第27話 とりあえず勉強!

「うーん、難しい本がいっぱいだぁ」


 昼食後、僕は書斎というなの吹き抜けの図書館で、

 主に魔法関係の本を読み漁る、これも学院のクラス分け試験のために。


「一度、商業ギルドの方が『貴重な本が多いので譲って欲しい』とおっしゃっていたそうですわ」

「そうなんだカタリヌさん、カタリヌさんから見ても」

「外の街はさほど行った事はありませんが、ここでしか見ない本が多いようですね」


 それだけ専門知識の本が揃っているって事かな、

 僕には難しいはずだ、かといって子供達が居たエリア、

 あそこの本は子供向け過ぎる、両極端なんだよなぁ、ここ。


(いや、中間の本ならダクスヌールの街で普通に手に入るか)


 奥の方へ行くとそもそも読めない本とかあったり、

 扉が封印してある『禁書エリア』なんて物騒なものまである、

 最奥に女悪魔でも封印されていて解放のお礼に従魔になってくれたりとか……


(うん、ユピアーナ様がほぼそんな感じだねっ!)


 などとふざけた事は置いといて、

 まあ、あのナンスィーさんでさえ開けてないんだ、

 僕ごときがどうにか出来そうにないので、他所を探そう。


「ええっとこっちは『魔法の真理』上、中、下巻……分厚いなあ」

「ナンスィーが興奮して読んでいた本ですね」

「そうなの? じゃあ読むかな……うん、目次だけで気が遠くなりそう」


 ええっと、これ、魔法の仕組みかぁ、

 古そうな本だからきっと魔法という概念が出来た頃にまとめたのかな?

 魔法の定義、魔法の基本知識、魔力と魔法、色んな項目がある……


(これ学院だと、生徒というより先生向けだぁ)


 もしくは学院の上、魔法専修院とか。


「これ、ナンスィーさんは全部読んだんですよね?」

「ええ、所々ヨダレがついているかと」

「えっ、あっホントだ、染みが付いてら」「書庫に新品が保管されていますよ」


 予備もあるんだ助かった、

 重要な所が滲んでたり破れていたりとか、

 古い本だとよくあるらしいからね、さすがだ。


「ここの本って、ひい爺ちゃんのコレクション?」

「あとユピアーナ様も、それと古代遺跡で手に入れたものもあるようです」

「それがあの封印されている禁書かな、うん、一生触れない方が良さそう」


 中巻、下巻も目次だけ見て行くと……!!


「あっ、『魔法の解放』だって、哲学的な話かな?」

「私はそこまで読んではおりませんが、確かナンスィーが、

 興奮しながら『これで誰でも魔法を使えるようになるかも』とか言っておりましたわ」


 と、いうことはだ、

 魔力があって魔法が使えない僕が……使えるようになる?!


「よし、ここだけ読もう!」

「こういう本は、最初から読んで行かないと理解できないかと」

「そうかなぁ……どれどれ……うん、いきなり専門用語で、よくわからない!」


 これはナンスィーさんに先生になって貰った方が良いな。


「それではこちらはいかがでしょう」

「うっわ、ずらっと綺麗に並んでる、目立つ位置に!」

「これは『魔法を極めし者が更なる高みへ至るための本』です」


 そんなの、余計に僕向きじゃ無いのでは!


「なぜこれを僕に」

「理由はふたつありますわ、ひとつは第一巻だけ、

 わかり易く誰でも読んで理解できるように書かれています」


 つまり最初の一冊だけは万人向けってことね、

 全部で三十六巻か、これ一巻で稼いで後は売れなくてもいいやってやつだな。


「それでカタリヌさん、ふたつめの理由は」

「はい、著者を見ていただければわかるかと」

「ええっとどれどれ……『著作:ギリオス=ダクリュセック』ひい爺ちゃんかー!!」


 通りで立派に飾ってあるはずだ……。


「お弟子さんは全員、買わされたそうです」

「あっ、書庫に在庫がいっぱいありそう」

「よく御存じで」「王都の古本屋で売れるかな」


 ウチの、ダクスヌールの本屋でもいっぱい余らせていそう。


「お読みには」

「じゃあ一巻だけ」

「学院のクラス分けテストで役に立つかもしれませんね」


 さあて、座って読める場所はっと、

 ここでいいかな、色んな所に椅子と机が置いてある、

 気になった本があればすぐ読めるように……ひい爺ちゃんの本の近くなら、尚更だ。


(……うん、これなら僕でもよく読める)


