めて、いや赤ん坊の頃は知らないが、
ワンディちゃんとすら無いぞ、いいのか? 本当に良いのか?!?!
♪~~~
(鼻歌まで聞こえてくる、ご機嫌な……)
やがてどきどきしながら待っているとナンスィーさんがやってきた!
「では失礼して!」
桶でお湯を掬って頭から……
(眼鏡かけたままだな、いいのか)
ざばあああっ!
ざばぁぁぁああああっ!!
ざっばあぁぁぁああーーーっ!!!
「ではお邪魔しますね!」
「いやいや、ちゃんと身体を洗って!」
「えっ、いつもこんな感じですが」
眼鏡かけてハキハキしてるから忘れてたけど、
いつもはいかにもズボラでトロケている感じだから、
ひょっとしてちゃんとお風呂に……
(渋々、身体を洗剤で洗ってる)
「ナンスィーさんって、お風呂忘れたりしません?」
「忘れるというか、入る気になった時だけ入りますね」
「じゃあ、何日も入らなかった時とか」「五日はざらですね」
おいおいおいおいおい!!!
(あっ、長い黒髪が綺麗だ、僕を洗う時は団子にしてた)
でもお風呂に入ったらまた汚れるんじゃ、
洗い終わったらまた団子にするのかな?
……そうだ、ちょっとナンスィーちゃんに聞こう。
「ナンスィーちゃんって、魔法強いんだよね」
「そうですね、でも闇魔法はあまり外界ではお店できません!」
「下界って……じゃあ連れて行くとしたら非戦闘メイドかな」「どうでしょう」
顔も洗ってるけどすぐ眼鏡をはめ直している、
身体はできるだけ観ないようにはしているけど、
それでも『だらしない身体』なのはよーくわかるな。
(それがたまらないっていう物好きも居そう)
「魔法の訓練とかは」
「した方が良いですか!」
「うんまあ、アンナさんあたりと、かな」
でも貴重な闇魔道具職人でもあるなら、
怪我させるような事はさせたくないし、
そもそもやらなきゃいけない仕事も多そうだ。
「ではそろそろ!」
「あっ、入って来ちゃうんだ」
「そう命令されましたから、ご命令通りに!!」
……なんだろう、
僕の方へ真っ直ぐ来た、ちょっと怖い。
(離れて浸かるとかいう気は、まったく無さそうだぞ?!)
そうだ、よし、ここは!!
「その前にナンスィーさん」
「はい、覚悟は出来ておりますっ!」
「……眼鏡取って」「はいっ?!」「眼鏡、外して入って」
あ、おろおろしている!
「こ、これを外してしまうと、その、わ、私はっ!」
「いいから、それこそ命令だから!」
「はいいいぃぃぃ……」
観念して眼鏡を外して裏返った桶の上に置くと、
一気に表情がたるむというか、眠たそうな表情になった。
「でええ~~わあああ~~、しっつれええ~~~しまぁ~~~……」
そしてお風呂に……って沈んじゃう、沈んでしまううう!!!
「ナンスィーさん、ちゃんと中で座って!」
「おふろおぉぉ、きぃ~~~もぉ~~~ちいいぃぃぃ~~~」
「の、のぼせないようにね」
出る時ちゃんと介護してあげました。
(さあ、今夜ベッドで待っている、メイドは……!!)
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