 むしろ学園生、いや下の学校生向けって言っても良いぐらいだ、図解も多め。


「さあ、読むぞー、あっカタリヌさんは自由にしてて」

「はい、ではしばらくは席を外させていただきますわ」


 メイド長だからね、仕事もあるんだろう。


(あっ、でも遠くで十六歳のメイドの子が見てる)


 一応は交代みたいなものかな、

 邪魔しないように離れているみたいだから、

 こちらも空気を読んで気付いていないふりをしよう。


「まずは『魔法の基礎の基礎』そもそも魔法って何なのって話からかぁ」


 ……このあたりはひい爺ちゃんから直接聞いたことのある話からだ、

 こうやって読んでいると生前を思い出すな、お葬式どうなっているんだろ。


(余計な事を考えてないで、読まなきゃ)


 こうして第一巻をさくっと読み終え、

 第二巻に手を出すも十五ページ目で脱落、

 後は適当に『今後、読んだ方が良さそうな本』を探す作業に。


(これ、ここって魔法書マニアには、たまらないんだろうなぁ)


 と読んでいるとまだ学校行く前の年齢の子供かな、

 本を床に立てて並べて倒して遊んでいる、うん、この遊び方も合ってる、多分。


(図書館なんて、そんなもんですよ)


 さすがに千切って折り紙とかされたら止めるけど。


「さあって、次の本は……」


 ていうか、ずっと見てるあの子は退屈じゃないのかな、

 十六歳メイドの、ええっと名前は……そうそう、ブランカちゃん。


(ま、喉が乾いたらお水くらいは頼むか)


 こうして読んでいるうちにやがて夕方となり、

 気が付いたら横にカタリヌさんが戻ってきて立っていた。


「うわっ! お、おかえりなさい」

「ダルマシオ様、ギリオス様からお預かりした『地下書庫』の鍵です」

「えっ、禁書の部屋じゃなくって?」「あそこは魔法を使わないと開きませんよ」


 大きな鍵だなあ、なんだろ地下書庫。


「中にあるのは」

「さあ、入って良いのはダルマシオ様だけと聞いております」

「なんだろなんだろ」


 大体の場所だけ聞いて向かう。


「ブランカはこちらへ」

「はいカタリヌ様」


 あっ、僕についてこようとしたのを回収されちゃった、

 それだけ僕だけに見せたい本らしい、なんだろなんだろ。


(頭の回るひい爺ちゃんのことだ、もしかして……)


 簡単に魔法を使えるようになる本とか?

 いや、意外と政治的な、領主入門的な本かもしれない、

 後は……価値の高い純金の本とか、いやそんなの普通に宝箱に入れておいてよ。


(本当にひとりで行かされるみたいだ)


 廊下の途中で良い匂いが、

 夕食までには戻って来ないとね、

 などと考えながら地下二階の宝物庫隣りへ……


(隠し部屋みたいな所だ、そして鍵は……ここに使うのか)


 床に四角い扉がある、更に下かよ、

 そして鍵穴が、差し込むと……鍵が光った?!

 対応して扉も光って開いた、降りる柱がある。


「……うっわ、入ると灯りが点いた!」


 そしてびっしりと本棚に入れられた本、本、本……


「どんな本だろう、とりあえずこれを……あああっ、こっ、これはああああああ!!!」


 うん、最初の本を開いて速攻で理解した!

 そこに描かれていた図は……女性の全裸だった!!


(なるほど、僕にしか見せられないはずだ!!)


 どれもこれも、なんというか……

 十五歳に見せて良い内容じゃないぞ?!

 いや嬉しいけど! あっちの本棚は小説か、でも挿絵が……その……


(すごく……良いです)


 勉強には息抜きも必要だからね!

 うん、ひい爺ちゃん……ありがとう。


「あっ、鍵閉めなきゃ」

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